第76話 お爺ちゃん、二回目の大規模戦闘に参加する。その3


「ふう………やっとフェーズ1終了か………」


 源三郎は一汗かいたように額の汗をぬぐう仕草をして腰を叩いて伸びをする。


「お爺ちゃん、VRなんだから汗かかないよ」

「体に染み付いた仕草みたいなものじゃよ」


 汗を拭う仕草をみていた彼方がボソリと突っ込みをいれて、源三郎はカカッと笑いながら答える。

 大規模戦闘のフェーズ1が終わり、短い時間だがインターバルが置かれる。


「皆さんお疲れさまです。今のうちに回復してください。修理、医療アイテムが足りない場合は申請してください。この調子でフェーズ2頑張りましょう!」


 大規模戦闘用のチャットルームからアドンの労いと激励の声をかけられる。


「ヴァルムのダメージはどうじゃ?」

「ショゴスの再生装甲のおかげで修復完了してるよ。弾薬も補充したし次もいける。彼方のお爺さんは?」

「この通り鈴鹿さんのメディックドローンで完全回復のピンピンじゃ!」


 フリージアカンパニーの面々はお互いのコンディションが問題ないことを確認し合う。


「地雷ラインの補充をするので、人員を貸してください」

「ワシが行ってくる」

「お爺ちゃんお願いねー」


 大規模戦闘用のチャットルームから人員を求められ、源三郎が地雷設置エリアに向かう。


「源三郎さんは、これをあそこに設置お願いします」

「あいよ」


 ウォーモンガーカンパニーのペロペロから地雷を受け取り、源三郎は指定エリアに地雷を設置していく。


「お、源三郎さん、お疲れさまです」

「どうも、メタボーマンさん。そっちはフェーズ1どうでした?」


 源三郎が地雷を設置していると、隣のエリアで同じように地雷を設置していた今北産業カンパニーのメタボーマンが声をかけてくる。


「うちらは生産よりのメンツだからギリギリだったよ。そっちは?」

「こちらは大型エネミーが出て苦労しましたよ」

「そうなんだ? こっちはとにかく数だったよ。YTがドローンやタレット使わなかったら押し負けてた」


 源三郎とメタボーマンはお互いにフェーズ1の出来事を話し合う。

 メタボーマン達の防衛陣地には巨大蟻地獄のような大型エネミーは出現せず、防衛陣地ごとに敵が変わるのかと話し合う。


「そっちは小型ばかりで大型は出てこなかったのですか?」

「防衛するエネルギージェネレーターで襲ってくるエネミーが変わるのかもしれないな。取りあえずその巨大蟻地獄の攻撃パターンとか情報助かる」

「もうすぐフェーズ2が始まります! 皆さん戦闘準備お願いします!」

「む? もう休憩は終わりみたいですな」

「フェーズ2もお互い頑張りましょう」


 ある程度地雷を設置し終えると全体チャットルームからフェーズ2の準備を促すアドンの声が聞こえてくる。


 源三郎とメタボーマンは作業を止めてお互いに健闘を祈ると自分の陣営に戻る。


 源三郎が任されているエネルギージェネレーターの陣地に到着すると同時にフェーズ2が始まるカウントダウンが上空に表示され、源三郎達は武器を構える。


「フェーズ2開始! エネミー反応多数………かなり速度が速いです!!」


 ウォーモンガーカンパニーのコロッケそばが全体チャットルームで叫ぶ。


「ぬう………飛行型か、厄介な」


 フェーズ2のエネミーは全体的に鳥など飛行型エネミーが多く、地雷が意味をなさないことに源三郎は舌打ちする。


「迫撃砲行きます! 迫撃砲を生き延びた飛行型を優先してください!!」


 ウォーモンガーカンパニーが設置した大型迫撃砲から次々と榴弾がうちだされて着弾点に爆発が起こる。


「敵エネミー、地雷エリア通過!」

「迎撃お願いします!!」


 迫撃砲を生き延びたエネミー達が地雷エリアを通過してエネルギージェネレーターを目指してやってくる。


「弾幕系の重火器で応戦!!」


 彼方は祖父の遺産クエストで購入したマイクロガンを取り出しで弾幕を張る。


「1匹1匹は弱いが数でこられるとめんどくさいのう」


 源三郎はショットガンの花火に持ち替えて、襲いかかってくる鳥達を撃ち落とす。

