第85話 お爺ちゃん、SOS信号を受信する。


「また貨物コンテナだ」


 惑星ドーマンのアノマリー探索を終えた源三郎達は余った時間の消化にアノマリー探索ミッションをプレイしていた。


「うーん、今日は外れよりばっかりだね」


 ノエルが貨物コンテナを解錠して中身を回収しながらそんなことを言う。

 連続で貨物コンテナが5回もつづけば、そんな愚痴がこぼれても仕方がないともいえる。


 コメント欄ではドンマイ、次こそ大当たりと励ますコメントや、ここは連続外れギネスに挑戦しましょうと揶揄するコメントが書き込まれたりする。


「うーん………このまま外ればかりじゃ盛り上がらないからお爺ちゃん当たり当ててよ」

「いや、無茶言わんでくれ」


 連続で外れが続き、配信視聴者数も減ってることに危機感を感じた彼方が源三郎に無茶振りする。


「取りあえず、次のアノマリー反応エリアにワープしましょうか」

「次のアノマリー反応があるのはソロモン自由同盟領域側のプレグラム星系と言う所かあ」

「次こそお爺ちゃんが世紀の大発見しますように!」

「いや、ハードル上げるような無茶振りやめてくれんかの?」


 鈴鹿が苦笑気味に移動を促し、ワープゲートを生成する。

 ゲートを潜り抜ける時に彼方がボソリと呟き、たまたま聞こえた源三郎が思わずつっこんでいた。


「また貨物コンテナ~!!」

「今日はそういう日だと思って諦めろ」


 ワープゲートをくぐり抜けた先で見つけたのは、残念ながら外れ枠の貨物コンテナだった。


「まあ、収支はプラスですから」

「ついでに惑星もスキャンしていかんか? この星系は初めてじゃし」


 不機嫌になる彼方を宥めるように源三郎は惑星スキャンを提案し、たまたま目についたレグナスと言う惑星をスキャンする。


「む? SOS信号? なんかストーリークエストが始まったぞ」

「え?」

「まじで!?」

「まあ!」


 たまたまスキャンした惑星レグナスからSOS信号が発せられていると言う内容でストーリークエストが始まった。

 配信のコメント欄ではお爺ちゃん持ってるだの、さすがに仕込みじゃねーのと盛り上がっていた。


「もしもし、事故ですか、救急ですか?」

「………」

「あれ? おーい、聞こえるかー?」

「………」


 惑星レグナスからのSOS信号を受信した源三郎はクエストジャーナルに従って呼び掛けるが、応答はない。


「悪戯?」

「ストーリークエストでそれはないと思うなあ」

「応答すら出来ない状況なのでしょうか?」

「クエストジャーナルが惑星に降りたって様子を伺うと言う内容に更新されたぞ」


 惑星レグナス側に通信で呼び掛けても反応がない代わりにクエストジャーナルが更新された。


「ホラー系じゃないといいなあ………」

「取りあえず着陸してみましょう」


 ノエルが不吉なことを言い、鈴鹿が着陸を促す。


「まあ、せっかくのストーリークエストだし、覗きに行こうか」

「そうじゃの」


 彼方がそういうと、源三郎達は惑星レグナスに着陸を試みる。


「こっちの地域、今は夜か………」

「ぱっとみた感じ、何も問題なさそうにみえるね」


 惑星大気圏内に入ると、夜の時間だった。

 開拓者達の居住エリアには街灯などが灯っており、人がいない以外問題なさそうに見える。


「こちらフリーパイロット、SOS信号を受けました。応答してください」

「………」

「やっぱり返事ないね」

「人が出てくる気配もないし」

「でもSOS信号は途切れず出ています」


 スターステーションに着陸する途中も呼び掛けるが反応はない。


「ふーむ………襲われた気配もないな? じゃが音もないのも変じゃのう」


 着陸して地上に降り立った源三郎達が周囲をみて回るが、人が出てくる気配もなく音もなにもしない。


「インターホンならしても誰もでないね?」

「でも、扉は施錠されていない?」


 彼方とノエルが近くの住居のインターホンを鳴らしたり、扉を叩く。


「ふむ………入ってみるか」

「不法侵入にならないかな?」


 源三郎はガンブレイドを抜刀して、住居の扉をあける。


 扉をあけた瞬間明かりがついて、部屋の様子が伺える。


「食べかけの食事?」

「食事中に人が消えた感じじゃのう」

「うう………ホラー系シナリオ?」


