第92話 お爺ちゃん、今日もイレイザーの痕跡を探す


「イベントのレースコースってそんな危険なとこなの!?」

「普通にレースゲームみたいなコースだと思ってた。」

「私も宇宙を舞台にしたF1みたいなものかと………」


 彼方達がログインしたので源三郎は合流し、レースコースの感想を伝えると、彼方達は自分が想像していたものより過酷なコース内容に驚いている。


「練習内容も配信したら盛り上がるかな?」

「コース紹介は悪くないと思うが、多分他の配信者もやってそう」

「えーっと………彼方さんノエルさん、大会当日まで配信やSNSにスクショ上げNGだそうです」


 コース内容を聞いた彼方がいいアイデア思い付いたとばかりに指をパチンと鳴らして源三郎がレースの練習する配信を思い付くが、公式サイトを確認していた鈴鹿が公式から当日まで情報公開禁止であることを伝える。


「ふむ? レース星系ではそんな注意事項なかったがのう? 流し読みで見落としたかの?」

「でも結構スクショ上げてる人いるよ?」


 源三郎は顎髭を弄りながら同意書の内容を思いだそうとするが、流し読みしていて所々おぼろげにしか覚えていない。


 彼方はアカウントを持っているSNSにアクセスして、スクショを上げてる書き込みを源三郎達に見せる。


「後々何かしらペナルティーがあるかも………あ、書き込み事態削除され始めとる」


 源三郎もSNSにアクセスして書き込みを確認していたが、書き込んだ人達が次々とレース関連のスクショを削除したりされたりしている。


「下手に配信してたら危なかったかも?」

「ちゃんと注意事項や本文はしっかり読みましょうね」


 関連書き込みが削除されていくのを見て彼方はあははと誤魔化すように笑い、鈴鹿はダメですよと子供に注意する感じで諌めていた。


「それじゃあ、今日の配信内容はどうする?」

「そうですね………今日もイレイザー関連でよろしいのでは?」

「視聴者さんから送られてきた情報から、まだ出逢っていないイベントもありそうだしね」


 彼方は改めて本日の配信予定に関してミーティングを始める。

「今日もアノマリー探索ミッションしていく?」

「今のところアノマリー探索ミッションでしかイレイザー関連のイベントが確認できないからのう」

「アノマリー探索ミッション中にストーリークエスト始まったらそっちを優先でいいんじゃないかな?」

「そうですね」


 配信する内容を粗方決めると、彼方は配信準備に入り、ドローンカメラを呼び出す。


「皆さん今晩は! 彼方です!!」

「やっほー、みんな元気? ノエルだよ」

「画面の前の皆さまごきげんよう、鈴鹿です」


 いつもの挨拶から配信は始まり、常連視聴者達が彼方達の挨拶に返事コメントを書き込んでいく。


「明後日には公式のイベントのギャラクシーレースが始まるね。本当はお爺ちゃんの練習風景とか配信したかったんだけど、運営側がイベント当日まで配信NGなので、当日を楽しみにしてください。まずはアンロックされた研究プロジェクトから紹介するね」


