第64話 お爺ちゃん、彼方のハウジングルームに訪問する


「皆さんこんばんは、彼方です!」

「やっほー、ノエルだよ」

「皆様ごきげんよう、鈴鹿です」


 何時もの挨拶で彼方のギャラクシースターオンラインの配信が始まる。


「今日は私達が新たに購入したハウジングルームの紹介をしたいと思います。その前にアノマリー探索ミッションで見つけた惑星の地表に書かれたエイリアンのメッセージ覚えていますか?」

「初めて視聴の人や忘れている方の為に概要欄にその時の配信リンク貼りましたのでご確認ください」


 彼方が今日の配信スケジュールを視聴者に伝え、鈴鹿がリンクのお知らせをする。

 視聴者達は彼方達に言われてそんなイベントがあったなと思い出すコメントを書き込んでいく。


「エイリアン言語の解析が昨日の深夜に終わったみたいで、私達もエイリアンのメッセージがどんな内容か知りません」

「何かイベントやクエストに関わるものだったりして?」


 彼方とノエルがエイリアンのメッセージ内容に期待しながら、エイリアン言語学者のブータニアスから送られてきたビデオメッセージを再生する。


「あー、あー、テステス。聞こえているかね? 預かったエイリアン文字データ解析が終わったのであーる」


 メッセージビデオを再生するとエイリアン言語学者のブータニアスの姿が映し出される。


「あの惑星に刻まれた内容だが………ただの仕事の愚痴落書きであーる」

「はい?」

「え?」

「パードゥン?」


 エイリアン言語学者のブータニアスから知らされたメッセージの内容があまりにもぐだらない内容に彼方達は自分達の聞き間違いかと聞き直す。

 視聴者達も「は?」「え? 今なんて?」「エイリアンも仕事の愚痴言うんだ」「ズコーっ!」と困惑気味なコメントを書き込んでいく。


「どうやら件の惑星はそのエイリアンの資源採掘惑星だったようで、当時の労働者が採掘するついでに仕事の愚痴を惑星の地表に落書きしたのであーる。内容も給料あげろとか、部長のパワハラむかつくとかであーる」

「えぇ………」

「エイリアンの技術とか財宝とか冒険が始まると期待したのに………」

「実際の遺跡でも古代の人の愚痴とか書かれた遺物が見つかったりしますけど………」

「エイリアンの愚痴と言う設定でギャラクシースターオンラインの開発スタッフが愚痴ってそうじゃな」


 エイリアン言語学者のブータニアスが愚痴の内容を伝えるが、あまりにも内容が下らなさすぎて期待はずれでがっかり感に包まれる。


「とはいえ、我輩からすれば言語パターンの収集に役立ったのであーる。謝礼送ったので、またエイリアンの文字などを見つけたら連絡してほしいであーる。ではバッハハーイ」


 エイリアン言語学者のブータニアスの締めの言葉でメッセージビデオは終わり、アノマリー探索ミッションの報酬として数百万クレジットが手に入る。


「えーっと………ごほん、気を取り直して、今回アンロックされた研究プロジェクトの報告です」


 彼方は空気を入れ替えようと咳払いしてフリージアカンパニーのアンロック完了した研究プロジェクトを発表する。


「まずは量子セキュリティ、鍵開けなどのセキュリティスキルにボーナスが入るようになりました!」

「詳しい効果はデジタルピックの成功率アップと敵からのジャミングなどデバフの抵抗値が上がるよ」


 エイリアン言語学者のイベントで下がったテンションをあげるために彼方とノエルはアンロックされた研究プロジェクトの話をする。


「次はハイパーコムズフォーラムと言うので、フレーバーテキストはカンパニーの活躍を宣伝して有名にするというもので、効果はレベル%クエストやミッション報酬が増えます」

