第27話 少年はかく語りき
突然だが、王立学園中庭である。
さすが貴族学校、立派な中庭を併設している。
芝生に大きな敷布を敷いた上には五人の少女が座って、食事を囲んでいる。
入学当初、学園に慣れるためとして三日間午前授業であったが今日からは午後授業も始まる。
その記念すべき第一回の昼食時間である。
なぜこんなことになっているのか。
アルフレッドは多いに振り返る。
あの日、イザベルとファーストキスをした・・・いや、違う違う、とても柔らいや、違う。
あの日、アリスについて話したあの日。
とんでもなくイザベルは吠えていた。
アレは猫ではない、伝説の焔碧虎(神獣。虎によく似ている)であった。
ひたすら、頭の硬いおっさん共の悪口を言っていた。
もちろん、父である国王も頭の硬いおっさん共に入っている。むしろ、リーダーである。
そして、僕達は本質を見ずに言うこと聞くだけの馬鹿、とも言われた。
アリスを見ろ、と何度も言われた。
終いには泣いていた。
そのうち『大嫌い』と言われるんじゃないかと怯えていたが、ついぞ嫌いとは言われなかった。
本当に良かった。
すぐさま父に進言、アリスの待遇改善を求めた。
聖女ではなくアリスと呼ぶこと。
一人の少女として扱うこと。
魔術師団長なんかは
『何か悩みはないかい?』
なんて、優しく聞いていた。
だが、アリスは首を横に振るばかり。
おっさんだからダメなのか?と思い僕らも何度となく声をかけた。
しかしアリスから返ってくるのは
『頑張ります』
の言葉ばかり。このままではベルに嫌われてしまう!僕は焦った。
なんとかアリスの心を平らかにしなくては!好きな食べ物も聞いてみた。好き嫌いはありません、と言われた。
お菓子もいつもの倍置いてみた。
あまり減らなかった。
アリスは一定量の魔力を流しながら舞をまう時間が少しずつ増えていった。
だが、それだけだった。
思い切ってベルに相談してみた。
ものすごく目を細めて、じーっと見られた。ベルの後ろの猫が逆毛を立てて威嚇していた。『四十点』と言われた。
『明日から午後授業も始まるでしょう?アリス様と昼食を一緒にとります。ハルバード様に授業が終わったら中庭にアリス様を案内するようにお願いしてください。昼食はこちらで準備しますので何も持たずに起こしください。とアリス様に伝えてください』
ベルの丁寧語は本当に怖い。
昨日は手も握れなかった。触ったらあの猫が襲ってきそうな気がした。
そして、冒頭に戻る。
アルフレッドの頭の中は、とにかくベルに嫌われたくないという不純な動機しかないが思春期の男の中身はだいたいこんなもんである。
一緒に昼食をとりたい、と少年達はみな物申したがすげなく断られてしまった。
アルフレッドとカーティスは騎士科の鍛錬場から走って来たのに可哀想である。
眺めていても仕方ない、と諦め食堂に向かおうと背を向ける少年達。
「イーちゃんのご飯久しぶりだー。美味しそー♡」
ま、まさか・・・ベルの手作り・・・なのか?
アルフレッドは愕然とした。
振り返るアルフレッド。
口の端をあげてサムズアップするオリビア。
軍配はオリビアに上がった。
アルフレッドは膝から崩れ落ち、顔を覆い呻いた。
王家の威厳など一欠片も無かった。
ただの恋する少年がそこにいた。
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