第97話 お爺ちゃん、イレイザーの襲撃を押し返す


「火具矢!」


 源三郎は大太刀を和弓に変形させて矢を撃ち放ち、イレイザ戦闘機の一機を撃ち落とす。


「ふむ、それほど耐久力はないようじゃな」

「お爺ちゃんの船と装備がテック4だからじゃないかな?」

「すいません、こっち応援お願いできますか?」


 源三郎は一撃でイレイザー戦闘機を撃墜したが、テック3の彼方達は一進一退で、鈴鹿に至っては背後に張り付かれてドックファイトを展開しており、救援を求めてくる。


「わしがいこう!」

「お願い、お爺ちゃん!!」


 源三郎はグラップラーシップモードに変形してアフターバーナーを点火して、鈴鹿を追いかけてるイレイザー戦闘機に肉薄すると、大太刀で一刀両断する。


「ミサイル発射! ってあれ?」


 ノエルはイレイザー戦闘機に向けてミサイルを発射するが、ほとんどのミサイルは明後日の方向に飛んでいき、イレイザー戦闘機のバリアを少し削るだけだった。


「すいません、相手のジャミングの方が上でフォローできません」

「ドンマイ」


 体勢を整えた鈴鹿が申し訳なさそうに伝えてくる。

 ノエルは鈴鹿にフォローする言葉をかけるとレーザーに攻撃を変える。


「お爺ちゃんがいなかったらやばかったかも?」

「ジャマーとバリアが強くて、私達の船とは相性が悪かったかもしれませんね」

「ごめん彼方のお爺さん、私達三人で一機を担当するから、もう一機お願い!」

「別に全部落としてもかまわないじゃろ?」


 彼方、鈴鹿、ノエルの3人で一機を包囲して攻撃を仕掛け破壊し、もう一機はグラップラーシップモードの大善牙が二刀の大太刀で三枚に卸していた。


「取りあえず増援はこなそうじゃな」

「ドロップ品回収して惑星に降下しようか」


 戦闘を終了すると、源三郎達は戦闘機の残骸からドロップ品を回収して惑星に降下して行く。


「こいつはひどいな」

「あちらこちらに襲撃の跡が」


 惑星に降下して雲を抜けると、眼下に広がるのは激しい戦闘痕があちらこちらに目立つ荒野だった。


 宇宙船を停泊させるハンガーデッキがあるビルは半壊しており、源三郎達瓦礫だらけのガレージに着陸する。


「おおい! 救援要請聞いてくれたのかい?」


 源三郎達が船からおりるとビルの非常階段口から入植者と思われる男性が顔を出して手招きしてくる。


「取りあえず何かあるかわからん。警戒して進むぞ」

「うん」


 源三郎達は警戒しながら入植者の元へと近づいていく。


「何があった?」

「それはこっちが聞きたいぐらいだよ。突然巨大なアメンボみたいな船がやってきたかと思ったらロボットや戦闘機が次々と降下してめちゃくちゃにしやがった」


 特に問題なく非常口までたどり着いた源三郎達は入植者の男性に事情を聞くと、入植者の男性はキレ気味に現状を語る。


「俺達は地下のシェルターに逃げ込んだが、通信施設をやられてみたいでな。決死隊募って地上にでて通信してたらあんたらがきたんだ。取りあえずシェルターまできて、俺達のリーダーと会ってくれないか?」


