第98話 お爺ちゃん、シェルターの生存者と合流する
「イレイザーは今ので最後だったようじゃな?」
ストーカーイレイザーを倒すと襲撃はぴったりと止む。
「くそっ、仲間の仇だ!」
入植者の一人が死体に鞭を打つように機能停止したイレイザーの残骸にレーザーを何度も撃ち込む。
「エネルギーを無駄遣いするな! それよりも早くシェルターに戻るぞ!」
「あんた達もついてきてくれ」
他の入植者が残骸にレーザーを撃ち続けている仲間を止めてシェルターへと向かう。
源三郎達も入植者達についていき、シェルターがある地下へと階段を降りていく。
「まだつかないの?」
「エレベーターが使えれば直ぐなんだかな、メインのジェネレーターが最初の襲撃でやられたのか、エネルギーを確保できてないんだ」
「ふむ、クエストオプションが発生したの」
いつまでも続く階段に彼方がうんざりしたように質問すると、入植者は申し訳なさそうに事情を話す。
すると、クエストオプションが発生した音が鳴って【シェルター内で発生している問題を解決する0/2】と言う項目がクエストウィンドに表示される。
「取りあえずそのジェネレーターをどうにかするのがクエストオプションのひとつのようですね」
クエストウィンドを見ていた鈴鹿がウィンドを弄りクエストオプションの詳細を確認しながらそんなことを言う。
「残りはシェルターで確認しろってことかな?」
「多分そうじゃない?」
「ついたぞ、ここだ」
彼方とノエルがクエストオプション項目について話し合ってる内に目的地であるシェルターに到着した。
「俺達だ、開けてくれ!」
入植者がインターコムに話しかけると、黄色の回転灯が点灯し、地響きを上げてシェルターの重厚な扉が開いていく。
「お前達、無事………とは言えないな。とにかく、戻ってこれてよかった!」
シェルターの入り口にはバリケードが構築されており、ボディアーマー姿の兵士達が銃を向けていたが、入植者達の姿をみて銃をおろす。
「後ろの人たちは?」
「たまたま救援信号を拾って来てくれたフリーパイロットだ」
隊長と思われる兵士が源三郎達の姿をみて質問し、入植者が源三郎達を紹介する。
「そうか、助けに来てくれてありがとう」
「困った時はお互い様です。なにかクエストオプションに関連する困り事はありませんか?」
彼方が一歩前にでて隊長と話すと、クエストオプションに関連する話を持ち出し、コメント欄てはあからさますぎると視聴者達からつっこまれていた。
「幾つか報告があったな。最重要なのは本部にあるジェネレーターの再起動だな。あのロボットの襲撃で、メインジェネレーターがやられて電力が心許ない。他には何があった?」
「あとインフラ担当から地下水の水圧がおかしくなったとの報告があります」
「食料倉庫担当からは食料が足りてないので備蓄倉庫からとってきてほしいと報告がきています」
隊長が予備ジェネレーターの話をして、周りの部下に問い合わせると、水と食料が不足していることがわかり、クエストオプションも【地下水汲み上げ装置の再起動】【現地生物の肉狩猟】と言う項目に変更される。
「この2つも重要だが、最重要なのはゼニス社の生き残りの救助だ」
隊長はそういってブレスレットを操作してホログラムの惑星マップを表示する。
「ここが俺達のシェルター。この高速道路を通ってゼニス社に向かうことが出来る。ここにシェルターに送電するジェネレーターもある」
隊長はホログラムの惑星マップにピンを刺して現在地や移動ルートなど説明していく。
「ゼニス社って?」
「この星の開拓出資をしている企業で俺も入植者達も全員ゼニスの社員扱いになる。支社ビルが一番最初にあのロボットの襲撃を受けたが、今も救助信号が送られていて、社則で確認しないといけないんだ」
「こんな状況なのに?」
話を聞いていたノエルが驚いた顔で聞き返すと、隊長は自嘲気味に笑って口を開く。
「そういう契約をしたからな。このまま信号を無視してこの星から出ていくと契約違反で本社から数世代にわたって返済しないといけない賠償金が課せられる。それに電力をどうにかしようと思うなら支社にいくしかない」
隊長の話を聞いていると、源三郎達のクエストジャーナルが更新されて、メインクエストとしてゼニス支社の様子を見に行くと言うクエスト内容が追加された。
「取りあえずまずはオプションから済ましていこう」
「備蓄倉庫と水は同じルートじゃな」
「それじゃあ、まずは水と食料から解決しない? ゼニス支社はどうみても今回のメインだよ」
「私は皆さんが決めた方でいいです」
彼方がクエストオプションから解決しようと提案すると、ノエルは同じルートの水と食料から始めないかと提案する。
「ならそれでいこう。隊長さん、水と食料から解決します」
