第88話 お爺ちゃん、新しい船をお披露目する。
「皆さん今晩は! 彼方です!」
「今日のアップデートみた? ノエルだよー」
「本日のアップデート、色々気になりますね。皆様ごきげんよう、鈴鹿でございます」
いつものように彼方の配信が始まり視聴者達に向かって挨拶する彼方達。
コメント欄では同じように挨拶したり、自分がアップデートで気になった記事の話を書き込む視聴者達。
ウォーモンガーカンパニーのマスターであるアドンが「これガチャなどに役立ててください」と書き込んで早速スパチャ課金していた。
「まずはいつものアンロックした研究プロジェクトのご報告から! 今日はお爺ちゃんがいっぱいアンロックしてくれました! お爺ちゃんありがとう、大好き!!」
彼方はそう言って笑顔で源三郎にお礼を言うと、源三郎は照れたのか、カメラから顔を背ける。
視聴者達は彼方と源三郎のやり取りをみてほっこりしたり、「源三郎、俺と変われ」と嫉妬したりしたコメントが書き込まれていた。
「まずはマイニングカッター強化! 効果はテックレベルの低い採掘船やマイニングカッターでもアダマンティン鉱石が掘れるようになって、惑星に建築出来る採掘プラントの効率アップ、こっちでもアダマンティン鉱石が掘れます!」
「ある程度採掘関連の研究プロジェクトをアンロックしてないと、惑星でアダマンティンの鉱床が見つかっても掘れんからの」
彼方がアンロックされた研究プロジェクトの内容を説明し、源三郎が惑星にあるアダマンティン鉱床を掘る時の注意をする。
「それから惑星開拓側のプロジェクトで人工衛星をアンロックしました。これによって今後人工衛星が前提となる研究プロジェクトが投資可能になりました!」
「実は研究プロジェクトの中には建設や科学など属性タグがあって、人工衛星は宇宙タグの研究プロジェクトの投資額と研究時間が割引されるから、作って損はないよ」
続いて彼方が惑星開拓のアンロックした研究プロジェクトについて解説し、ノエルが補足をいれる。
「アンロック報告は以上でーす! それじゃあおまちかねのガチャの時間だよ!」
「今回は何が当たりますかね?」
「各人10連ガチャを一回挑戦します」
「爆死したら笑ってくれ」
彼方は元気よく両手を振ってガチャに挑戦するアピールをする。
「それじゃ先発はノエルから!」
「おっけー!」
ノエルは視聴者に見えるようにカメラの前で10連ガチャチケットを使用してガチャを始める。
「残念、全部外れ」
「どんまい! 次はすずちん!」
「はい、それでは始めさせてもらいます」
残念ながらノエルは外れよりのアイテムしか当たらなかった。
続いて鈴鹿がカメラに向かって一礼して10連ガチャチケットを使う。
「家具が当たりましたが………私の部屋には合いませんねえ。どうしましょう?
10回中、一回だけ家具が当たったが、和風スタイルの鈴鹿のハウジングルームには合わないデザインだったため、困った表情で当たった家具を見つめている。
「後で使えるかも知れないし、倉庫に置いておく?」
「そうですね」
「それじゃあ、次はお爺ちゃん! でっかいの頼むよ!!」
「こればかりは運じゃからのう………」
「でも今まで当たり出してるしね、彼方のお爺ちゃん」
そんな風に雑談しながら源三郎もガチャチケットを使う。
「ちょっとお爺ちゃん空気読んでよ」
「いや、無茶言うな」
残念ながら源三郎も今回は運に見放されて、すべて外れの回復アイテム系のみだった。
彼方が口を尖らせてブーイングのジェスチャーをしてきて苦笑を浮かべている。
「まったく、ここは真打ちの出番ね」
「なんじゃろ、フラグに聞こえて仕方ないんじゃが」
「ええっと、ノーコメントで」
「どっちでも美味しいんじゃないかな?」
彼方が仕方ないなとやれやれポーズで首を振りながら一歩前にでる彼方。
それをジト目でみる源三郎と視線を反らして返答を控える鈴鹿とニコニコ顔のノエル。
「ふふーん、いいの当まくって悔しがらせるんだから!」
彼方はそう言って10連ガチャチケットを使う。