「レベルアップさせるには次のレベル×100万クレジットとかなり長い研究時間がいるから、アンロックするなら気長にやらないとダメじゃのう」


 彼方がハイパーコムズフォーラムの効果を説明し、源三郎がレベルアップに必要なコストを話す。


「私が嬉しいのはこのミサイル熱量コントロールかな? ミサイルダメージと爆発範囲が上昇する研究プロジェクト」

「わしはこのインパルススラスターが嬉しいのう。宇宙船のスピードと姿勢制御がよくなる」


 ノエルと源三郎が自分達にとって有利になる研究プロジェクトの紹介をし、二人が宇宙戦闘の何を重視しているのかがわかる。


「最後はイオス式採掘方法というもので、採掘速度と採掘量がレベル%上昇します」

「これがアダマンティウムにも効果あると嬉しいのう」


 鈴鹿が採掘系のアンロックされた研究プロジェクトの説明をして、源三郎が感想を述べる。


「研究プロジェクトの説明はこれぐらいにして、今日のメインイベントのひとつ! 私達のハウジングルームを紹介するね。ハウジングルームにはスモール、ミドル、ラージ、ゴージャスとあって、私達はゴージャスルームを選んだの」


 彼方はパンっと手を叩いてハウジングルームの紹介を始める。


「まずは私から! ハウジングルームには内装テーマと言うのがあって、私は南国リゾートを選んだの! さあ、みんな来て!!」


 彼方が手招きしながら自分のハウジングルームに源三郎達を招待する。


「それではお邪魔するとするかのう」

「お邪魔しまーす」

「失礼します」


 彼方の招待に応じるように源三郎達も彼方のハウジングルームに撮影用のカメラを携えて入室する。


「ほう、これはいいのう」

「うわぁ、本格的」

「これはいいですね」


 彼方のハウジングルームは南国アジアン風の内装で家具もアジアやオリエント風になっており、壁やドアがなくて解放感のある作りとなっている。


「南国アジア風のリゾートホテルか豪華なヴィラと言うの感じじゃのう」

「ふふーん、拘ったんだから!」


 源三郎が彼方のハウジングルームを誉めると、彼方は胸を張って鼻高々にどや顔する。


 源三郎達が思い思いに彼方のゴージャスルームを歩き回り、インテリアなどに目を奪われる。


 視聴者達も内装コーディネートを誉めるような好意的なコメントばかりで好評だった。


「一番力をいれたのは寝室かな」

「ベッドに寝そべりながら海がみれるのか」


 彼方が自慢のベッドルームに源三郎達を招く。


 彼方のベッドルームには竹編風のキングサイズのベッドがあり、彼方の趣味なのか沢山の大小さまざまな縫いぐるみが飾られ、天蓋の変わりに蚊帳でベッドを覆う。


 源三郎が言うようにベッドに寝そべると窓の外から青い空と太陽に照らされたエメラルドグリーンの海が広がっていた。


「海は泳げるの?」

「浅いエリアだけだけど泳げるよ」


 海をみていたノエルが質問すると、彼方は泳ぐジェスチャーをしながら一定のエリアまで泳げると答える。


「ガチャで水着とか来ないかな」

「多分夏になったらくるんじゃない?」


 泳げると聞けたノエルがボソリと呟き、呟きが聞こえた彼方が憶測で夏ごろと言う。

 すると配信をみていた視聴者達が水着当たるまでスパチャしますとかコメントを書き込んでくる。


「まあ、来たらの話だから。それじゃあ庭見せるね。あ、ゴージャスルームになるとラージルーム並みの庭がついてくるんだよ」


 彼方はそう言って庭に案内する。


「庭は背景のシーナリーに合わせた物になるから、私の場合は砂浜だね」

「ビーチリゾート風な感じですね」


 庭は白い砂浜になっており、木製のデッキチェアやパラソル、置物のビーチボールにトロピカルジュースなどで飾られていた。


「波の音と風が気持ちいいのう………」

「フルダイブだと風も感じるんだ」

「そういえば彼方のおじいさんはフルダイブでログインしてるんだったね」


 源三郎が砂浜で風に当たりながら波の音を楽しんでいると、彼方達が羨ましそうに見ていた。

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