 入植者の男がそう言うと、クエストジャーナルが更新されて、シェルターにたどり着くと言うクエスト内容に変わる。


「おい大変だ! ビルに残ってたロボットが襲ってきたぞ!!」

「くそっ! あんた達もあいつらスクラップにするのを手伝ってくれ!」


 非常階段の下を見張っていた他の入植者が叫び、源三郎と話していた男性が銃を構えて階段を見張る。


「きた──ゲヒャ!?」


 入植者の一人が撃たれて倒れる。


「イレイザー達じゃが………あの惑星で使った液体金属のスライムはいないようじゃな?」

「まだ実験中であの惑星が試運転だったとか?」

「クエストを進めれば何かわかるかもしれません」


 イレイザーの戦闘ロボットがロの字型の非常階段を上りながらレーザーを撃ち込んでくる。

 彼方達と入植者達は瓦礫で遮蔽をとりながら階段の手すり越しに銃を撃ち込む。


 ガンモードで応戦する源三郎はイレイザー側に住民を浚うのに使用した液体金属のスライムがいないことに気づく。


「グレネード投げます!」

「そのあとわしは突っ込むぞ」


 鈴鹿がグレネードを投げて階下にいたイレイザー達のところで爆発する。


「キイイィィエエエェイッ!!」


 爆発はイレイザー達のバリアにほとんど塞がれるが、ブレードモードで突っ込んだ源三郎がバリアごとイレイザーを切り裂いて道を開く。


「敵の殺人ドロ───ぐあっ!?」


 階段の手すりから下を覗いていた入植者が叫ぶと同時に、階下から吹き上がるように飛んできた回転するノコギリ刃の円盤型ドローンに切り裂かれて落下していく。


「こっちのイレイザーは殺しにかかってきてるね!」

「液体金属のスライム使って浚う気はないってことかな?」



 ノエルと彼方はフルオート射撃で弾幕を使って殺人ドローンを破壊していく。


「ええいっ! 鬱陶しい!!」


 殺人ドローンは源三郎を人間達の中で一番の驚異と感じたのか、群がって攻撃を仕掛けてくる。


 源三郎はガンブレードで殺人ドローンを破壊しながら、手すりから階下に飛び降りたり、壁を利用して三角飛びして殺人ドローンの攻撃を回避する。


「今だ! 下に降りるんだ!!」


 源三郎達がイレイザーや殺人ドローンを相手にNPCの入植者達が階段を下りてシェルターを目指す。


「くそっ! こっちは瓦礫で道が塞がれてるぞ!!」

「そっちの通路から降りれるはずだ」


 イレイザーの襲撃を押し退けて階段を降りていく源三郎達。

 案内もかねて先頭を走っていた入植者の集団がそんなやり取りをして横道の通路を進もうとする。


「うぎゃあああーっ!!」

「なっ、なんだっ!? ど───ガハッ!?」


 横道の通路を先行して進んでいた入植者の一人が悲鳴を上げる。

 横道の入り口にいた入植者が通路を覗くと、見えない何かに腹部を貫かれる。


「光学迷彩タイプじゃ! あそこをスキャンしてくれ!!」


 源三郎は腹部を貫かれた入植者の血が浮遊してるように見えたのと、ゲーム特有の透明なキャラがいる場所の空間の歪みから光学迷彩仕様の敵の存在予測して叫ぶ。


「いたっ! ストーカーイレイザーって言う敵!」

「あ、姿を現しました。どうやら消えるのは短時間だけのようです」

「うわっ! 早いうえに、ヤモリみたいに壁に張り付いてキモい!!」


 彼方達がスキャンすることで光学迷彩で姿を消してるストーカーイレイザーと言う敵の存在を確認する。

 光学迷彩の効果時間が終わったのか、ストーカーイレイザーは源三郎達の前に姿を表す。


 その姿はラバースーツで体をおおったような人型で、手足からは鋭い鉤爪がはえていた。頭部のほとんどを占める単眼が赤く光ると四つん這いになってゴムボールのようにあちこち跳躍したり、ヤモリのように壁に張り付いてシャカシャカとはい回る。


「くるぞっ!」


 ストーカーイレイザーは源三郎達をカメラアイで確認するようにズーム音やシャッター音を響かせると、四方八方に跳躍して翻弄させようとする。


「動きが早すぎる!!」

「全然当たらない!」


 彼方達はアサルトライフルで応戦するが、ストーカーイレイザーのトリッキーな動きに翻弄されてとらえられず、壁に穴をあけるだけだった。


「わしに任せろ」

「お爺ちゃん!?」


 源三郎はガンブレードを腰の鞘に納めると、無防備な姿で前にでる。

 武器を納めて前にでたことに彼方は驚くが源三郎は手で来るなとジェスチャーすると、居合いの構えをとる。


 ストーカーイレイザーは一旦動きを止めて、源三郎の行動を警戒するように壁に張り付いてカメラアイで見つめる。


 源三郎は不敵に笑うと、ストーカーイレイザーにかかってこいと言うように手招きして挑発する。


 ストーカーイレイザーは挑発に誘われるようにまた壁を四方八方飛び回り、源三郎の背後に回るとその鉤爪で切り裂こうとする。


「きぇええいっ!」


 源三郎はくるりとその場で回転しながら、回転の運動を利用した抜刀でストーカーイレイザーを一刀両断する。


 両断されたストーカーイレイザーは、源三郎の両サイドを通り抜けて反対側に激突するように落下すると爆発した。


「久々じゃったが、身体は覚えておるのう。いや、この場合は脳か?」


 源三郎は無意識の癖で血糊を払うようにガンブレードをぶんっと振ると、時代劇で見かけるような回転しながら鞘にまたガンブレードを納める。


 配信視聴者達は源三郎の抜刀術を見てお爺ちゃんスゲーーーーと盛り上がり、スパチャまで投げんでいた。


 



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