 リビングルームには数人分の料理が置いてあり、つい先ほどまで食事をしていたような食べかけのピザなどがあった。


「スキャンには何も反応がないね」

「ふむ………荒らされたり、戦闘があった痕跡もないのう」


 源三郎達は手分けして住居の中をくまなく調べるが、突然人がいなくなったとしか言えない状況に困惑する。


「他のエリアも見て回ろう」

「うん」


 銀三郎達は居住地エリアを探索していく。


「なんだろう………作業の途中で消えた痕跡ばかり」

「死体もないし、建物も攻撃された気配がない」

「ガチホラーの気配してきた」


 他の家でも食事中、洗濯や掃除中に忽然と消えた痕跡ばかりだった。


「クエストも消えた人の行方を調べるから変化ないのが困るのう」

「取りあえず、先に進んでみようか」


 源三郎達は居住エリアを超えて、工業エリアに足を踏み入れる。


「む?」

「セキュリティロボ?」


 工業エリアに足を踏み入れると、待機していた人型セキュリティロボが起動し、カメラアイが攻撃の意思を知らせる赤色になり、レーザーを撃ってくる。


「警告なしとは物騒な!」


 源三郎はガンブレイドでレーザーを弾き返しながら駆け寄り、ソードモードで切り裂いていく。


「犬型のもきた!」

「こっちは飛行ドローンです!!」


 彼方達は遮蔽物に隠れながらアサルトライフルで応戦していると、次々とセキュリティロボが襲ってくる。


「そんなに強くないけど、数だけ多かった………」

「ドロップ品も微妙ですね」


 襲いかかってきたセキュリティロボ達だが

テック4装備の源三郎達の敵ではなく、返り討ちにして残骸を漁る。


「このセキュリティロボ、再プログラムされています」

「ん? すずちんどゆこと?」


 ドロップ品を漁っていた鈴鹿が何かに気づいたのか、セキュリティロボの残骸を指差して話しかけてくる。


「私のドローンアビオニクススキルでわかったんですが、このセキュリティロボは惑星の肉食動物向けだったみたいです。それを何者かが自分以外の生体反応全てに敵対するようにプログラムを再構築したとでています」


 鈴鹿は自分のスキルでわかったことを残りのメンバーに伝える。


「ふむ………生存者か、この住人消滅事件の参考人ってとこかのう?」

「取りあえず、誰かいるかもしれないなら探さないと」


 鈴鹿からの情報を聞いた源三郎達は先に進み、生存者を探す。


「ぬう………よほど警戒心が強いのか、それとも恐ろしいことがあったなかのう……」


 先に進もうとするとあちらこちらからセキュリティロボが襲いかかってくる。


「あればミサイルドローンです!」

「お爺ちゃん!!」

「流石にミサイルはリフレクト無理じゃ!!」


 飛行していたドローンが建物の屋根などに着地すると、砲塔からミサイルを発射してくるのを源三郎達は遮蔽物に隠れて耐え忍ぶ。


「私に任せてください」


 鈴鹿がそう言うと、個人携帯用のドローンを展開してドローン同士戦わせる。


「今じゃ!」


 源三郎もガンモードに切り替えてドローンやセキュリティロボを撃ち落としていく。


「む? クエストジャーナルが変わった?」


 何度か戦闘を繰り返し工業エリアを通り抜けると、資材置場に到着する源三郎達。

 すると、クエストジャーナル内容がSOS信号の発信源を特定するに更新され、クエストマーカーがコンテナの1つに向かっている。


「あそこに信号が?」

「ロボットのプログラムを変えた人もいそうじゃな」


 源三郎達は警戒しながらコンテナのドアを開ける。


「嫌だ、嫌だ嫌だ! 怪物が、怪物が戻ってくる。大丈夫、ロボットが守ってくれる。違う! ロボットが怪物だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! 俺は死にたくない! 俺は死にたくなかったんだ! だから見捨てたのも仕方ないんだ!!」


 コンテナの中は無数のディスプレイとコンソール、サーバーなど機械類が占めており、メインディスプレイの前で、源三郎達が入ってきたことにも気づかず、ぶつぶつと独り言を繰り返しながらホログラムのキーボードを操作する青年がいた。

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