第77話 お爺ちゃん、二回目の大規模戦闘に参加する。その4


「こりゃまた………ずいぶんとでかいコンテナじゃな」


 源三郎達フリージアカンパニーが防衛するエリアからでも輸送機に付けられた今北産業のデカールがはっきりと目視できるほどのサイズだった。


 4機の輸送機は緑色のスモークが焚かれてるエリアに到達すると牽引のワイヤーをパージして巨大コンテナを投下する。


 付近にいたエネミーを巻き込んで押し潰しながらコンテナが轟音と土煙をたてて着地すると、コンテナの壁が四方に開放されて中にあった物が露になる。


「ずいぶんとでかいメーサー砲じゃな」


 コンテナの中身をみて源三郎は昔見た怪獣映画に出てきたパラボラアンテナが搭載された戦闘車両のメーサー砲を搭載した戦闘車両だった。


 そのメーサー砲のサイズは世界最大のダンプカーを連想するほどの大きさで、あの岩猿ですら見上げる形になっている。


「射線予測エリアをミニマップにリンク、皆さんこのエリアに入らないでください」

「射程がえぐいほど長いな、ほぼ大規模戦闘エリアの端から端まで届いてるじゃないか」


 源三郎達の視界の端にミニマップが表示されて仮想射程範囲が表示されるが、源三郎が言うように、戦場の端から端まで射程範囲に入っている。


「エネルギー充填!」


 メタボーマンが巨大メーサー砲に搭乗してゆっくりと射程調整しながら、エネルギー充填を開始し、メーサー砲のパラボラアンテナ部分に光が集結していく。


「っと、見とれてる場合ではなかったな!」


 フリージアカンパニーが防衛するエリアにいる岩猿はまだ健在で、口からマグマの塊を吐き出してエネルギージェネレーターを攻撃して、ガリガリとエネルギージェネレーターのヒットポイントが削られていく。


「ホデギャアアアーッ!!」

「ええい、このダメージを受けるとマグマを撒き散らすのが厄介じゃのう!」


 源三郎はショットガンの花火で応戦していたが、射程距離の関係とダメージを受けた岩猿がマグマの血を撒き散らすので、離れてガンブレイドのガンモードの攻撃に切り替える。


「エネルギー充填20%」


 今北産業側は巨大メーサー砲のエネルギー充填を続けており、その間今北産業側は3人でエネルギージェネレーターを防衛しているが、戦闘よりではないカンパニーの3人では守りきれず、エネルギージェネレーターや巨大メーサー砲にダメージが蓄積されていく。


「ぬう………」


 源三郎は何とかしてやりたいと思うが、自分達の所も岩猿とその他大勢のエネミーの対処で応援に向かうことができない。


「ホウワッキャアアーっ!」

「ぐあっ!?」

「きゃあっ!?」


  フリージアカンパニー側の岩猿は助走をつけてスライディング攻撃を仕掛け、源三郎と彼方がそれに巻き込まれる。


「ぬうっ、巨体故に質量攻撃されると避けきれんな!」

「痛くないけど、痛い~!!」


 吹き飛ばされた源三郎と彼方は起き上がると手持ちのメディカルジェルを塗りつけて傷を癒しながら攻撃を続ける。


「このっ!」

「ウギャアアアーッ!」


 ノエルが操縦するヴァルムが発射したミサイルが命中して悲鳴をあげる岩猿。

 ダメージを与えてはいるが、弱っている気配はなく、岩猿はお返しとばかりにヴァルムに向かってマグマを吹きかける。


「エネルギー充填100%! 製造費10億クレジット! 1発1000万クレジットのメーサー砲をくらいやがれっ!!」


 今北産業カンパニーのメタボーマンが自棄糞気味に叫びながらメーサー砲を発射する。


 独特の発射音と共にパラボラアンテナの先端からエネルギー光線が照射され、今北産業カンパニー側のエネルギージェネレーターを攻撃していた岩猿とその他のエネミー達が光線によって光の中に溶けていく。


 メーサー砲から放たれた光線は勢いが衰える様子はまったくなく、まっすぐに延びて射線上にいたウォーモンガーカンパニー側、フリージアカンパニー側にいた岩猿やエネミーや採掘プラントの施設を巻き込み破壊して、戦場端の山に命中したかと思うとトンネルに近い大きなクレーターを作り、表面ではバチバチとプラズマ現象が発生していた。


