第80話 お爺ちゃん、設計図狩りをする


 翌日の日曜日、源三郎は何時ものようにギャラクシースターオンラインに朝一からログインする。


「さて、ウォーモンガーカンパニーの皆さんとの時間まで鉱石を稼ぐとしますかのう」


昨晩の大規模戦闘で手に入れたテック4宇宙船の製造にかなりの量の鉱石を使うため、源三郎は採掘船に乗って片っ端から鉱石を採掘していく。


「ふーむ、やはり日曜日は少々混むな」


 幾つかのアステロイドベルトでは他のプレイヤーの採掘船がちらほらと目撃される。


 源三郎はアステロイドベルト帯の小惑星が枯れたり、貨物が満杯になると惑星ドーマンまでワープして拠点の倉庫に溜め込んではまたアステロイドベルト帯にワープして、約束の時間までこれを繰り返してある程度鉱石を溜め込む。


「そろそろ約束の時間じゃな」


 一旦昼食のために源三郎はログアウトして、買い出しなど家の用事を済ませると、待ち合わせの時間が近づいていた。


「源三郎さん、こんちわー」


 待ち合わせ場所でもあるソロモン自由同盟領域にある惑星ランドにワープアウトすると、ウォーモンガーカンパニーのペロペロ達が待っていた。


「遅れましたかな?」

「いや、我々も今来た所ですよ」

「んじゃまチーム要請送るから、うちのオフィスで受けれるテック4デューティミッションを受けてくださいな」

「あいよ」


 源三郎はペロペロ達とチームを組むと、TR4デューティミッションを受領してインスタントエリアにワープする。


「コロッケそばさん以外の皆さんが搭乗してるのがテック4の宇宙船ですか?」

「そうですよ。俺のエイリアンロストシップ以外は皆テック4に乗り換えです」

「俺のは拠点防御船ウォールの上位互換船【キャッスル】、ウォールの性能が大幅に上がったと思ってくれ」


改めてウォーモンガーカンパニーのペロペロ

とたかやんの船を見て源三郎が話しかけると、コロッケそばが同意して、ペロペロは自分の船のスペックを語りだす。


 ペロペロが搭乗するキャッスルはウォールの上位互換と言うだけあって、船の見た目もほぼ一緒。唯一違うのはハンマーシャークの目の部分がパネルのような板状の盾になっていたことぐらいだった。


「俺のはオールレンジに対応した多砲艦の【ヘッジフォック】、でもどう見てもウニだよな」


 たかやんが搭乗するヘッジフォックは多砲艦の名前に相応しく360度全体に砲台が搭載されていた。

 たかやんが言うようにハリネズミというよりはウニと言う印象の方が強かった。


「今回の敵は結晶生命体か」

「そそ、こいつら物理系が弱点みたいで、源三郎さんみたいな物理特化のグラップラーシップとかいると助かるんだよ」


 ペロペロとたかやんの船の話をしていると、デューティーミッションが始まり、無数の六角形の結晶体が襲いかかってくる。


「ジャミングドローン展開します」

「一番槍は貰うぜ!」


 コロッケそばが操縦するエイリアンロストシップ【ゴーラ】から次々とジャミングドローンが射出されてジャミングを開始すると、結晶生命体から放たれるレーザーが明後日の方向に飛んでいく。


 コロッケそばがジャミングで攻撃を塞いでいる間に、たかやんのヘッジフォックの一部の砲塔が起動し、ガオンっと独特の発射音と共にレールガンからマテリアル弾が発射され、第一陣の結晶生命体達を次々と粉砕し、宇宙の藻屑に変えていく。。


「おー、凄い威力ですな」

「テック4レールガン【グングニール】、貫通力なら多分最高品だぜ」

「次の敵が来るぞ」

「わしも働かして貰いますよ」


 そんな話をしている間に第二陣が出現し、結晶部分からレーザーを放ってくるが、ペロペロのキャッスルのバリアに阻まれ、逆にキャッスルから放たれたミサイルで撃沈していく。


