第83話 お爺ちゃん、歴史を知る
「キィイイエエエイッ!!」
猿叫びをあげながらロボット達をズンバラリンと切り裂いて行く源三郎。
ロボット達も負けじと囲んでレーザーを撃ち込むが、ガンブレードのリフレクトパリィで打ち返して逆にロボット達を倒していく。
彼方達も源三郎が斬り込んで開けた穴を広げるように攻め上げていき、前回とは打って変わって有利な状況に持ち込んでいく。
「ぬ?」
最前線で闘っていた源三郎は足元の揺れを感じて怪訝な表情を浮かべると、土煙というか土柱を上げてティラノザウルスのような形をした恐竜型ロボットが地面から現れる。
恐竜型ロボットは口を開くとビームを吐こうとするが、ノエルが操縦するヴァルムの無反動砲を頭部に受けて、明後日の方向にビームを放つ。
「彼方のお爺ちゃん、選手交代だよ!」
「すまん、助かった」
源三郎とノエルが入れ替わるようにポジションを変えて、多脚戦車ヴァルムが恐竜型ロボットと闘い始める。
恐竜型ロボットが口からビームを放つと、ヴァルムはローラーダッシュで左右に高速移動して回避し、二門の機関砲で反撃する。
恐竜型ロボットが尻尾を振り回して鞭のように攻撃すれば、ヴァルムはブースターを使ったジャンプで尻尾を飛び越え、ミサイルポッドからミサイルを発射し、恐竜型ロボットに当てていく。
ミサイルの直撃を受けた箇所から中身の機械が見え、スパークを起こす恐竜型ロボット。
満身創痍になりながらも敵意は衰えず、口を開いてビームを吐こうとする。
「チャンス! これでもくらえっ!!」
ノエルはそれを好機と見て、ヴァルムの背中に搭載された無反動砲で口の中を攻撃する。
無反動砲の直撃を口に受けた恐竜型ロボットはビームの発射口を破壊されたのか、内部で爆発が起きて頭が吹き飛んで倒れる。
「………これで打ち止めみたいじゃの?」
「そうだね、クエストジャーナルも更新されたよ」
ロボット達の増援が出てこないことを確認した源三郎が呟くと、彼方がクエストウィンドを確認しながらクエスト内容が変わったことを知らせる。
「ふむ、辛うじて残っている施設を調べろか………ドロップ品を回収したら向かうとするか」
源三郎達は更新されたクエスト内容を確認すると、ドロップ品の回収にはいる。
「また装甲車がボロボロじゃのう………」
「私達の盾にしましたからね」
「ヴァルムもそこそこ損傷受けたよ」
ロボット達のドロップ品を回収を終えると、今度は車両の状態を確認する。
六輪式装甲車ウォーグは盾に使ったのもあって今回も大破寸前だった。
ヴァルムも致命的な一撃は避けていたが、細々としたダメージは受けており、アーマーヒットポイントも半分近く削られていた。
「さて、何かわかるとよいのう」
ドロップ品の回収と車両の応急修理を終えた源三郎達はクレーターの中心部にある融解した建物の残骸に近づき、スキャン調査を始める。
「かなり激しい攻撃を受けたようじゃな」
「ここには何らかの軍事施設があったみたいだけど、どのような施設なのかはわからないね」
「まるで存在そのものを歴史や記憶から消したかった感じです」
「それだけ激しい攻撃を受けても残骸や痕跡が残ってるって、元の施設どれだけ頑丈だったの?」
源三郎達はクレーター内をうろうろしてスキャン情報を集めていく。
「複数の文明が合同でこの惑星の施設に攻撃を行っていたのでしょうか? 明らかに製造コンセプトが違う船ばかりです」
鈴鹿は道中にあった墜落した宇宙船などの残骸を調べると、辛うじて残っている宇宙船のコクピットなどから複数の生態系が異なる文明組織が合同で攻撃を行った痕跡を見つける。
「こっちに生きてるデータがあったよ!!」
「うーん………文字化けですかね?」
「エイリアン言語じゃないかのう?」
ノエルは宇宙船のデータベースからデータを抽出して内容を確認すると、文字化けしたような単語や記号の羅列が表示される。
「エイリアン言語学者のブータニアスさんに解析お願いするしかないね」
「現段階では複数の文明組織が合同でこの惑星にあった軍事施設を攻撃したことと、かなり激しい戦闘だったってことかな?」
