第90話 お爺ちゃん、イレイザーの新たな痕跡を見つける。
イレイザーの痕跡を探して配信視聴者から提供して貰った情報を元にアノマリー探索ミッションを受けた源三郎達。
ソロモン自由同盟領域のアステロイドベルト帯で見つけた小惑星で結晶生命体に襲われ、源三郎のテック4グラップラーシップのお披露目も兼ねて戦い、結晶生命体を壊滅させた。
「それじゃあ、改めてアノマリー反応のある小惑星を調べようか」
「うむ」
「結晶生命体も全滅したっぽいね」
「彼方のお爺さん、お疲れさまでした」
源三郎に労いの言葉をかけながら小惑星に向けてスキャンしていく彼方達。
4機の宇宙船が小惑星を囲むように360度余すことなくスキャニングしていく。
「あっ! 考古学スキルで解析が始まった! イレイザーか、エイリアン文明の可能性あるよ!」
彼方がそう叫ぶと、各自のコクピット画面に解析中の読み込みバーが表示される。
「解析が終わったようじゃの」
「この小惑星、内部をくりぬいて基地になってるって」
「結晶生命体が出て来た場所から内部に入れるみたい」
解析が完了すると、外見は小惑星だが内部をくり貫いて基地になっていることがわかり、源三郎達は結晶生命体が出入りしていた穴から内部に侵入していく。
「内部は………破壊されてるな」
「あの結晶生命体が壊したのかな?」
「うわー、ぐちゃぐちゃ」
「これ以上は宇宙船では探索できませんね」
基地内部は徹底的に破壊されており、基地としては機能している様子はない。
適当な処に着陸した源三郎達は徒歩で基地内部を探索する。
「ふむ………内部から破壊されたようじゃな」
「外側は損傷した様子がないから潜入破壊工作か内乱?」
源三郎達が軽く基地を探索すると内部から破壊された痕跡が見つかる。
「イレイザー!?」
「の残骸ですね」
「あれ? 同士討ちしてない?」
更に基地の奥を調べると、イレイザーの戦闘ロボの残骸を多数見つける。
彼方が言うようにイレイザーの戦闘ロボ達はお互いに攻撃しあったように破壊されている。
「………これ同じイレイザーのロボットですけど、こっちとこっちのデザイン違いません?」
「んー? 言われてみれば………違うような?」
鈴鹿が指摘するように、同士討ちしたと思われるイレイザーの戦闘ロボット達をくまなく観察すると、同士討ちしたイレイザーのデザインが違うことがわかる。
「あ! こっちのロボット、居住基地の住民を浚った時にいたイレイザーと同じデザインだよ!」
「む? 確かに似ておるな」
「んー………同士討ちした理由はなんだろう?」
「もう少し基地を探索してみませんか?」
源三郎達は更に基地内を探索する。
基地内は時折アイテムが入っている貨物コンテナがあるだけで、敵も出てくる様子もない。
「ここが終点のようじゃな」
「かなり激しく破壊されてて元がなんの部屋だったのかわからないね」
「ここもイレイザー同士が争いあっていますね。やはりデザインが違うタイプがいます」
「ん? 今あそこ光らなかった?」
基地内を探索すると、最新部と思われる場所にたどり着く。
そこはこの場所がなんだったのか痕跡を残したくなかったのか、徹底的に破壊されていた。
そんな中、ノエルが何か見つけたように破壊された部屋の中を進んでいく。
「これは………クリスタル?」
「ふむ、ストーリークエストが発生したな」
「エイリアン言語学者のブータニアスさんとこまでこれを持っていけばいいんだ」
ノエルが残骸を退かして見つけたのは発光するひし形のクリスタル。
ノエルがクリスタルを取り出した瞬間ストーリークエストが発生し、エイリアン言語学者のブータニアスのもとへクリスタルを届けよとクエストジャーナルに表示される。
「これ以外はなにもないか?」
「うーん、本当になにもないっぽいね」
クリスタル以外に情報がないかと源三郎達は再度基地内を探索するが、本当になにもないのか、それともスキルが足りてないのか何も見つからなかった。
「おやおや、君達はイレイザーとサイブリック関連と因縁があるようであーる!」
道中襲撃など特に問題なく、連邦領域にあるブータニアスの研究所へ向かい、クリスタルを見たブータニアスがそんな言葉を言う。
「ブータニアスさんはこれが何か知っているの?」
「うむ! これはサイブリックが使っていたといわれている映像などの記録装置であーる!」