「参る!」


 源三郎が操縦するグラップラーシップ【ヘカトンケイル】も二刀の斬艦刀を抜刀して掲げ、結晶生命体に肉薄すると次々と一刀両断して駆け抜けていく。


「む? 次の結晶生命体は形が違いますな?」

「あれは上位種タイプです。レーザーに加えて、ホーミング効果のある結晶のミサイル飛ばしてきます!」


 第三陣の敵が現れたかと思うと、長細い菱形の結晶生命体が現れ、コロッケそばが上位種と叫ぶ。


「早速ミサイルがきましたなっ!」

「回避する自信がなかったら俺の後ろに隠れろ!!」

「ジャミング出力上げていきます!」


 菱形の上位結晶生命体達は結晶の先端からミサイルを産み出して飛ばしてくる。

 源三郎達はミサイルを回避するために散会する。


「確かに追尾機能持っているが、避けれないほどではないのっ!」


 源三郎は追尾してくるミサイルを斬艦刀で切り落とし、上位結晶生命体に近づいて斬艦刀を突き刺す。


「ぬ? 一撃で死なないとは頑丈な!」


 斬艦刀を突き刺してもまだ死なない上位結晶生命体は斬艦刀が突き刺さったまま反撃とばかりにレーザーを照射して源三郎のヘカトンケイルにダメージを与える。


「なら、これはどうじゃ!」


 もう一刀の斬艦刀とオートタレットのレールガン攻撃で反撃してきた上位結晶生命体を打ち砕く。


 一方、ウォーモンガーカンパニーのペロペロ達は、ペロペロのキャッスルを盾に攻撃を塞ぎ、コロッケそばのゴーラのジャミングドローンで動きを封じて、たかやんのヘッジフォックが打ち砕くチームワークで難なく倒していく。


「さすがテック4宇宙船ですな。わしも早くテック4グラップラーシップを作りたいのう」

「テック4宇宙船は製造費洒落になりませんからねえ」

「メンバー全員で手分けして材料確保や、惑星開拓の収入がなかったらまだ作れてなかったかも」

「でもま、コストに見合う性能ですよ。おかげでデューティミッションの回転率とか段違い」


 次の敵がやってくるまでの短いインターバルで源三郎達は雑談をかわす。


「第四陣がきま───よっしゃ! ネームドエネミーキター!!」


 レーダー担当のコロッケそばが急に叫びだす。


「マジかっ!」

「久々やん!」


 コロッケそばの報告を聞いたペロペロとたかやんも興奮したように叫ぶ。


「あのー、ネームドエネミーって?」

「このデューティミッションで希に出現せる名前つきエネミーで、強いけど倒すとレアアイテム確定、出現したフェーズのミッション報酬も1・5倍になるんだ!」

「それが出現したと?」

「はいっ! この反応は間違いありません!!」


 そんな風に騒いでいると、源三郎達の前にワープアウト現象が発生し、結晶で出来た駆逐艦のような結晶生命体【ゼノス】が現れる。


「よし、俺はタンクに徹してヘイトを稼ぐ! コロッケそばは修理ドローンで俺を集中回復、たかやんと源三郎さんは全力で攻撃してください」

「おう!」

「よっしゃ!」

「承った!!」


 大まかな作戦を決めるとペロペロがゼノスに攻撃を仕掛ける。


「む? 変わった形のミサイルですな」

「宇宙生物学5レベルで作れるフェロモンミサイルだ。こいつでゼノスを興奮させて、俺にヘイト向けさせる」


 ペロペロが放った独特の形のミサイルがゼノスに命中すると、ガスが噴霧される。

 そのガスを浴びたゼノスは興奮したのか怒っているのか結晶を赤く輝かせて、無数のレーザーをペロペロのキャッスルに撃ち込んでいく。


「うひー! バリアが削れていくー!!」

「リペアドローン!」


 ゼノスのレーザーでダメージを受け、コロッケそばのリペアでヒットポイントを回復してまるで綱引きのようにキャッスルのヒットポイントが右へ左へ往復する。


「オラッ! フルバースト!!」


 たかやんのヘッジフォックに搭載されている全砲門でゼノスを攻撃する。


 次々とマテリアル弾がゼノスに命中して結晶が削れて飛び散っていく。


「ヤベッ!」

「こらーっ! ヘイト奪うんじゃねー!!」


 たかやんのフルバーストはゼノスにかなりのダメージを与えたが、ゼノスの攻撃対象がペロペロからたかやんに移り、たかやんに向けてレーザーが次々と発射される。 


「ひいいいっ!!」

「チェエエエストオオオ!!」


 ゼノスがたかやんを攻撃している間、源三郎は大きく迂回をしてゼノスの背後に回り込み、船のアフターバーナーと斬艦刀のブースターによるもうスピードで突撃する。


 船のスピードと斬艦刀の質量を乗せた一撃はゼノスを三枚に下ろすように両断し、撃破する。


「よっしゃあっ! レアドロップ確定!!」

「ふう………ギリギリ生き延びた」


 ゼノスの撃破を確認して喜ぶペロペロと、ゼノスの攻撃で船体ヒットポイントにまでダメージが入ってたちかやんはほっとしたように額の汗を拭う仕草をする。


「たかやんの機体がやばいんで、一旦ミッション精算しましょう」

「オッケー」

「ごめーん」

「どんまいです」


 五回戦目を放棄して源三郎達はインスタンスエリアを離脱した。


 

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