第93話 お爺ちゃん、アノマリーをたくさん見つける。


「お爺ちゃん、あのエイリアンの宇宙船がなんなのかわかったよ」

「ほう、エイリアンロストシップとして使えそうか?」


 超巨大生物の排泄物の化石を採掘していた源三郎に彼方が話しかけてくる。

 視聴者のコメント欄では性能良くてもウンコから出てきたのはちょっと嫌だなと言う意見がそこそこ書き込まれていた。


「残念ながらエイリアンロストシップではございません。それどころか航行能力もないです」

「うん? 航行能力もないとはどう言うことじゃ?」


 鈴鹿が首を横に振りながらエイリアンロストシップではないと伝える。

 それどころか航行能力もないことに源三郎は首を捻って、調査をしていた彼方達と発掘された宇宙船を交互にみる。


「あれは生け贄の箱です」

「は? 生け贄?」


 源三郎は思わずどう言うことだと説明の途中で聞き返す。


「うんとね、船内にはミイラ化したエイリアンがいっぱいいて、皆宗教的シンボルを握りしめて死んでたの」

「調査結果によると、超巨大生物を神格として信仰していたエイリアン文明があって、加護を求めて宇宙船に模した生け贄の箱に住民を入れて宇宙に打ち出して、超巨大生物に食べさせてたみたいなの」