彼方が発言するとコメント欄では「ピコーン」「勝ったな、トイレ行ってくる」「フラグにしか聞こえない」と言ったコメントが書き込まれていた。
「ちょっとー! 運営さん、ガチャバグってるよー!」
残念ながら彼方も全部外れで、虚空に向かってクレームをいれる彼方。
配信コメント欄では「知ってた」「ですよねー」「フラグ回収乙」などのコメントが次々と書き込まれる。
「気を取り直して、今日はイレイザー関連のアノマリーやストーリークエストを探していく予定なんだけど、その前にお爺ちゃん!」
「先週の土曜日にウォーモンガーカンパニー主催の大規模戦闘で手に入れたテック4グラップラーシップが完成したのだが………個人的には悩んだが、孫の配信の為にお披露目することにした」
ガチャを終えた彼方は今日の配信予定を伝える前に源三郎に話を振る。
話を振られた源三郎はカメラに向かってテック4のグラップラーシップが完成したことを知らせる。
「何か問題でもあるの?」
「うーむ………まあ、問題と言えば問題だし、たいしたことないと言えばたいしたことないんじゃが………どんな内容かはお楽しみと言うことで、な?」
彼方が質問するが、源三郎は歯切れ悪く何が問題なのかお茶を濁すように誤魔化す。
「船自体は完成してるよね?」
「うむ、ちゃんと完成しておるぞ」
「じゃあ、イレイザー関連のアノマリーやストーリークエストを探しに行かない?」
ここでグダグダして配信がだれないように、ノエルが話を進める。
「そうじゃな、取りあえず視聴者さんが言っていたTR4のアノマリー探索ミッションでイレイザー関連の情報が手に入ったらしいから、それをやってみるかの?」
「うん、それじゃあ早速ミッションを受けてみよう!」
源三郎達は視聴者から教えて貰った情報を元にTR4のアノマリー探索ミッションを受けて宇宙に飛び立つ。
「それがお爺ちゃんの新しい船?」
「うむ、テック4グラップラーシップ特殊機体【大善牙】じゃ」
源三郎が製造したテック4グラップラーシップはまるで平安や鎌倉時代の武者大鎧を連想させるような宇宙船だった。
先頭のコクピット部分は兜の前立てや面頬、胴体部分は大鎧の大袖に草摺のようなパーツがついており、船の上面には鞘に納められた大太刀がクロスしてヘリのローダーのようになっていた。
「お爺ちゃん、特殊機体って?」
「どうも一部の装備設計図には製造過程でこれでもかとアダマンティン使ったら本来の製品とは違う上位性能のアイテムになるようじゃ」
「アダマンティンを使わなかったら?」
「わしのグラップラーシップなら通常の素材だと本来なら【当世具足】と言う名前の船になる」
彼方と源三郎のやり取りを視聴していた視聴者達も源三郎が見つけた仕様に驚いている。
「これがお披露目したくなかった理由?」
「いや………そのなんだ………アダマンティンを使うと装備品に特殊スキルがつく場合があるじゃろ? わしの船にはこれがついての………」
源三郎はカメラからグラップラーシップのステータス画面が見えないように体で隠して、彼方達にアダマンティンで付与されたスキル効果やテキストを見せる。
「ぶふっ!?」
「あー、確かにこれはちょっと………」
「でも、これは凄く盛り上がりますよ」
ステータス画面を見た彼方達は三者三様の反応を見せ、それをみていた視聴者達は配信のコメント欄では気になるとか、見せろーとか、いくらスパチャしたら見せてくれますかなど、源三郎のグラップラーシップのステータスが気になるコメントが書き込まれていく。
「えーっと、これは戦闘で見せた方が盛り上がるから今は内緒!」
彼方は自分の唇の前で両手の人差し指でX印を作って視聴者達に内緒と言う。
「気になると思うけど、戦闘でわかると思うし、隠させないから」
「それまでのお楽しみだと思って今は我慢してください」
ノエルも鈴鹿も彼方の真似をしてX印を作ると視聴者達はかわいいから許すとか、早く戦闘始まれなどコメント欄に書き込まれて盛り上がっていた。
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