第24話 聖女の見る世界
シルヴァスタイン家離れにて──
イザベル、ヴィオレッタ、エリーゼ、オリビアの四人は相も変わらずこの離れでくつろいでいた。
聖女アリスが王家に保護されてから二ヶ月、イザベルの王子妃教育も一旦中断されていた。
「平和すぎる」
「「「 それな 」」」
「あと1ヶ月で学園入学なんて嘘みたいだ」
「てか、ゲームではイケメン達とキャッキャウフフしてたら良かったけど実際は、んなことないわけで」
「ねー、やっぱうちらこの世界に生きてんだねぇ」
「箝口令敷かれてるっぽいから、うちら知らないことになってっけど絶対結界関連でなんかあったくさいね」
「民の不安を無闇に煽ってはならん!とか偉い人が言ってんだろうな」
「イーちゃん、微笑みからなんも聞いてないの?」
「それが聞いてないのよねぇ。なんか忙しくなるからしばらく会えないっては言われたけど」
「みんな一緒なんだねぇ」
「てか、国の有事に子どもを関わらせるってどうよ?有り得んでしょ」
「まぁ、ゲームだし」
「聖女候補見つかったんかな」
「あとちょっとでゲーム始まるし見つかったんじゃね?」
「可愛いんだろうなぁ」
「そりゃヒロインだもの」
「好きに・・・なっちゃうのかなぁ」
一方その頃王城では──
離宮、聖女の居室──
アリスはリリルからの手紙を見つめていた。
リリルからもらった手紙はたった一通。
幸せになってほしい。
その願いが綴られていた。
何度も何度も読み返した手紙は端がよれ、所々滲んでいた。
突然、王城に連れてこられ聖女だと言われた。
国の危機を救うために力を貸してほしいと言われた。
とても珍しい聖属性の魔力が自分にはあるらしい。
アカシアにいた頃とは比べ物にならないくらいの大きな綺麗な部屋を与えられた。
自分の世話をする人が何人もいた。
毎日、美味しい食事がでた。
ふかふかの大きな寝台で眠った。
来る日も来る日も魔力制御の練習をする。
救国の舞、という舞の練習もする。
舞を舞ってる間、聖女を守る防御壁を展開してくれる人達にも会った。
防御壁を展開する人は20人くらいいて、その中には自分と同じくらいの年頃の男の子もいた。
その子たちも毎日鍛錬をしていた。より高度な防御壁を展開するためには緻密な魔力操作と持続が不可欠だからだそうだ。
皆、自分に優しかった。
皆、自分を聖女様と呼ぶ。
「お姉ちゃん、ここには聖女を愛する人はいてもアリスを愛してくれる人はいません」
国王執務室
国王アルフォンス・ランドール、宰相エドワード・コールマンは魔術師団長カインから報告をうけていた。
「聖女様の魔力から輝きが失われている?」
「はい」
「なぜだ?」
「聖女様といえどもまだ十四歳の少女です。親代わりといえる者たちと突然離されたのです。おそらく寂しいのではないでしょうか?」
「ふむ・・・我らは国の為を思い急ぎすぎてしまったというわけか」
「はい、もっと聖女様の御心に寄り添うべきでした」
「どうすべきか・・・」
宰相が提案する。
「聖女様を学園に入れてはどうでしょうか?普通の少女として生活させる。また同じ年頃の子どもたちと触れ合う事で聖女様の心の隙間を埋めることができたなら・・・」
「いいですね。幸い私の息子もアルフレッド殿下も学園には入学しますし、聖女様をお助けすることができるでしょう。専攻は魔術科でいいですね?」
「では、決まりだ。聖女様を学園に入学させる。アルフレッドとその側近達には聖女様を助けるよう伝えよう」
さらに宰相が提案する。
「では、私の補佐をしてくれているノーマンの養女ということにしましょう。貴族学園ですので身分が必要です」
「よし、各所に早急に通達。聖女様の御心を平らかにする基盤を作る。目処は半年、結界の修復も急がねばならん」
「「 御意 」」
こうして、アリス改めアリス・ランバードは学園に入学することとなった。
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