「ふーむ、まだクエスト内容が変わらないから、調べていない場所があるのかもしれんな」
源三郎達は目につく範囲を調べ尽くすが、クエストジャーナルが変わらないことから調査漏れがあるのではとうろうろする。
「あ、ブータニアスさんから映像通信がきた!」
「ほう?」
調査漏れ箇所を探して数分経つと、彼方通信機にエイリアン言語学者の映像通信の着信が来る。
「やあやあどうもであーる! 送られてきたデータを解析したのであーる!」
「早いですな」
「うむっ! そこは我輩の天才的な頭脳と、手元にあったサンプリングデータと一致したからであーる! 早速説明するであーる!」
立体のホログラムで表示される白衣姿のブータニアスは源三郎達が見つけたデータ内容を知らせる。
「君達が見つけたデータには、我々にワープ技術と言う叡知を与えてくれた【サイブリック】と呼ばれる約600万年前にあったと言われるエイリアン文明の情報があったのであーる!」
「おおー!」
「残り二つの文明は不明だが、【サイブリック】と同等の文明とテクノロジーを持っていたと思われるであーる!」
解析内容に盛り上りを見せる源三郎達と配信視聴者達。
「そのサイブリックは何と闘っていたかわかりますか?」
「うむ、よくぞ聞いてくれたのであーる! 暗黒領域の向こうからやってきたと言われている機械生命体【イレイザー】であーる!」
鈴鹿がブータニアスに質問すると、その質問を待っていたブータニアスは軽く咳払いして、胸を張ってどや顔で説明する。
「イレイザー? 暗黒領域? なにそれ?」
「順番に説明するのでまつのであーる。暗黒領域とは光すら飲み込む物質が漂う宇宙空間で、スキャンが効かず、ドローンの信号電波を遮断する何かによって、未だに調査も踏破もほとんどされていない宇宙空間のことである」
「そんな領域があるんだ」
ブータニアスの説明を聞いてもいまいちピンときていないが、合いの手を返す彼方。
「うむ、そして【イレイザー】は有機生命体の滅亡を目標にした機械生命体文明であーる。なぜかある年代を境に存在が消えたとしか言えないほど痕跡が残っていないであーる」
「ここはそのイレイザーの施設があって、サイブリックと残り二つの文明が共闘して闘った?」
「その見解で間違いないと我輩は認識しているであーる」
源三郎達が見つけたデータを解析したブータニアスの説明を聞いた彼方が、この惑星で何が起きたのか予測を立てる。
「イレイザーって、このゲームのラスボス的存在かな?」
「そんな感じがしますねえ」
ノエルと鈴鹿はイレイザーと言う存在の話を聞いてラスボスかと予測する。
「この星での戦争の勝敗は、状況から考えて、サイブリック側の辛勝といったところであーる。わかったのは以上であーる。それでは我輩は研究に戻るであーる」
ブータニアスはそういうと通信を切ったのかホログラムが消える。
「あ、クエストが更新されましたね」
「取りあえずクエストは以上で、地球連邦に報告したらいいみたい」
ブータニアスの姿が消えると同時にクエストジャーナルが更新されて地球連邦がソロモン自由同盟に顛末を報告すればクエストクリア扱いになる。
「今後はイレイザーやサイブリックの痕跡とか探していくのかのう?」
「続き物のストーリークエストなのか、またアノマリー探索で見つけるのかな?」
源三郎と彼方がそんな話をしながら最寄りの連邦ステーションにクエスト報告をする。
「あ、もうおちないと………今日はちょっと探索に時間がかかってしまってごめんなさい」
「今回の配信も面白いと思ったらチャンネル登録と高評価お願いね」
「それでは皆様よい夜をお過ごしください」
クエスト報告を終えた頃には彼方達はログアウトしないといけない時間帯になっており、あわてて締めの挨拶と、スパチャコメントに返信していく。
「それじゃ、お爺ちゃんお休み」
「ああ、ゆっくり休むんじゃぞ」
いつものように彼方達を見送って源三郎もログアウトした。
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