「ありがたい、頼んだぞ。正直避難した人たちの精神的ストレスがヤバいんだ」
彼方がクエストを受ける旨を伝えると、隊長は心底ほっとしたような顔になる。
「汲み上げポンプはこっちだったね」
「備蓄倉庫はその手前だね」
マップを確認しながら源三郎達は通路を進んでいく。
「まて………」
先頭を歩いていた源三郎が急に立ち止まり、周囲を伺う。
「お爺ちゃんどうしたの? レーダーには特に反応ないよ?」
「すまんが、少し黙っててくれぬか」
彼方はマップに付属してるレーダーに反応がないことを指摘するが、源三郎は唇に人差し指を当てて静かにとジェスチャーを交えて返事する。
配信コメント欄でも源三郎の唐突な行動に困惑する視聴者達。
「そこかっ!」
「きゃっ!?」
源三郎はガンブレードを抜くと、彼方の背後を狙って突く。
彼方は驚いてその場に腰が抜けたようにしゃがみこみ、配信コメント欄では「お爺ちゃんご乱心!?」「フレンドリーファイア?」「ボケた?」などコメントが書き込まれていく。
「あっ! すっ、ストーカーイレイザー!?」
源三郎がガンブレードを突き刺した空間にノイズが発生したかと思うと、光学迷彩で姿を消して彼方を背後から襲おうとしたストーカーイレイザーの姿が露になる。
「ふんっ!」
源三郎はブレードを捻りながらさらに深く押し刺してストーカーイレイザーに止めをさす。
「え? 嘘………お爺ちゃん何でわかったの?」
「ん? 勘じゃよ」
彼方は自分の背後に忍び寄ってたストーカーイレイザーと源三郎を交互に見ながらそんなことを聞く。
配信コメント欄では「勘て………(ドン引き)」「さすおじ」「なんか不正ツール使ってると言われた方が納得できる」といったコメントが書き込まれていた。
「敵はあの一体だけだったみたいですね?」
「こちらからスキャンかけないと姿を認識できないのはバランス悪いかも」
「なに、空間の歪みとか、仄かな輪郭とかでわかるようにはなってるぞ?」
「それでわかるの、お爺ちゃんぐらいじゃない?」
鈴鹿が周囲をスキャンしながら敵影がないことを確認すると源三郎達はクエストオプションの最初の目的地である備蓄倉庫にたどり着く。
「この非常用食料を回収すればいいんだね」
「シェルターの避難民がどれだけかわからんが、これでたりるのかのう?」
「そこはゲーム的な処理で足りる設定じゃないですか?」
備蓄倉庫内にある非常用食料が入ったコンテナを回収するだけでこのオプション項目は更新されてあとは持って帰るだけになった。
「次は地下水の汲み上げ装置だっけ?」
「こちらから行けます」
源三郎達は次の目的地である汲み上げ装置があるエリアへと移動する。
「ありゃ、壊れとるの」
「イレイザーの襲撃の余波ですかね?」
汲み上げ装置を確認すると、バチバチと火花を上げて故障していた。
天井に穴が空き、周囲に瓦礫が落ちてることから、イレイザーの襲撃で天井が崩れて瓦礫が装置に落ちて壊れたようだ。
「機械系の生産スキルがあれば直ぐ直せるの」
「生産スキルがなかったら、部品探してあちこち行かないと行けなかったみたいね」
故障した汲み上げ装置を確認すると、ジャーナルが更新されて、スキルで直すか、予備部品を見つけて直すの二択が表示される。
源三郎達は運良く該当する生産スキルを持っていたので難なく解決する。
「よし、これであとは支社の様子を見に行けばいいね」
「話からすると車両で行かないと行けないが、装甲車ではちと不安じゃな」
「宇宙船で行けないか、聞いてみては?」
クエストオプションをクリアした源三郎達はメインのゼニス支社ビル調査をどうするか話し合う。
クエストの流れから高速道路を通らないと行けないが、源三郎達フリージアカンパニーが所有している地上車両でイレイザーと戦えるのは1人乗りの多脚戦車【ヴァルム】のみ。
取りあえず源三郎達はクエストの報告がてら、船で行けないか隊長に聞きに行くことにした。
「対空兵器を奪われてる上に制空権も向こうが持ってる。お勧めはしない」
「うーむ、やはり、対策されてるか」
「明日の朝にでも新しくテック4車両作って行くしかないね」
シェルターの隊長に船で行けないか聞いてみればやはり対策されていることが判明すし、彼方は仕方ないとばかりに新しく地上車両を作ることを決めた。
「さて、いい時間なので今日の配信はここまで、明日はゼニス支社に挑みます」
「この配信が面白かったら、チャンネル登録や高評価してね!」
「それでは皆様、よい夜を」
クエストオプションをクリアすると彼方達はそろそろログアウトしないといけない時間帯だったので、配信を終了し、ログアウトしていった。
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