 さりげなく源三郎がイベントに参加することを告知しながら、彼方はカンパニーのアンロックされた研究プロジェクトの紹介に入る。


「まずはステーション水耕栽培システム! 惑星ドーマン上にある宇宙ステーションで農作物が作れるようになったよ」

「一定期間ごとに食料が生成されて惑星の住人の食料になり、余剰分は交易商品になります」

「今は惑星に住民がいないから全部交易商品扱い!」


 彼方達は水耕栽培システムを解説していく。


「続いてゼノモーフィング合金!」

「これはゼノモーフィング金属と呼ばれる形状記憶合金で、プログラミングした形に勝手に変形して固定化されるの。建築速度が速くなるよ」

「近未来的な技術素材ですね」


 コメント欄でもアンロックされた研究プロジェクトの効果内容について考察したり話が盛り上がる。


「最後は私にとってとても嬉しいですね。群ドローンロボット工学。ドローン関連のステータスがアップロして、性能や一度に扱えるドローンの数が増えました!」


 鈴鹿が嬉しそうに紹介すると、視聴者達もおめでとうとお祝いコメントを書き込んで祝福してくれる。


「さて、研究プロジェクトのアンロック報告は以上です! 今回もイレイザー関連の情報求めてアノマリー探索ミッションに挑戦します!」

「また新たな情報とか見つかるといいね」

「それでは早速いってみましょう」


 彼方達は視聴者達からもらったイレイザー関連のイベントが発生した星系のステーションでアノマリー探索ミッションを受ける。


「一発目はアステロイドベルト帯ですね」

「うーん、また偽装基地?」

「アダマンティン鉱床じゃといいな」

「とりあえずスキャンしていこう」


 アノマリー反応があるエリアにワープアウトすると、アステロイドベルト帯だった。

 源三郎達はアノマリーの正体を探すために四方八方をスキャンしていく。


「また大きな小惑星だね」

「また偽装基地パターンかな?」


 スキャンの結果、アステロイドベルト帯で一番大きな小惑星からアノマリー反応があったことから源三郎達は前回のようにイレイザーが小惑星に見せかけた偽装基地系かと連想する。


「あ、でも宇宙生物学と考古学スキルを求められてる?」

「ふむ? とりあえず両方セットして続けるぞ


 スキャンを続けると、アノマリーの正体を知るのに必要なスキルが提示され、スキルを入れ換えたりしてスキャンを続ける。


「えぇ~………この小惑星………ウンコの化石なのっ!?」

「うわぁっ!?」


 スキャンの結果、目の前の小惑星が実は超巨大生物の排泄物の化石であることが判明し、彼方達は排泄物の化石から距離を取る。


「年代測定によると数億年前に排泄されたとか? 宇宙空間で生息できる超巨大生物がいたんだ」

「えーっと、お食事の方申し訳ございません」

「そう言えば前に惑星に卵の欠片みたいなの発見したよね? 卵のサイズから星に卵を産み付ける巨大生物ではないかってやつ」

「ああ、そう言えばそんなアノマリー発見もあったな」


 彼方は排泄物の化石から距離をとりながら発見物のテキストを読み上げ、鈴鹿は視聴者達に謝罪する。


 そんな中、ノエルが過去のアノマリー探索ミッションで発見した惑星に産み付けられた卵の欠片のことを思い出す。


「関連性はあるかもしれないけど、スキャンの結果からはそう言う記述はないね」

「宇宙空間で生息できる超巨大生物もいつか会えるかも知れんのう」

「ところでさ、これ採掘できるけど掘りたい?」

「うーん………ちょっとパスかな?」


 解析の結果、排泄物の化石は採掘することが出来るが、彼方達女性陣は元が排泄物だったので嫌がる。


「せっかくじゃし、わしが掘るか。ちと乗り換えてくる」


 源三郎は最寄りのステーションで採掘船に乗り換えると排泄物の化石を掘り始まる。


「ふむ、超巨大生物の主食は鉱石のようじゃの。アダマンティンも混じっておる」


 源三郎が排泄物の化石を掘ると、一般的な鉱石とレア素材であるアダマンティン鉱石が採掘されていく。


「ぬ? これは………宇宙船か?」


 半分近く掘り進めると、宇宙船の残骸のようなものが現れ始める。


「ほとんど原型をとどめているってことは、超巨大生物に丸飲みされたのかな?」

「そのまま消化されず排泄された?」

「あ、この宇宙船もアノマリーとしてスキャンできますよ!」


 排泄物の化石からエイリアンの宇宙船を掘り当てた源三郎達。

 視聴者達も新しいアノマリーの発見に盛り上がりを見せている。


「とりあえずスキャンして調べてみようよ。お爺ちゃんはそのまま他に何か出てこないか化石を掘り続けて」

「あいよ」


 源三郎は引き続き採掘を続け、彼方、ノエル、鈴鹿の三人は化石から出てきたエイリアンの宇宙船を調べ始めた。




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