第69話 お爺ちゃん、星を探す


翌日木曜日、源三郎は朝からギャラクシースターオンラインにログインして、日課となった交易と貨客マラソンで金策をする。


「そろそろテック4の船が欲しいが、何処にも売ってないのう………」


 時間を作っては各地のステーションマーケットやギャラクシーマーケットを覗いているがテック4クラスの宇宙船やアーマメントは売っていない。


「もしかして大規模戦闘とかでしか手に入らないドロップ限定のレアか?」


 これだけ探しても見つからない、ネットの掲示板等でも大規模戦闘で設計図がドロップしたと言う報告しかないことから、源三郎はそう予測する。


「ドロップ限定なら大規模戦闘頑張るしかないか」


 源三郎は彼方達がログインするまでの間金策を続け、儲けの一部をカンパニーの研究プロジェクトに投資する。


「お爺ちゃん投資してくれたんだ」

「アノマリー探索ミッションするなら必要じゃゃろう?」


 数時間後、学校から帰宅して宿題などを済ませた彼方達がログインする。

 彼方は配信前にカンパニーステータス画面で研究プロジェクトの進捗を確認して、源三郎が昼間の内にアンロックしてくれたことに気づく。


「今日の活動だけど、お爺ちゃんが長距離スキャンをアンロックしてくれたから昨日の汚染された惑星から調べない?」

「それでいこうか」

「何かわかるといいですねえ」

「それでいいとワシも思う」

 

 源三郎達は配信前のミーティングを行い、スケジュールを決めていく。


「明日は配信休んで、ウォーモンガーカンパニーさんの大規模戦闘に備えて装備を整えるのに使おうかと」

「おっけー、告知しておく。でも、地上戦闘で大規模とかワクワクするね」

「ウォーカー以外にも地上用車両も揃えたいね」

「宇宙戦闘がないなら輸送船で運ぶのもアリじゃな」


 ミーティングが週末の大規模戦闘の準備も議題に上がり、地上用車両で参加しないかと案がでる。


「車両と言えば、惑星開拓の建築物でそういうのあったね」

「えーっと………あ、これだね。この地上用車両工場を建てて車両を生産すると性能がよくなるみたい」

「装備に関連する工場系多いね」

「かなり高いけど宇宙船のドッグ工場もあるな。ん? あ、この工場がないとテック4作れないみたい? 道理で売り出しがないと思った」


 ノエルが惑星建築物の話題を出すと、残りのメンバーが一斉に惑星建築物のウィンドを開く。

 各自が工場を建てた時の効果を確認していると、宇宙船を作る工場を建てないとテック4の宇宙船を作れないと説明テキストに書かれていた。


「これはメタボーマンさんが言ってたように金が溶けていくのう………」

「今の金策だと中盤あたりからしんどくなりそうだね」


 惑星上に建てれる建築物一覧の値段をみて源三郎と彼方はため息をつく。


「それじゃあそろそろ配信を始めようか。ハーキュリー配信カメラ起動して」

「了解しました」


 彼方は現実時間を確認してミーティングを切り上げると自身の鳥形サポートロボットに指示を出して配信を開始する。


「皆さん、今晩は! 彼方です!」

「やっほー、ノエルだよ」

「視聴者の皆様ごきげんよう、鈴鹿でございます」


 何時もの挨拶から彼方の配信が始まり、視聴者数が次々と増えていく。


「今日の予定は昨日のアノマリー探索ミッションで見つけたエイリアンシップから見つかった座標を調べに行きます」

「その前に、アンロックした研究プロジェクトの報告でーす!」


 彼方が本日の配信の予定内容を視聴者に伝え、ノエルが新たにアンロックした研究プロジェクトの紹介を始める。


「まず一つ目は長距離スキャンをアンロック。これで昨日の汚染された星を調べることが出来るかも?」

「上級汚染防護服と最先端酸素マスクをアンロックいたしました。これによって既存の宇宙服に汚染耐性今後はレベル以下の有毒惑星でも活動が出来るようになりました」

「今日まで結構な数の研究プロジェクトをアンロックしていったが………まだ解除されてない研究プロジェクトがあるんじゃよなあ」


 彼方達がアンロックしたカンパニー研究プロジェクトの内容を説明する。

 ギャラクシースターオンラインをプレイしていると思われる視聴者達が源三郎の愚痴に同意する。


「惑星開拓の方は今は変化ないけど、あれこれ調べていたらテック4の船を作るには惑星建築物の宇宙船のドッグ工場が必要みたいだよ」


 彼方が惑星開拓の進捗状況を視聴者にテック4の宇宙船の作り方をお知らせすると、コメント欄がざわつく。


 必死こいて各地のステーションに訪れてテック4の船を探したり、コミュ障ぽっち気味でカンパニーに入るのが億劫だったプレイヤーと思われる書き込み主は絶望してるようなコメントを書く。


