第40話 終わりのはじまり
聖女が国を救ってめでたしめでたし。なゲームが終了した。
バグだらけで何もかもが破綻したこのゲーム。
ゲームではなく独自の大きな物語を紡ぎ、ここに生きる全ての人が各々の物語を繰り広げている。
タミン村私営孤児院『アカシア』
元聖女アリスは王都を離れ育ったこの地に帰ってきていた。
莫大な報奨金と共に帰ったアリスは
「聖女の仕事して稼いできた。もう辞めた」
とだけ説明した。リリルとシムはとんでもなく驚いたが
「難しい話はわからないから、アリスが元気であればそれでいい」
詳しく追求することはなく以前の暮らしに戻った。
ただし、アリスが居ない間にララとルースの姉弟を引き取っていたので五人暮らしになった。
たまに王都から貴族の令嬢子息達が訪れるのには面食らったがいつの間にか慣れた。
一番大きく変わったのはジャンという青年が頻繁にアリスに会いに訪れることであった。
「アリスとお付き合いしています」
と、最初にキッパリと宣言した。
リリルは目に見えて喜び、シムは複雑そうな顔を崩さなかった。
「アリスにはまだ早い。それになんだか野暮ったい奴じゃないか」
と珍しくシムが語り
「あら、髪の色が違うだけであなたによく似てるわ」
とリリルが笑った。二人だけの内緒の会話である。自分に似てるからか?とシムの溜飲は少しさがったが、自分に似てるなら尚更もっと良い奴がいるのでは?とも考えるのである。決してアリスには言えないが・・・
こうして聖女結界案件は無事解決し、これをきっかけにアルフレッドは王太子に内定。
イザベルは王太子妃教育が始まり苦々しく思っていたが、なんと国王自ら『学園に通う間は教育は無し』と書簡が届いた。聖女謁見事件が大いに影響を及ぼしていると考えられる。
そうして月日は流れ、恋人達はそれぞれの時間を楽しみ大きな事件もなにもなく無事二年に進級した。
下級生にとんでもない怪物がやってくるなどこの時は露ほども思わなかった。
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