 彼方とノエルがエイリアン宇宙船の調査結果を報告する。


「超巨大生物の消化能力が低かったせいか、ほぼ原型を留めたまま排泄されたのか。こっちも粗方掘り尽くしたが、あの宇宙船以外は鉱石ばかりじゃったよ」

「テクノロジー的なものはなくて、歴史的、エイリアン学的、生物学な価値があるだけっぽいよ」

「とりあえず、発見物の報告をして次のアノマリーを探しますか」


 排泄物の化石と中から発掘された宇宙船を報告して報酬を貰うと、源三郎達は次のアノマリー反応があった座標にワープする。


「今度は惑星からか」

「うわっ! 惑星をスキャンしたらハザードレベル3の極寒惑星だって」

「今の宇宙船や宇宙服なら大丈夫ですけど、気を付けましょう」

「大気圏内まで降りないといけないみたいだね」


 ワープアウトした先には巨大な惑星があり、彼方がスキャンをすると惑星全土が極寒に覆われた星であることがわかった。


「激しい吹雪で、視界では何もわからんな………」

「レーダーとスキャンが頼りですね」


 宇宙船で大気圏内まで降りるとほぼ視界はホワイトアウトするようなブリザードだった。


「中々特定できませんね」

「ブリザードのせいでスキャンが弱まってるとか?」

「それならそう言う報告がテキストとかで出そうだよね?」

「とにかく調査を続けるぞ」


 惑星に降りたって10分前後スキャンを続けるが一向に進展はなく、時間だけが過ぎていく。


「む? やっと反応がきたぞ!」

「えっ、どこどこ?」


 配信視聴者達と雑談しながら場を持たしてスキャンをつづけていると、ついに源三郎がアノマリー反応を特定する。


「生物学が必要なアノマリーじゃと!? こんな極寒の星で生命体がいるのか?」

「化石じゃないの?」

「それなら考古学も要求されるかと」

「とにかく調査を続けて!!」


 アノマリー反応があった場所は氷河の一部で、源三郎が叫んだように、難易度の高い生物学を要求される。


「チーム全員の合計とアンロックした生物学系の研究プロジェクトでギリギリ達成か………」

「要求スキルの難易度から期待しちゃうね」

「今アノマリー解析中じゃて、もうしばし待て」


 要求スキルを達成してアノマリーの分析に成功すると、発見したアノマリーの解説テキストが表示される。


「ほう、この分厚い氷の下に魚のような水棲生物がいるそうじゃ」

「こんな極寒の星なのに?」

「どうやら地熱によって水温が水棲生物が生きていく環境に適した温度まで暖まっているそうです」

「地上部分は氷で覆われ外敵がおらず、水中はプランクトンなどエサが豊富でかなり多種多様な水棲生物が生きているみたい」


 源三郎達が見つけたのは極寒の氷の下に隠された水の楽園。


「あ、アノマリーの続きがあるみたいです。採掘とドローンのスキルが必要だとか」

「採掘は任せろ」

「ドローンはすずちんの出番だね」


 氷の下に隠された水の楽園を見つけたら終わりかと思っていた源三郎達。

 ところが鈴鹿が待ったをかけて続きがあると知らせてくれる。


「採掘スキルは氷に穴開けるためか」

「ドローンは氷の下の水中探索とサンプル回収のためですね」


 源三郎の船が分厚い氷の層に穴をあけ、鈴鹿の調査用ドローンが穴から氷の下の海に侵入して、水棲生物を捕まえたりする。


 捕まえた水棲生物は地球の魚のような生物から虹色に輝く皮膚のイルカのような哺乳類などがいて、中には軽自動車サイズのエメラルドのような輝きを持つ鱗で覆われた上半身が馬、下半身が魚のような異星生物もいた。


「あ、ちょうどいいから、DNA採取させて」


 ノエルはクローンデザイナースキルで回収した生物達のDNAを採取していく。


「これでこのアノマリーは終わりみたいですね」

「あと一つアノマリー探索したら今日は終わりかな?」


 極寒の惑星から脱出した源三郎達は次のアノマリー反応座標にワープする。


「また惑星だ」

「今度の惑星は大気が濃度の高いアンモニアや塩素系の毒ガスですですね」


 ワープアウトすると、ヘドロを連想するような黒緑の大気に覆われた星惑星がみえた。

 鈴鹿が惑星にスキャンをかけると大気が人類にとって有毒なガスで覆われていることがわかった。


「とりあえずアノマリーを探そう」

「うえっ! アノマリーの反応は惑星地表だってさ、あんまり降りたくないなあ」


 源三郎達がアノマリーの探索を始めると、目的地が惑星地表にあることがわかり、彼方が嫌そうな顔をする。


「仕方ないね。とりあえず船から降りないようにしないと」


 源三郎達は渋々といった感じで毒の大気に覆われた惑星に宇宙船で降下していく。


「これは毒々しいな」


 大気圏内に入れば地表の様子がだんだんとわかってきたが、グロテスクな形の植物からはガスが吐き出され、地上は毒々しい色合いの沼地であちらこちらで泡立っている。


「生物はいないな」

「こんな環境じゃ無理でしょ?」


 源三郎は視界や宇宙船のカメラで周辺をみて回って生物がいないか調べる。


「いや、アノマリーの解析で宇宙生物学を求められた。どうやら、この星には生命がいるみたいだぞ」

「嘘でしょ!?」

「実は地下空洞があって、そこはガスがないとかじゃない?」


 スキャンを続けていた源三郎に対してゲームシステム側から宇宙生物学のスキルを求められる。


 彼方はこんな環境でも生物が存在することに驚き、ノエルと配信視聴者達が先ほどの極寒惑星の経験から安全地帯があると予想する。


「アノマリーの解析完了したが、これは面白いな。まだ原始的生物しかいないが、この星の環境に適した進化をして、アンモニアを養分に、毒ガスで呼吸して生きているそうだ」

「うわっ!? あの七色にブクブクと泡立つゲルスライムがこの星の原始的生物!?」

「全体的にグロテスクなデザインの生物が多いですね」


 アノマリーを解析すると、あちらこちらに周囲の風景に擬態した原始的生物達の姿がスキャンに反応していく。


「ところでノエル、この星の生物もDNA採取していく?」

「絶対に嫌!」


 彼方がなにげ無しにノエルに聞くと、ノエルは本気で拒否していた。


「こっちは続かないみたいだな」

「ですね」

「今回は特殊な環境で生きる生態系のアノマリーだったね」

「それじゃあ、あとは報告だけだから、今日の配信はここまで! みてくれてありがとうね!!」


 アノマリーの解析が完了したのを確認して、彼方は配信の締めにはいる。


「この配信が面白かったらチャンネル登録と高評価よろしくお願いしまーす!」

「それでは皆様よい夜を」

「土曜日のイベント、お爺ちゃんを応援してね!」


 いつもの挨拶とスパチャしてくれた人への読み上げとコメント返信、そして最後に彼方が土曜日の公式イベントに源三郎が参加することをお知らせしてログアウトした。




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