 着弾時に小規模の爆発が起こり、それに巻き込まれた鳥達も墜落していく。


「タレットとドローン展開します」


 鈴鹿も使い捨てのタレットと、スキル限界まで攻撃用ドローンを展開して鳥達を迎え撃つ。


「的が小さすぎてミサイルでロックできない」


 ヴァルムに搭乗するノエルはミサイルが使えない愚痴を言いながら、ローラーダッシュを駆使して機関砲を撃ちまくる。


「フェーズ2のボスと思われる巨大生物反応を3つ確認! 各エネルギージェネレーターを狙ってまっすぐ進んでいます!!」


 フェーズ2の迎撃が始まって2~3分ほど経つと、ウォーモンガーカンパニーからボスが現れたことを全体チャットルームで叫んで知らせる。


「ムギャオオオオオーッ!!」


 ウォーモンガーカンパニーからのお知らせと同時に雄叫びを上げて採掘プラントに一目散にやってきたのは巨大な岩で出来た猿だった。

 首回りと腕が異様に膨らんでおり、岩の隙間からマグマのような赤い筋が見え、煙が吹き出している。


「迫撃砲2射目行きます!」


 ボスの岩猿を狙ってウォーモンガーカンパニーが採掘プラントに設置した迫撃砲が火を吹く。


「ウッギーーー!!」


 岩猿に命中して体のあちこちで爆発が起こり、岩の部分が粉砕されて剥がれていく。


「ウオォォォォーーン!!」


 迫撃砲での攻撃は岩猿にある程度ダメージを与えたが、3匹とも威嚇するように牙を向いて雄叫びをあげたり、ゴリラみたいにドラミングしたかと思うと、首や腕のマグマのような赤い筋が輝きをまして、口からマグマの塊を吐き出す。


「むう………地雷源を無効化されたか………」


 岩猿が吐き出したマグマはウォーモンガーカンパニーが設置した地雷原に着弾し、あちらこちらで爆発が起こる。


「む? まだ何かしかけるぞっ!」


 岩猿は両手を大きくあげたかと思うと、勢いよく地面に叩きつけて、その反動で跳躍して距離を詰めてくる。


「それぞれ1匹ずつ、各エネルギージェネレーターに向かっていったか」


 大跳躍で地雷源を飛び越えて距離を詰めた岩猿。


「これでもくらえっ!」

「ホギャアアアッ!!」


 着地した岩猿目掛けてヴァルムを操縦するノエルが無反動砲を発射し、命中させる。


「ぬおっ!? 血のかわりにマグマが飛び散るとは、はた迷惑な!!」

「タレットが幾つかマグマで破壊されてしまいました」


 無反動砲が命中した箇所の岩が剥がれたかと思うと、血のかわりにマグマが飛び散り、そのマグマを浴びたタレットが溶けて破壊される。


「ウキャー!」

「ヘイト関係なしにエネルギージェネレーター狙いかっ!!」


 岩猿はヴァルムを一度睨み付けるが、自分の役目を思い出したようにエネルギージェネレーターに向かって攻撃する。


「うわっ!? マグマの血が飛び散ってやりづらい!」


 源三郎達は慌てて迎撃するが、岩猿は一定量のダメージを受けるとマグマの血を傷口から撒き散らしてこちらにもダメージを与えてくる。


「動きがトリッキーで、狙いもつけ───キャアアアアッ!?」

「ノエルちゃん!?」


 ノエルは無反動砲で岩猿に攻撃しようとするが、岩猿は跳躍して無反動砲を回避して、逆に飛び蹴りでヴァルムをノックバックさせてダメージを与える。


「大丈夫! テック4兵器は頑丈だから!」


 数回横転しながらも、最後はバランスを取って制御を取り戻すノエルとヴァルム。


 お返しとばかりに機関砲で反撃してダメージを与えるが、またマグマの血を撒き散らして回りにいた彼方達が攻めあぐねる。


「こちら今北産業カンパニー! これから大型マップ兵器使います! 射程範囲に敵を誘導してください!!」


 源三郎達が岩猿との戦闘に手こずっていると、全体チャットルームから今北産業カンパニーのオミナから要請が入る。


「何をする気じゃ?」


 注意喚起を聞いた源三郎が今北産業カンパニー側に視線を向けると、緑色の信号スモークが焚かれており、そのスモークを目指して、4機の大型輸送機に牽引されてぶら下がっている巨大コンテナが空輸されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る