第79話 お爺ちゃん、リザルドする


「今回はお疲れさまでした~!」

「おつー」

「おつかれちゃーん!」


 ウォーモンガーカンパニーのお誘いで大規模戦闘に参加した源三郎達は、無事に大規模戦闘のミッションを終えて打ち上げに参加していた。


「ここがウォーモンガーカンパニーのオフィスか………軍事基地とは変わってるのう」

「元々はこの星系のステーションにオフィス構えていたんですが、惑星ランドの開拓権購入したらクエストが発生してクリアしたら貰えたんで引っ越しました」


 今回の打ち上げ会場でもあるウォーモンガーカンパニーのオフィスルームはソロモン自由同盟領域にあり、今回の大規模戦闘の舞台ともなった惑星ランドにある軍事基地で、カンパニーマスターのアドンが建物の入手までの出来事を話す。


「あら、私達もちゃんとした星で始めるべきだったかしらん?」

「いいじゃないですか、エイリアンシップ手に入れたんですから」


 話を聞いていた今北産業カンパニーのハプシエルがくねくねとシナを作りながら言葉を漏らすと、今北産業カンパニーマスターのオミナがエイリアンシップの話をする。


「そっちはエイリアンシップが手に入ったのですか?」

「そうだよ。今回の大規模戦闘が宇宙戦闘ならお披露目してた」


 ウォーモンガーカンパニーのコロッケそばが話にくわわると、今北産業カンパニーのYTも会話に混ざる。


「ふーむ、話を聞いていると惑星開拓には何らかのイベントやクエストが発生する可能性がありそうじゃのう」

「私達はまだ始めたばかりだから見つかってないのかな?」


 ウォーモンガーカンパニーと今北産業カンパニーの話を聞いていた源三郎は顎髭を弄りながら、自分達の星でもそう言うことがあるのではと考え始める。


「取りあえず惑星開拓イベントの話はそれぐらいにして、報酬の分配の話をしましょう」


 ウォーモンガーカンパニーのアドンが手を叩いて雑談を切り上げ、本題に入る。


「今回手に入ったドロップ品はこんな感じだな」


 打ち上げが始まってからずっと回収したドロップ品の一覧を大型のホワイトボードに書き込んでいたペロペロがホワイトボードを叩いて一覧を見せる。


「取りあえずフリージアカンパニーは、今北産業カンパニーのメーサー砲の補填に我々のドロップを一部譲渡します」

「ありがたいですけど、本当にいいんですか?」


 報酬分配の話が始まるとフリージアカンパニーマスターとして彼方がドロップ品の一部を補填として今北産業カンパニーに譲渡する提案をすると、今北産業カンパニーマスターのオミナは少々遠慮気味に彼方に再確認するように問いかける。


「大丈夫、皆納得済みだよ、ね?」

「うむ」

「あれなかったらもっとやばかったかもしれませんし」

「流石に10億クレジットは補填するべきかと」


 今北産業カンパニーマスターのオミナからの問いかけに対して彼方はにっこり笑って自分のカンパニーメンバーに声をかけ、メンバー全員納得していることを知らせる。


「ウォーモンガーカンパニーも最初に補填すると言ってたのでドロップ品譲渡します」

「ありがとうございます、本当に助かります」


 同じようにウォーモンガーカンパニーのアドンが彼方にいいところ見せるようにチラチラながらアピールする。


 アドンの後ろではペロペロが頭を抱えていたり、コロッケそばやたかやんが冷めた目でアドンを見ていた。


「細かいドロップ品は今北産業カンパニーに渡すとして、このレアドロップをどうするか」

「オークション形式でほしい人が入札でいいんじゃないかな?」

「売り上げを頭割りして参加者への配当として渡すとかは?」

「それでいいか」

「賛成」


 今回の大規模戦闘でドロップしたテック4設計図や現物、レアリティをあげるのに必要な素材など様々なレアドロップ品の山分け方法を話し合い、オークション形式で話がまとまる。


