第87話 お爺ちゃん、アップデートを確認する。


「メンテがあけたの」


 翌日水曜日、ギャラクシースターオンラインの定期メンテナンスが終わったのを確認した源三郎は早速公式ホームページで更新内容を確認する。


「お、新しいガチャがきたの」


 公式ホームページのトップページには、でかでかと新しいガチャの告知と追加されたガチャ衣装を着たキャラクターの広告バナーが表示されていた。


「今回はよくわからんアニメのコラボ衣装とかつらにボイスか………他にハウジング用の家具がガチャに入ったのか」


 源三郎は特設サイトを確認して、今回のガチャで手に入るアイテムの内容を確認する。

 ガチャの特設サイトではコラボしたアニメのオープニングと思われる歌と映像が流れ、主人公達の衣装を着たゲームキャラクター達の画像があった。



「新しい課金アイテムで惑星開拓スターターキットというのが追加されたのか………うーむ、なかなか便利なんだが、値段が高いな」


 ガチャ内容を確認した源三郎は、今回新たに追加された課金アイテムを確認して声を漏らす。


 1つ3000円の惑星開拓スターターキット、アイテム効果は惑星開拓時に都市が追加されたり、最初から発電所を幾つか持っていたりと惑星開拓の序盤が有利になる課金アイテムだった。


「ひとつの惑星に使えるスターターは2つまでか。彼方のためにどれかかってやるかのう?」


 源三郎は長い顎髭を弄りながらスターターキット一覧を見る。


「他には………お、公式主催週末の土日を使ってサーバーイベントでギャラクシーレースが開催されるのか」


 今回のアップデート記念に公式からイベントが開催されており、宇宙を舞台にしたレースゲームを開催する告知があった。


「レギュレーションは………ロストエイリアンシップを除くテック1宇宙船とアーマメントのみか? アダマンティンは使ってはいけないとかいてない?」


 源三郎はじっくり文字を読むときに使う老眼鏡をかけて公式ホームページを何度も確認し、アダマンティンによる強化の有無を確認する。


「書いてないようじゃな。後でアダマンティン鉱床に採掘プラント建てるか」


 公式側からのギャラクシーレースのレギュレーションはテック1の宇宙船とアーマメントで出場する事しか書かれていないことを何度も確認した源三郎は、惑星ドーマンで見つかったアダマンティン鉱床を使うことを決める。


「コースは………専用の星系サーバーを作って開催されるのか。む、今日から練習できるみたいじゃの」


 レースのコースはどんな場所か特設サイトで発表されており、今日から専用の星系にワープして練習ができるようだ。


「優勝者には家具として置けるトロフィーと賞金1億クレジットか。2位が千万クレジット、3位が100万クレジットも貰えるのはいいのう。参加者が多い場合は予選ありか………まあ、テック1宇宙船なら初心者でも買えるし、多いじゃろうなあ」


 大会イベントの注意書を確認しながら源三郎は独り言を呟く。


「あとは細々としたバグの修正やバランス調整か………アップデートの確認はこれぐらいにして、ログインするかのう」


 公式ホームページを確認した源三郎はパソコンの電源を落として、VRカプセルに横たわるとギャラクシースターオンラインにログインする。


「まだこの時間は人はいないのう」


 定期メンテナンスが終わったのは昼の15時、世間ではまだ学校や仕事中なので、この時間からギャラクシースターオンラインにログインしている人は、主婦や夜勤、ニートか平日が休みの人だけといったところか。


