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空き家では、扉の穴からさしこむ光が明るく大きくかべを照らしていました。

泥棒たちはほっとして、すわりこみました。するとそのとき、かべを照らす光の中に、すっと黒いかげが入りこんできたのです。泥棒たちとうずくまりはぎょっとしました。


かげは白い光の中に黒々とうかび上がって見えました。人のかたちのようですが、天井に立っているみたいにさかさまです。


「や、や、やっぱりなんかいたでしょう親分」


子分がふるえながら言いました。親分はうなずきながらふりかえり、子分の背中でぶるぶるふるえるうずくまりをみつけて、ふたたび「ぎゃあ」と悲鳴をあげました。

そのときでした、光の中のさかさまの人かげが一つ二つ三つと増えながら大きくなっていきました。  

恐怖にかられた泥棒たちは、一刻もはやく空き家を出ようと、二人でもつれあいながら、ころがるように出口へと向かいました。


扉をあけたとたん、泥棒たちはまぶしすぎる光に目をくらませました。いつのまにか商店街は雪ですっぽりおおわれて、朝日に照らされ、どこもかしこも真っ白に輝いていたのです。

次の瞬間、白い光の中から黒い制服たちがどかどかとあらわれて、泥棒たちをとりかこみました。

なんと、先ほどかべを照らす光の中に現れた、奇妙なさかさまの人影は、外の景色がうつし出されたものだったのです。

扉にあけられた小さな穴を通りぬけた光が、まるでピンホールカメラのように、真っ暗な室内に外の景色を写し出していたのでした。


そんなわけで、うずくまりがおびえていた時おり通り過ぎるうすい影の正体は、商店街を行きかう人々、湧き出すように昇っていくつぶつぶの正体は降りしきる雪だったみたいです。そして、泥棒たちを恐怖のどん底に陥れた、一つ二つ三つと増えながら大きくなっていったさかさまの人影は、泥棒たちの叫び声を聞きつけてかけつけた警察官たちでしたので、泥棒たちは逃げる間もなく捕まってしまいました。


うずくまりはというと、扉の外のまっ白にかがやく雪景色に見とれるうちに、まぶしすぎる白い光の中へすいこまれるように、いつのまにかひっそりといなくなってしまいましたとさ。

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こわがりゆうれいうずくまり あじみうお @ajimiuo

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