「でも、それはイレイザーの基地で見つかったよ」
「敵に奪われたとかじゃないの?」
「データを吸い出せたら何かわかるんじゃないか?」
イレイザーの基地で見つけたクリスタルの正体をブータニアスから聞いた源三郎達はなぜそこにあったのか疑問に思う。
「ならば中身を見てみるであーる!」
「え? みれるの!?」
クリスタルを受け取ったブータニアスは研究所にある装置にクリスタルを差し込む。
まさかここでクリスタルに内包されていると思われるデータを確認できるとは思っていなかった彼方が驚いて聞き返す。
「この程度のこと、我輩にとっては朝飯前の夕飯前の昼飯前の朝飯前ぐらいに簡単なことであーる!」
「言語学者ってそんなこともできるのかな?」
「さあ、どうなんでしょう?」
「このスペオペ世界の言語学者はマルチにあれこれできるのかもしれないぞ」
彼方とブータニアスの会話を聞いていたノエル、鈴鹿、源三郎の三人は輪になってぼそぼそと言語学者について話し合う。
「あ、ポチっとな!」
ブータニアスはクリスタルを装置に差し込むとボタンを押す。
するとホログラムのディスプレイが表示され、みたこともない言語と思われる記号の羅列が流れ始める。
「ブータニアスさん、これは文字ですか?」
「うむ! 我々に叡知をもたらせたサイブリック星人の文字であーる!」
鈴鹿が手を上げてブータニアスに質問すると、ブータニアスは胸を張って答える。
「なんて書いてあるの?」
「今解析中であーる! しばしまつのであーる」
ノエルが質問すると、ブータニアスはまあ待てとジェスチャーを交えながら翻訳されるのを待つ。
翻訳解析が終わったのか、ディスプレイ画面に表示されていた文字が徐々に日本語に変換されて、内容が判明する。
「ふむ、サイブリックの調査部隊の報告書のようであーる!」
ブータニアスが言うように、クリスタルの中にあったのはサイブリックと呼ばれるエイリアンの調査部隊の報告書だった。
あのイレイザーの基地がある近辺で船が消息不明になる事故が頻発しており、調査隊が派遣された。
調査の結果、小惑星に偽装したイレイザーの聴音哨基地だったことが判明したが、イレイザー側が自分達の偽装がバレたことを認識して、サイブリックの調査部隊を襲撃、生き残りを基地に連れ込んだ。
「イレイザーは有機生命体の滅亡が目的だったんじゃ?」
「問答無用に有機生命体を抹殺したわけではないようじゃな」
彼方と源三郎がクリスタルの情報を見て話し合う。
サイブリックの生存者は聴音哨基地に監禁され、一人また一人と何処かに連れていかれて戻ってこなかった。
クリスタルの最後の方にはデータを書き込んだサイブリック星人の家族へのメッセージや、信仰している宗派の神に助けを求めたりと精神的に追い詰められていく内容が聞き込まれていた。
ついに最後の一人になった時、基地に異変か起きた。
イレイザー同士が争いあい、知基地を破壊し始めた。
生き残ったサイブリック星人は混乱に紛れて基地を脱出することをクリスタルに書き込んだ所でデータは終わっていた。
「同士討ちの理由はわからなかったみたいですね」
「あそこに落ちていたってことは逃げてる最中に落とした設定かな?」
「ふーむ、この同士討ちがイレイザーが唐突に歴史から消えた理由のヒントなのかもしれないのであーる」
「あ、ストーリークエストが終わった」
データを抽出し終えるとストーリークエストが終了したとシステムからお知らせが来る。
「いい時間だし、今日の配信はここまで! お疲れさまでした!」
クエスト終了を確認した彼方がカメラに向かって締めの挨拶を始める。
「この配信が面白かったらチャンネル登録と高評価よろしくお願いしまーす!」
「これからも私達はイレイザー関連のストーリークエストを追いかけていきますので、ネタバレNGじゃなかったら応援してください」
「そうそう、今週の土日のレース、私のお爺ちゃんが出るから応援してね!」
彼方が最後に公式イベントのレースに源三郎が出場することを知らせると、コメント欄では応援コメントが書き込まれていく。
「皆様の期待を裏切らないように頑張らないといかんなあ………」
応援コメントを見た源三郎は俄然やる気を出しできる限り応援コメントに返信していった。
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