「お、ちょうどテック4宇宙船が完成したようじゃな、入れ換えでレース用のテック1宇宙船でも作るかの」


 源三郎がログインすると、システムから惑星ドーマンの造船所で作られていたテック4宇宙船が完成したことをメールで知らせてきた。


「これは………凄いが、少し困ったことになったのう………」


 受け取ったテック4宇宙船のスペックや宇宙船自体に付与されたスキルをみて、源三郎は苦笑する。


「うーん………あんまりお披露目したくないが、彼方も楽しみにしてるしのう………わしが我慢すればいいだけだしな」


 ぐちぐち悩みながらも源三郎はプレイヤー同士のアイテム売買専用であるギャラクシーマーケットでテック1宇宙船やアーマメントの設計図購入していく。


「む? どんどん値段が上がっていってるのう? イベントレースで需要がでると思って転売が始まったか?」


 源三郎がテック1の設計図を買い終わるとほぼ同時に値上がりが始まり、イベントが始まる前の三倍近い相場の値段がつけられていく。


「オイオイオイ………どこの誰だか知らんが1000万クレジットはボッタクリどころじゃないぞ」


 どんどん値上がりしていく中、めちゃくちゃ法外な値段をつけてレア物と勘違いさせるように設計図を売りに出すユーザーもいた。


「取りあえず、アダマンティン鉱床に採掘プラントを建てて………ぬ? 採掘レベルが低くて建てれないじゃと!?」


 源三郎が惑星アノマリーで見つけたアダマンティン鉱床に採掘プラントを建てようとすると、採掘系の研究プロジェクトレベルが低くて建てれないとメッセージが表示される。


「うーむ、まだレースまで時間あるし研究プロジェクトに投資しておくかのう」


 源三郎はアダマンティン鉱床を採掘できるプラントを建てるために採掘関連の研究プロジェクトに投資を始める。


「お爺ちゃん、やっほー!」

「おお、彼方お帰り」


 源三郎が細々とした作業をしていると彼方達がログインする。


「惑星スターターキットとかすごいよね! お爺ちゃん買って!」

「仕方ないのう、お母さん達には内緒だぞ。どれにする?」


 彼方はログイン早々、源三郎に甘えるように抱きつくと、今回追加されたスターターキットをねだってくる。


「うーん………いざ買って貰えるとなると悩むなぁ………」

「こんばんはー」

「やっほー、今日のアップデートみた?」


 源三郎と彼方が惑星スターターキットの一覧をみてどれを買うか悩んでいると、鈴鹿とノエルもログインして挨拶してくる。


「二人して何みてるの?」

「お爺ちゃんにおねだりしたら惑星開拓スターターキット買って貰えることになって、今カタログ選んでるの」


 ノエルが彼方と源三郎の間に入ってカタログを覗き込んでくる。


「確かにこの数は迷いますね」

「1つの惑星に2つまでだから、適当に選んだら後で困るかもしれないしね」


 彼方、ノエル、鈴鹿の3人がお互いにカタログをみてキャイキャイと騒ぐ。


「まあ、売り切れる訳じゃないし、じっくり相談し合えばよいんじゃないかの?」

「うーん、そうだね。一旦保留にして、今日の配信の話しようか」


 源三郎が一言述べると彼方達は納得してカタログを閉じる。


「それじゃあ、今日の配信予定だけど、まずはガチャかな」

「ガチャと言えば彼方さんクルーザーはどうしましたっけ?」

「そういえばそんなのあったね」


 会議を始めると鈴鹿が前回のガチャで当てたクルーザーの話をする。

 彼方は最初なんの話と言う顔をしていたがすぐに思い出す。


「色々忙しくて使う暇なかったよね」

「戦闘や探索にも使えませんからね」

「公式のイベントレースの観戦に使うのは? 彼方が参加できなくなっちゃうけど」


 彼方が言うようにガチャで当てたクルーザーを使う暇がなかった。

 ノエルが手を上げて、今度の公式イベントの観戦に使うアイデアを出す。


「うーん………それでもいいかなあ? 私レース系苦手だし」

「そうじゃ、もし出場するならわしが設計図買ったから、作ってやれるぞ。今レース需要か、宇宙船本体や設計図が値上がりしてる」

「うわだ、ほんとだ!」


 彼方はレースに参加する気はないのでクルーザーを出して観戦することに問題はなさそうだった。


 源三郎は思い出したように机を叩いて、設計図の値上がりの話をすると、ギャラクシーマーケットを覗いたノエルが驚いた声を漏らす。


「お爺ちゃんは参加するの?」

「まあ、せっかくのイベントじゃからな」


 彼方が源三郎にイベントにレース選手として参加するのか意思確認を行い、源三郎は頷いて同意する。


「そうなんですか、応援しています」

「私も応援する!」


 源三郎のイベント参加の話を聞いて、鈴鹿とノエルも応援を約束してくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る