異世界人

 提出を終えたアルシェは魔育館へと向かいメリナとセーレ先生のやり取りをこっそり見ようとしていた。


(こんな時間に何をしてるんだろう?魔育館の防御結界は起動してるな。異世界出身の人物との手合わせなのかな?)


 時は遡り魔育館へと来たセーレ先生とメリナは、防御結界を起動させ戦いの衝撃が漏れないようにする。転生者仕込みの防御結界は生半可な衝撃ではびくともせず壊れることはほぼ無い。


「メリナさん。お願いしていいかしら?」


 そう言いながら自分の首筋へと赤黒いナイフを首筋へと構えるセーレ先生。


「はい、覚悟は出来てます」


 強い目付きでセーレ先生が自害する様を緊張した面持ちでスティレットを出して構える。


「紡がれざる英雄譚アンノウン・サーガ聖女の軌跡!!」


 メリナが唱えるとスティレットに神々しい光に覆われる。


「必ず私を殺してね」


 セーレ先生が自らの首を切ると、その姿が黒い煙に包まれ身体はどろどろと溶けていき異形の怪物へと変貌していく。


「ギャ…ガ……グガ」


 もはや言葉は通じぬ怪物へとなる。


「行きます!!レッド・アクア・ウェイル」


 自らの身体にスティレットから噴き出す赤い液体を浴びせる。


(私の神のスティレットは能力を向上させる液体を出す。赤は速度の向上。セーレ先生の能力は束縛と聞いている)


「ゲ…ガ」


 指?というには赤黒く太すぎるような腕がメリナをさすとメリナの足下に立方体の展開図が投影される。


「わかりやすいわね!!」


 投影図が展開され包まれる前に加速して攻撃を避ける。


「ギャ…ナ」


「きゃっ!!」


 足下に繋がった足枷が出現し歩幅を大きく制限される。


「イエ……うぐ……」


(何?この拘束具??)


 メリナには見覚えはないが、地球のアダルト系の作品を知ってる人ならば解るボール○ャグと呼ばれる口枷である。


「ゲ…ギャハ」


「ひゃっ!!うぐぁ…が」


 足枷が宙へと浮き逆さ吊りへとなり両端へと生成された鉄の箱へと打ち付けられ、その後下へと落とされ背中から倒されてしまう。


(無詠唱……やるしかない。んん)


 メリナが気合いを入れ魔丹に集中している間に展開図がメリナの背中に展開図が投影される。


 セーレ先生の本来の能力はオールバインド。あらゆる拘束具及び施設を生み出せる。アイアンメイデン等も創造は可能だが知性なき怪物へと変貌してるため本来の繊細さをなくしてしまい包み込むタイプの拘束を素早く作り出すことが出来なくなってしまっている。さらに本来ならば展開図の裏面全てに魔法陣を投影さら6属性攻撃等も行う。


(熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!!!!!!!!!シ…ルバー・ア…クア・ウェ……イル)


 銀色の水をかぶさるメリナ。箱に包まれ爆発の直前、箱が爆発する前に箱が熔ける。


 ボールギャ○も足枷も熔けていた。箱から出てきたメリナは制服姿から銀色の甲冑と呼ぶには些か機械的な衣装へ身を包んでいた。


「はぁ……はぁ…辛い……ただでさえ疲れるこのフォームをさらに無詠唱なんて……」


 膝立ちで手をついて息を切らしていくメリナ。


「ゲ…ハ」


「奪われし旅路よ まだ見ぬ同胞よ 重なることなき剣よ 我に伝承の力を今一時 魔術の英雄!!」


  メリナが箱に包まれ何度も箱を溶かしスティレットを地面へと刺すと3個にに複数されたスティレットがセーレ先生へと直進するが2個は箱へと閉じ込められるが1個はあたる。


「ギャ?」


 効果はない


「当たってくれれば十分!!グレー・アクア・ウェイル」


「ギャガァァォ」


 灰色の水がセーレ先生へと被ることで消滅していく。


「女神の力を持った聖水。人間には効果はなくても邪神の眷属化してる状態なら効果あるでしょ……あーあパパみたいに100本くらい複製できればかっこいいのにな……え?」


 甲冑姿を時制服姿を解くと、どこから見ていたのかわからないがアルシェが呆然と見つめていた。


「な……んで…?」


 そんなことを呟く。

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