第32話 Wデート夏の陣─午前の部─
なんやかんやでデート当日、ミスル広場噴水前──
休日の広場は屋台が数多く出店され、家族連れや恋人達、友人グループなど数多の人が多く行き交っていた。
屋台はクレープのみならず、焼き鳥やベビーカステラ、たい焼きまであった。
エリーゼは思った。
(いるわ。確実に転生者が!その調子で美味しいものたくさん作ってちょうだい)
全くいい仕事しやがる、と心中サムズアップするエリーゼはどこかの親方なのかもしれない。
「あれ?エリちゃん一人?」
ごえいをともなったせいじょがあらわれた!
→ガンガンいこうぜ
いのちだいじに
めいれいさせろ
にげる
(はっ、いけないいけない。広場はどうしてもバトルフィールドだと思ってしまう)
「アーリン!今日もなんて可愛いの!」
パフスリーブの淡い水色のシンプルな膝丈ワンピース、胸元には薄桃のリボン。足元は白のショートソックスに水色のメリージェーン。
髪はハーフツインにしてふわふわと緩くウェーブがかかっている。
麦で編まれた籠バックを持ち、小首を傾げるアリス。
さすが城の侍女やりおる、と思ったエリーゼはやはりどこかの親方である。
そんな、エリーゼは裾に行くほど濃くなる紫のワンピースに薄茶のブーティ。
「ごめんね、今日は私だけなの」
「え!初めて皆で遊べると思ったのに・・・」
「あぁー、アーリンごめんね。でも大丈夫、私達とはいつでも遊べるわ。今日はね、アーリンに会ってもらいたい人がいるの」
一方その頃広場入口では──
「ジャン、僕はバッチリキメてこいと言ったはずだ」
「ハルバード様、私は今日ここに呼ばれた理由もわからないのですが・・・」
「それにしたって・・・ねえ、それ前見えてんの?」
「見えてますよ!」
白いシャツに黒のスラックスに黒の革靴。オリーブ色の髪はあちこちはね、前髪は長く瞳にかかっている。そうジャンは無頓着だったのです。
「今日、今から僕のエリーゼとアリス嬢、そしてジャン。この四人でデートする」
「は?聞いてませんよ!」
「今言った」
ハルバードはジャンの肩をガっと掴んだ(クソ、こいつ背高いな)
「ジャン、聖女の輝く魔力を取り戻すためには君の力が必要なんだ!」
「・・年下だけど爵位も魔力も俺より上、しかも上司の息子。何言ってるのかさっぱりわからないけど、逆らっていい要素が一つもないっ」
「・・・ジャン、全部声に出てる」
ほら行くよ、とハルバードに引き摺られていくジャン。
再び噴水前──
ハルバードの勢いに負け、とぼとぼと歩くジャン。
なぜこんなことに、とぐるぐる考えるジャンの目に飛び込んできたのは・・・
噴水前に少女が二人、一人はよく知ってる聖女様。そしてもう一人は、あれがハルバード様のエリーゼ嬢なのか?え?なんか食べてる。口の中がいっぱいなのか頬を膨らませて咀嚼してる。貴族令嬢・・・だよな?は?違うの?
「エリー・・・今から食事に行くのになに食べてるの?」
「ひゃる、やひとりはべちゅばらだはら」
「うん。飲み込んでから話そうね」
ニコニコと頭を撫でるハルバードに、驚きを隠せないジャン。
アリス嬢は・・・、とアリスに目をやるジャン。こっちはこっちで口の端をタレで汚して顔を真っ赤にしてジャンを見つめていた。
「あの、アリス嬢口が・・・アリス嬢?」
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「ジャン様、本日はお越しいただきありがとうございます。ハルバード様と婚約させていただいております、エリーゼ・フェイマンと申します。どうぞよろしくお願い致します」
先程まで焼き鳥を貪っていたとは思えない淑女が優雅なカーテシーをキメていた。
「あ、はい。ジャン・ウィーズリーです。あの、アリス嬢は・・・」
「あら、アーリン口が汚れてるわよ」
ハンカチで口を拭いてやるエリーゼ。
「脳内処理速度が追いついてないだけですのでお気になさらず」
さぁ行きましょう、とアリスの手を引き歩きながらアリスの手に残った焼き鳥を取り上げ、一口でたいらげ串をゴミ箱に捨てたエリーゼ。
流れるような一連の動作にジャンのみならず護衛騎士も目を丸くする。
ハルバードだけが、可愛いよねぇと目を細めていた。
帰りたい・・・ジャンは切にそう思った。
いざ、昼食会場【眠る子豚亭】へ!!
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