「さて、報告はこれくらいで、まずは昨日調べられなかった惑星のアノマリーから調査を始めたいと思います!」


 彼方はそう言って宇宙に飛び立つと昨日スキルがなくて放置していた汚染された死の星へと向かう。


「よし、今度はスキャンできるね!」


 前回見つけた巨大なクレーターに向かって照査すると調査中の文字とカウントダウンの数字が表示される。


「わしらも手伝うか」

「そうですね」

「うん!」


 源三郎達もスキャンに参加するとカウントダウンが一気に減少していき、アノマリー解析が完了する。


「山脈の映像?」


 アノマリー解析が終了すると、源三郎達のモニターに惑星の山脈の映像が映し出される。


「え? これ山じゃなくて卵の欠片の一部っ!?」

「嘘でしょ!? 欠片だけで山脈並みだよ!?」


 次にテキスト本文が表示されて彼方達は驚きの声をあげる。


 山脈だと思っていたのが実は超巨大生物の卵の欠片で、卵の中にいた生物は10万年以上前に孵って飛び立っている。


「かつてはこの星にもエイリアンの文明が存在した痕跡が辛うじてあるけど、卵が飛来したか孵ったした時の衝撃で滅んだと思われると………」

「放射能汚染は孵った生物が汚染物質を撒き散らす生物と思われ、卵から孵って宇宙に飛び立つまでの間に惑星を死の星に変えたとかやばくない?」

「レイドモンスターとして現れそうですね………」


 源三郎達は解析結果のテキストを声に出して読み上げていく。

 姿形処か生態もほぼわからない謎の超巨大生物によってこの星のエイリアン文明が滅び、星が汚染された内容に鈴鹿がレイドモンスターとして現れるのではと予測する。


「今回はアノマリー発見と解析による報酬のみだね。あの小惑星みたいに化石のレプリカとかは手に入らないんだ」

「これもストーリークエストのようですね、ストーリークエスト【謎の超巨大生物の痕跡を探す】と言うタイトルです」

「別のアノマリー探索ミッションで痕跡を見つかるのかな? 次の目的が超巨大生物の痕跡を探すと言うテキスト本文だけで、クエストルートも表示されないもん」


 後回しにしていたアノマリー探索ミッションをクリアしたら、また別のストーリークエストが発生したが、次の目的地が表示されないため、源三郎達はこのクエストを後回しにする。


「それじゃあ、当初の目的だった座標に向かおうか」


 彼方達は戦闘用の宇宙船に乗り換え、スターマップを開いて次の目的地である星系へワープする。


「辺境になるほどMOBの襲撃が多いね」


 何度かワープを繰り返して目的の星系に辿り着くまでに数回海賊や結晶生命体の襲撃を受けたが、そのほとんどは源三郎のグラップラーシップと斬鑑刀によって返り討ちあっている。


「この星域にはステーションすらないのかあ………下手に撃沈されたら回収しんどいね」


 ストーリークエストの座標星系はスターマップ上では連邦領域だが、補給できる基地すらない。


「座標によるとあの惑星みたいじゃの」

「クエストマーカーもあの惑星を指してるから間違いないよ」

「まずはスキャンで惑星の状態を確認しましょう」

「何があるのかな?」


 源三郎達が惑星に降り立つ前にスキャンをして惑星の情報を確認する。


「空気に有害物質がある荒野砂漠の惑星ユトーか………酸素マスクの研究プロジェクトアンロックしていて正解じゃったのう」

「重力も地球よりちょっと重たいけど、着陸は出来るみたい」

「気をつけて行きましょう」


 スキャンデータを確認すればクエスト目的地の惑星ユトーは人類にとって有害な大気と地球よりも重力が高い惑星だった。


「なるほど、重力の高い星では実弾武器の射程距離や移動、回避にペナルティがはいるのか………」


 惑星ユトーに着陸して源三郎が地上に降り立つと、ウィンドが表示されて過重惑星でのペナルティが表示される。


「とりあえず目的地まで少し距離あるからウォーカーで移動しようよ」


 船から6輪式装甲車を降ろして源三郎達は目的地へと向かった。


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