生徒会長からの誘い
探索授業を終え王都に帰還してきた。
レイヴンとの勝負に勝利し、バハムートの件も落着した。
これからまた穏やかな学院生活が始まる。
そう思っていたところにある呼び出しを受けてしまった。
「生徒会に入ってみないか?」
”10層に降りた件について聞きたいことがある”
金曜日の帰りのホームルームでシルバー先生からそんな言伝を受け、放課後生徒会室に呼び出された。フレン、アリスが先に入りそのあと俺の番になった。入れ違いざま、フレンからはただの簡単な事実確認と聞かされていたはずなのだが……。
「私達がワイバーンと対峙したとき、すでに片目が潰れていた」
金髪碧眼の中性的なイケメンの生徒会長であるルシファーは窓の外の景色を見ながらそう切り出した。
「といいますと?」
「先程、レイヴン君や君の友人たちにも聞いた。片目なんて潰れてなかったと返ってきた」
冷静な口調で淡々と事実が述べられていく。
「あのあと君一人が残ったらしいな。アレは君がやったのだな?」
言い訳が通じる相手ではないと直感した。正直に言おう。
「そうです。これを使いました」
腰に携えていたリボルバーを渡す。
ルシファーが興味深そうにリボルバーを触り始めた。
「ほう。面白い武器だな。レバー一つ握るだけで簡単に高威力の技を。これが君の能力。こうすれば弾が発射されるのかな」
銃口をこちらへつきたて、レバーを引くふりをする。
やめてくれ。とっさのことだったから護身用の銃弾が入ったままなんだ。
「やめてください。本当に撃たれたら死んでしまいます」
「はは、軽い冗談だよ」
それは笑えない冗談だ。
「これがあればあのワイバーンも普通に討伐できたのではないか?」
「逃げるのが精一杯で」
「本当にそうならな」
あかん。色々と見透かされてる。この人ヤバいわ。
「さて話を戻そう。私には人のオーラが見える。入学式のときから目をつけていた。君の放つオーラは実に面白い。シルバー先生にも勝利したそうだな。そんな君に生徒会長として興味を持つのは当然のことだろう?」
「だからといって生徒会に入るのとは話が別ですよ」
生徒会は学院の中でも優れたものしか入ることができないと言われている。学院の柱となって学院を導く大変名誉のある部隊。その分のしかかる責任やプレッシャーも大きい。楽をしたい俺とは対局にある組織だ。
いくら生徒会長直々の誘いであろうと入ることはできない。
「わからんな。どうして本気を出さない? 名誉が欲しくないのか?」
「富も名声もいらない。俺は楽をしたいだけです」
「なるほど。それが君の望むものか。それでこんなオモチャを……。フン、ますます気に入った」
いや気に入らないで。
「つまりそれが君の弱みというやつだ」
「は?」
「私が君を鍛えてやる」
ああ、めっちゃ悪い顔。少なくとも俺にとっては嬉しくないこと考えてるわこの人。
「君にはどんどん表舞台に立ってもらうことにした。まずは手始めに代表選抜戦に出場してもらおうか?」
ほら、やっぱりロクでもないことを考えてた。
「いきなりそんなこと言われて、はいそうですかとなるわけにはいきませんね」
「フフ、君に断ることはできまい。君は一人無傷でワイバーン相手に大ダメージを与え逃げ帰った。と学院中に広めてやってもいいんだぞ?」
生徒会長たるものがこんなマネを。こんなの脅しだ。卑怯だぞー。
「出れば……二度と同じ手は使わないと約束してもらいますよ」
「フフフ、引き受けてくれるようだな。やはりこれが君の弱点……」
「ちっ、もちろん書面付きでお願いします」
「ああ、わかっている。書面については今ここで作成、とはいかない。後日でも構わないわな?」
「ええ」
「交渉成立だな。代表戦出場の登録期限は偶然にも今日までだ。おやおや、提出書類がちょうどこんなところに。名前欄以外の必要事項がすでに埋まっている」
ちっ。これがもともとの狙いか。なぜなら生徒会に入ることにこの手を使えばよかったはずだからだ。
わざわざ提出期限の日に呼び出してきたのもそういうこと。
完全に遊ばれてる。この人悪魔だ。この人嫌いだ。
「書きました」
「ご苦労。君の健闘を祈っているよ」
翌週、出場者とトーナメント表が発表された。その中には俺の名前もしっかりと刻み込まれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます