第81話 お爺ちゃん、アダマンティンを探す
「結局ネームドが出たのは一回だけだったな」
「レアエネミーだけど、レアすぎる」
ウォーモンガーカンパニーのペロペロ達とデューティーミッションをマラソンしていた源三郎。
最後のデューティーミッションを終えて精算しながらそんな話で盛り上がる。
「しかし、結構設計図出ましたなあ」
「今日は当たり寄りだな」
「こないだは10回近く繰り返して2枚しかドロップしなかったもんな」
マラソンの結果、全員にかなりの数の設計図が行き渡り、ダブりなどを交換しあう。
「宇宙船のジェネレーターとかの設計図助かります」
「俺らダブってたから。完成したらお披露目配信してくれよ」
ダブリの設計図を交換しあうと、ウォーモンガーカンパニーのメンバーは源三郎に宇宙船のパーツ系の設計図を渡してくる。
「彼方次第だと思いますが、多分やると思いますんで」
「楽しみに待ってるからな」
ウォーモンガーカンパニーから源三郎のテック4宇宙船の完成お披露目配信の話を振られて、源三郎は孫娘次第と答える。
「しかし、TR4のデューティーミッションの報酬は洒落になりませんな。一回だけでわしが普段やってる貨客マラソンの数倍は儲かるぞ」
「デメリットは可能な限り役割分担の出来るチーム必須なことですかねえ」
「ソロは………多分無理かな」
源三郎はTR4デューティーミッションで稼いだ額を見て、普段の金策と比べて段違いの時給換算にため息を漏らす。
「さて、もうちょい続けたいけど………飯の時間だ」
「俺もさっきから家族が呼び出してるのが、ベルが鳴り響いてる」
「俺は出前」
現実時間は夕食時の時刻になっており、ペロペロ達はデューティーミッションを切り上げでログアウトするようだ。
「それじゃ、源三郎さんまた」
「お疲れ~」
「また遊ぼうな」
「はい、お疲れさまでした」
ペロペロ達がログアウトするのを見送って、源三郎も一旦ログアウトする。
「おや、彼方達は今夜はログイン出来ないのか」
ログアウトして現実世界に戻った源三郎は腰や肩を叩きながら夕食の準備をしていると、彼方から今夜はメンバー全員ログイン出来ないメールが来る。
「婆さんや、飯だぞ」
夕食が出来ると、炊きたてのご飯をまずは先立たれた妻の遺影にお供えして手を合わせる。
「今日はウォーモンガーカンパニーのペロペロさん達と遊んでたよ」
何時ものように妻の遺影に話しかける源三郎。
「ゲームばかりでつまらないかもしれんが、今はこれが楽しくてのう。お前とも一緒に遊びたかったよ………お前が生きてる時に言えたらどれだけ良かったか………」
箸が止まり俯く源三郎。
妻が生きていた時は仕事や鍛練に現を抜かしてあまり省みなかった。
「もっと早く………もっとたくさん話せば良かったな………つい恥ずかしくてそっけない態度とってしまって悪かったのう」
気がつけば源三郎は泣いており、泣きながら黙々と食事を済ます。
「ゲームしてないと寂しいとか、すっかりわしも廃ゲーマーじゃな。昔はお前が側にいないことが一番寂しかったんじゃがなあ………」
ぐすっぐすっと鼻を啜りながら妻の遺影に話しかける源三郎。
「いかんな、歳を取ると愚痴りたくなる。またストレス発散にゲームしてくるよ」
食事を終えて洗い物を終えると源三郎はまたギャラクシースターオンラインにログインする。
「さて、アノマリーでアダマンティン探すかのう」
ログインした源三郎はアノマリー探索ミッションを受けると、早速目的地へと向かう。
「ぬう………貨物コンテナか」
一発目は外れ枠の宇宙空間に漂う貨物コンテナ。
がっかりしながらもセキュリティスキルでロックを解除して中に入っていた交易品やクレジットを回収していく。
「おっ、次はアステロイドベルト帯か!」
気を取り直して次のアノマリー反応があったエリアに向かうと、鉱物資源が採掘できるアステロイドベルト帯だった。
「小惑星がアノマリー対象か………頼むぞ」
源三郎は神仏に祈るように手をあわせて、スキャニングをかけ、解析が進んでいく。
「………いや、嬉しいんじゃけどね………」
スキャニングの結果、アノマリー反応があった小惑星は放棄された海賊の隠し基地で、放棄の際においていった物資を回収する。
「これはあれか? 物欲センサーか?」
欲しいものがある時に限って出てこない時に囁かれる都市伝説を源三郎は思い浮かべる。
「いや、三度目の正直と言う言葉もある! 次こそ!!」
回収した交易品など次のアノマリー反応があるエリアに向かう途中で処分しながら向かう。
「うーむ、外れか………取りあえずスキャニングしてみるかのう」
三回目のアノマリー反応があったエリアはただの宇宙空間で、がっかりする源三郎。
気持ちを入れ換えてアノマリー反応エリアにスキャンを行う。
「む? 変わった形の宇宙船じゃのう? エイリアンロストシップか?」
スキャンが完了するとなにもなかった場所に風だけで進むセイルヨットのような形の宇宙船が現れる。
「ふむ………アンロックした研究プロジェクトのお陰ですぐに解析できるようじゃな」
エイリアンロストシップの可能性のあるセイルヨット型宇宙船をスキャンし、その正体を確かめる源三郎。
「むう………エイリアンロストシップじゃが、コロッケそばさんの船みたいに使えないタイプか………」
解析完了して、解析内容を読んだ源三郎はがったかりする。
「数千年前に作られた太陽風で推進力を得ていた宇宙船か………」
解析内容によると、目の前にあるのはセイル部分で太陽風を受けとめてエネルギーに変換して推進力を得ていたが、何らかの事故でセイル部分が破損してこの宙域に放棄されていたとテキスト説明文には書かれていた。
「取りあえず発見報告して報酬を貰うかのう」
求めてるものとは違ったがエイリアン遺物の1つなので、源三郎は発見報告する。
「結構な報酬になったし、ハウジングで飾れるセイルヨットの模型も貰えたの。さて、今度こそアダマンティンでありますように」
源三郎は報告を終えると、次のアノマリー反応があるエリアにワープする。
「よし、またアステロイドベルト帯じゃ!」
4つ目のアノマリー反応がある宙域にワープアウトすると、目の前に広がるステロイドベルト帯だったことにコクピットでガッツポーズをして喜ぶ源三郎。
「あとはアダマンティン鉱床のある小惑星が見つかりますように!」
また源三郎は神仏に祈りながら小惑星をスキャンしていく。
「よっしゃあっ! アダマンティン鉱床! しかもかなりの埋蔵量じゃ!!」
源三郎の祈りは神仏に届いたのか、目の前にある小惑星はアダマンティン鉱床があり、これまで見つけた中でも一番の埋蔵量を誇る。
源三郎は早速最寄りのステーションで採掘船に乗り換えるとアダマンティンを掘り始める。
「これだけあれば在庫とあわせればテック4グラップラーシップのレアリティアップもいけるじゃろう」
採掘を完了すると、源三郎はホクホク顔で惑星ドーマンへとワープして、宇宙船を製造する造船所ドッグにアクセスする。
「取りあえず、明日にはアダマンティンを贅沢に使ったテック4宇宙船と、グラップラーシップ専用武器が作れそうじゃな」
源三郎は惑星ドーマンに建設した製造施設をフル稼働させて、手に入れたテック4設計図の宇宙船本体、装甲、ジェネレーター、バリアシステム、スキャナー、グラップラーシップ武器の製造を開始し、レアリティアップのために溜め込んだアダマンティンを全て投入する。
「完成まで現実時間で3日か……かなり時間がかかるが、まあ仕方ないの」
製造完了までかかる時間を確認した源三郎はログアウトした。
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