「入札最低額決めません? 下手に小刻みされても時間の無駄ですし」

「んー………なら最低額は10万クレジットでどうじゃ?」

「うーん………それが無難ですかね?」


 最低入札額も決まるとウォーモンガーカンパニー主宰で早速オークションが始まり、ドロップアイテムの名前が読み上げられると、希望者が入札していく。


「続きまして、テック4グラップラーシップの設計図です」

「1000万出す!」


 進行役のアドンが商品名を読み上げると、源三郎が挙手する。


「ありゃ? わし以外いない?」

「グラップラーシップはちょっと癖が強いですから」

「グラップラーシップ=源三郎さんなイメージがあって」

「激しく同意」


 源三郎以外に入札希望者がおらず、困惑した様子で周囲を見回す源三郎。

 源三郎と目があった人達が苦笑しながら、グラップラーシップは源三郎に譲るつもりであったと漏らす。


「テック4宇宙船が1000万とかよいのかのう?」

「需要と供給でしょ」

「これがミサイル関連にボーナスあるやつだったら、私は借金してでも落札すると思う」


 源三郎はペロペロに代金を渡して設計図を貰うが、金額に見合っているか不安で申し訳なそうに頭を下げるが、大規模戦闘参加者達は気にするなと返す。


「グラップラーシップ用の大型武器設計図も源三郎さんに買い取って貰いません?」

「それがいいですね」

「じゃあ、残り予算の5000万で買います」


 ウォーモンガーカンパニーのペロペロがグラップラーシップ用武器の設計図を持ち出して源三郎に買い取って貰う案を出すと満場一致で賛成される。


 せめてもの誠意として源三郎は残りの予算全部吐き出してグラップラーシップ用武器の設計図を購入する。


「続いてこちらの商品!」


 その後もオークションは盛り上がり、時には入札に負けたプレイヤー達の阿鼻叫喚が巻き起こったり、土下座してお金を借りようとするプレイヤーの姿があった。


「金額の集計が終わったら、明日か明後日までに各カンパニーマスターに送金しますので、そちらで頭割りして配当してあげてください」


 オークションが終わるとウォーモンガーカンパニーのアドンが配当予定日を伝える。


「今回拙い指揮でグダグダだったかもしれませんが、皆さん大規模戦闘に参加していただいてありがとうございます。今後もこういったイベント主宰していきたいので、ご都合つきましたらご参加ください。本日はありがとうございました。お疲れさまです!」

「おつー」

「乙」

「お疲れさまでした」


 最後に主催者であるアドンが締めの挨拶をして解散する。


「源三郎さん、明日は空いてる?」

「ん? ああ、明日は孫達は学校のボランティアで配信も休みじゃから空いてるぞ」


 打ち上げが終わって各自が解散して行く中、ウォーモンガーカンパニーのコロッケそばから声をかけられる源三郎。


「明日は昼からデューティミッションをやる予定なんですけど来ませんか? アドンは昼からリアルの用事でログインできないのでメンバー足りないんですよ」

「わしで良ければ喜んで。貯蓄も底をついたし、テック4の船作るのに金もいるからのう」

「じゃあ、昼食後ログインしたら教えてください」

「了解じゃ」


 コロッケそばからのお誘いを承諾した源三郎は待ち合わせ時間などを打ち合わせて別れる。


「それじゃあ今日の配信はここまで」

「今回は大規模戦闘で長丁場の配信でしたけど、皆様最後までお付き合いありがとうございます」

「この配信が面白かったら、チャンネル登録と高評価よろしくねー」


 コロッケそばと明日との約束を交わした源三郎は彼方と合流しようとすると、彼方達はちょうど配信の締めの挨拶をしていた。


「明日は学校と教会のボランティアがあるので配信はありません」

「月曜日はあの機械生命体とのリベンジを予定しています」

「また予定変更などあったらSNSなどで告知しますので、見てね!」


 いつものようにスパチャをしてくれた視聴者の名前を呼んでお礼を述べて、今後のスケジュールのお知らせをせる。


「じゃあ、皆お疲れ!」

「それではお休みなさいませ」

「また明日学校で」

「寝坊するんじゃないぞ」


 源三郎達も挨拶しあってログアウトした。

 

 


 

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