 そして、メーサー砲は光線を撃ち終えると、メーサー砲のアンテナ部分が融解しており、そのままボロボロと崩れていき、どうみても使用不能と思われる状態まで壊れ、今北産業カンパニー側から阿鼻叫喚が聞こえてくる。


「一回こっきりのアイテムで10億かあ………」

「威力は凄いね、あんなに苦労してた岩猿が一発だもん」

「私達も補填金出したほうがいいかな?」

「それがよいかと思います」


 今北産業カンパニーの秘密兵器であるメーサー砲のおかげでフェーズ2をクリアしたが、チャットルームから聞こえてくる今北産業カンパニーの嘆きの声に素直に喜べない源三郎達は罪悪感から補填金を出すことを相談して決めた。


「ダメージを受けたエネルギージェネレーターの補修をします。リペアキットを配布するので各自受け取りに来てください」

「インターバルというのに休んでる暇が本当にないのう」


 フェーズ3に入る前のインターバル時間になると岩猿によって損傷したエネルギージェネレーターを修理するためにウォーモンガーカンパニーのアドンがリペアキットを配布し、各カンパニーのヒーラー担当がメディカルジェルや治療用のドローンを駆使して怪我人を治療している。


「エネルギージェネレーターの修理状況はどうですか? ウォーモンガーカンパニー側はほぼ全快です」

「こちら今北産業カンパニー。損傷激しくてインターバル時間内に完全回復は無理です。半分まで修理できればいいほうかと」

「3機のうち1機でも残れば勝ちなので、守りきれなかったら気にせず放棄して、ヤバい方の応援に向かってください」


 ウォーモンガーカンパニーのアドンが修理状況を確認し、今北産業カンパニーが現状を報告する。


「フリージアカンパニーは時間までに8………7割まで回復できるかと」

「よろしくお願いします。そちらも最悪放棄して構いません。フェーズ3を耐えれば我々の勝利です! 皆さん頑張りましょう!!」


 お互いに声を掛け合いながらエネルギージェネレーターの修理を行うカンパニーの面々。

 ウォーモンガーカンパニーはその間に地雷原に地雷の補充や、迫撃砲の装填など忙しく動き回る。


「地上戦闘の大規模戦闘は陣地構築が鍵かのう?」

「装備やスキルが充実していたら別かもしれないけど、現状だと設置型兵器をどれだけ用意できるかで勝率変わると思う」

「実際、今北産業カンパニーのメーサー砲がなかったらもっと時間かかっていたか、多分ひとつはエネルギージェネレーター破壊されてたと思う」

「全体で12人とはいえ、実質4人チームが3組あるだけですからね。事前情報や事前準備無し、連携のとれない野良だと、フェーズ2で壊滅かもしれません」


 源三郎達は自分達が担当するエネルギージェネレーターを修理しながら地上戦闘タイプの大規模戦闘を分析する。


 配信を視聴している視聴者の中には今回とは別のタイプの地上大規模戦闘に野良で参加した経験のある人がいて、実際にグダグダだったことがコメント欄に書き込まれたりする。


「もうすぐフェーズ3です! 最後まで頑張りましょう!!」


 インターバル時間が終わるアナウンスとウォーモンガーカンパニーのアドンの激励を聴きながらフェーズ3に備える源三郎達。


 フェーズ3が始まるカウントダウンと同時に遠くの山の方で鳥達が慌てふためくように飛び立っていく。


「なんじゃかいやな演出じゃのう………」

「というか、山の木々倒れていってない?」


 飛び立っていく鳥達をみていやそうな顔をする源三郎。

 目を細めて遠くを見つめる彼方が指差す方向では確かに木々が倒れ、土煙が巻き上がる。


「うーむ………メーサー砲はここで使うべきだったかもしれんのう」


 倒れる木々の合間から何か巨大な生物がこちらにもやってくるのが見え、源三郎は崩壊したメーサー砲の残骸をみて呟く。


「もうこれ、怪獣映画じゃん」

「巨大ヒーローか巨大ロボットでも呼べないですかね?」


 山の向こうから現れたのは20メートルは越える巨大なカブトムシだった。



 


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