第29話 夢は見るもんじゃねぇ叶えるもんだ
「アーリンが可愛すぎる!!!」
説明しよう、アーリンとはアリスのことである。※オリビア命名
記念すべき第一回のランチタイムよりこっち、第二回第三回第四回・・・と学園がある日は必ず昼食を共にしているイザベル達であった。
当初は遠慮がちであったアリスも回を重ねる事に打ち解け愛称呼びにまで至ったのである。
そして、控えめだが芯があり救国というクソデカ任務に対しても前向きに向きあい日々精進する超絶美少女にオチない輩はいるのであろうか、いやいない。
悪役令嬢達はすっかりヒロインに攻略されていた。
あれ?ゲームの趣旨変わってない?なんて疑問は遥か彼方。
今日も今日とて、楽しいランチタイムである。
「ベル!そろそろ僕らも昼食を共にしてもいいじゃないか!」
「殿下、これは女子会です」
「女子会に参加したいってや~らし~」
オリビアの攻撃!
「ぐっ・・・そんな、そんなやらしい気持ちなんてない!」
嘘である。やらしい気持ちでいっぱいである。
「ほら、これあげますからその辺で食べてなさい」
犬かな?
「あ、あの、私はかまいませんので皆で一緒にたべませんか?」
「あぁ、アーリンなんて優しいの。気にしなくていいのよ」
ヴィオレッタとエリーゼがアリスを挟んで抱きしめる。
茶番である。
このコントは毎回おこなわれている。
「殿下、そろそろ行きましょう」
声をかけたのはレオナルド・グランデ。
東の辺境伯グランデ家の嫡男で、結界修復メンバーの一人でもある。
辺境で剣の腕は鍛えているので、魔術科を専攻しアリスを支えているのだ。
入学式で拉致られたイザベル達を見送るアリスの傍に控えていたのがこの男である。
隙あらば盗み聞きをしようとするアルフレッド達を引っ張り、姿は見えども声は聞こえずの絶妙な位置で食事をさせる、なかなか出来た男なのである。
「あの、毎回思うんですが視線が痛いです・・・」
「アーリン、気にしちゃ駄目よ。じゃがいもやかぼちゃだと思えばいいから」
一国の王子をじゃがいも扱いするオリビアは今日も絶好調だ。
「でも、その、言いづらいんですが・・・学園終わってからの鍛錬場ですごいライバル視されてるというか・・・なんの話をしてるのか?とかよく聞かれてて・・・あ!言ってませんから!」
「馬鹿ねぇ。私達がアーリンを好きな気持ちと、アル達を好きな気持ちは全然違うのに」
イザベルの言葉に頷くヴィオレッタ達。
この時、彼らが読唇術を会得していれば狂喜乱舞しただろう。悲しいかな、彼らにそんなスキルはない。ただただじっと見つめるだけである。
「アーリンは誰か気になる人いないの?」
「オンちゃん、ぶっ込んできたねー」
「恋バナしたっていいじゃない。乙女だもの」
「おりをかよ」
正ヒロインアリスの前では猫も裸足で逃げ出すのですっかり素で話す四人である。
ちなみに猫が逃げ出したのは第二回ランチタイム、早い。
「レオナルド様は?」
「ん?いい人ですよ?」
「レオナルド様、かっこいいよね?」
「そうですねぇ、でもそれより・・・」
「誰かいるのね?」
「オンちゃん、目を光らすな」
頬を赤らめ、モジモジするアリス。
満面の笑みのイザベル達。
「・・・あの、魔術師団にいるジャンさんって人がシムにちょっと似てて・・・」
「「「「 ほーん? 」」」」
「どんな人?」
「話したことはないの。最初に少し挨拶しただけで。でも、鍛錬場で見かけたりとか、あと鍛錬場で転びそうになった時に助けてもらって『気をつけてね』って・・・」
キャー恥ずかしい、と両手を頬にあて首をふるふると振るアリスは可愛さが限界突破していた。
「魔術師団のジャンね」
「エリちゃん、ハルちんから情報収集!」
「任せとけ!」
「合コンじゃーーーーっ!!!」
立ち上がり、拳を握りしめ天を仰ぎ叫ぶオリビア。
ここが学園だということをすっかり忘れていらっしゃる。
そんなこんなで夏の合コン祭り開幕です☆
蛇足であるが、レオナルド・グランデは隠し攻略対象者である。
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