第20話 貴族に恋は難しい裏
イザベルからの話は少年達には衝撃だった。
『好きになる努力』というのは聞いた事があるが、まさかその逆だったとは・・・。
しかも、自分達は今後必ず他の人に目を向けると彼女達は信じこんでいるように見える。
確かに、いつも僕らに見せてくれた姿と今日あけすけに口悪く話している姿はまるで別人のようで、一体どちらを信じればいいのだろうと思ったのも事実で・・・。
だけど、僕らの笑顔に惹かれた、そう彼女は言った。僕らも彼女らの嘘偽りない笑顔に惹かれたのだ。
なんだ、同じじゃないか。
『忘れられた?』
『ままならないものね』
そうだ、恋とはままならないものなのだ。
猫を被った彼女も被ってない彼女もどちらも真実で、今まで過ごしてきた時間が嘘だとは思わないし思いたくもない。
今、不安げに瞳を伏せる彼女がとてもとても愛おしい。心変わりを思うと辛い、耐えられないと僕を想ってくれる彼女が愛しくてたまらない。
「取り繕わなくていいよ。そりゃあ公の場所ではそれなりの態度が必要だけど、僕らだって僕ら四人になったらくだけてるよ。口も・・・多少悪くなってるかもしれない。僕は、ベルが好きだよ」
「ヴィオ、僕もヴィオが好きだ。今までのヴィオが全部嘘だなんて思えない。だって、ヴィオはいつだって僕の心を軽くしてくれたから」
「エリー?好きだよ。たまに猫を被ってないエリーがいたのを知ってるよ。それでも、僕はエリーを好きになったんだ」
「俺もリビィが好きだ。俺はあの日からリビィの為に鍛えてる。リビィに好きになってもらいたかったから」
何も答えてくれない。
彼女達は膝を立ててそこに額を乗せてずっと黙っている。
肩が小さく震えてる。
まさか、泣いてしまったんじゃ・・・
んっふっふっふっあ、あっははははははは、はっはっはははははははははは
「あー、これあかんわ」
膝を立てたまま、両手をついて天を仰ぐオリビア。
「うん、やられたわ。ね?」
膝に頬を乗せてエリーを見るヴィオレッタ。
「どストライクな男に好きって言われて拒否れる女いる?」
同じく膝に頬を乗せてイザベルを見るエリーゼ。
「・・・いるわけがない」
伏せた顔はそのままに目だけを上げてアルフレッドを見るイザベル。
「「「「 負けたー!! 」」」」
そのまま後ろのクッションにボスンと倒れ込む四人。
ゲラゲラ笑いながら時折涙を拭う仕草を見せる様に少年達は困惑しきりである。
まさか、好きだと告白したら大笑いされるだなんて。
まぁ、でも仕方ないか、と顔を見合わせ笑う少年達。
王家主催のパーティで主催者そっちのけで隅で笑っていた。
平気で平民服を着込み街を闊歩する。
令嬢なのに肌を見せる服を好み、あまつさえ裸足で寛ぐ。
口を手で覆うこともせず、心のゆくまで声をたてて笑う。
およそ規格外の彼女達。
何となくぼんやりと見えていた将来。
このままそれぞれのレールに乗り進むのだろうと思っていた未来。
彼女達が傍にいれば、それらは予想外の大きな驚きや楽しみ、喜びになるのではないだろうかという予感が胸をざわめかせる。
「僕達の告白を受け入れてくれたってことでいいのかな?」
思わずアルフレッドが問う。
「ふふっ、ええ、そうね。覚悟ができたわ」
「覚悟?」
「そう、この気持ちは私たちだけのもの。この先何があっても負けないわ。ね?」
少女達は何度も頷く。
「えー、エリー達はまだ何か隠してそうだなぁ」
「あら、ハルバード様。女は少しくらい秘密があった方が魅力的なんですよ?」
少女達は顔を見合わせて
「「「「 ねー 」」」」
なんて言うものだから、もう、もう、もう!!
「「「「 僕の(俺の)婚約者が可愛くて仕方ない! 」」」」
僕らはきっと、彼女達に敵わない。
だって、そうだろう?
こんなにも予想を裏切る相手がいるか?
もう、手放せない。
手放したくない、この笑顔を隣で見る権利は僕達だけのもの。
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