第62話 お爺ちゃん、埋蔵金を探す その3


「我々はアイオブヘヴン! いの───」

「問答無用!!」


 ワープアウトしてきたアイオブヘヴンの艦隊から通信が来たが、源三郎はそれを無視して攻撃を仕掛け、手近にいたアイオブヘヴンの船の1つを斬鑑刀で両断する。


 その状況を見ていた配信視聴者達は前口上ぐらい聞いて上げてよとツッコミコメントをいれていた。


「お爺ちゃん!?」

「どうせ財宝渡せば命を助けてやるとか月並みのことしか言わんし、クエストはこいつら倒せになるからいいじゃろ?」


 いきなり攻撃を仕掛けた源三郎を見て彼方は驚くが、源三郎は自分の行動が常識と主張するように返し刃で別の船を撃墜させる。


「たぶんそうだけど、うん………様式美と言うか、なんと言うか聞いて上げてもよくなかった?」

「それよりも敵も動くみたいだよ、彼方!」

「ドローン展開します!!」


 源三郎の攻撃がアイオブヘヴンの前口上キャンセル扱いになったのか、敵艦隊も攻撃を行ってくる。


「うひゃ! 数が多い!!」

「ジャミングしていますが、数が多くて被弾率が高いです」

「それじゃ、私が数を減らすね!!」


 鈴鹿のジャミングドローンで相手の命中率を下げているが、それでも敵の数が多すぎて被弾して彼方達の船のシールドが削られていく。


 そんな中、攻撃を受けながらもノエルの【ゴーラム】が前に出て彼方達を庇いながらミサイルを発射して敵の数を減らしていく。


「あーんもう! とにかく頑張って倒してクエストクリアするよ!!」


 彼方の【ハーヴィンジー】のオートタレットが四方八方の敵をとらえて自動攻撃を行う。


「攻撃ドローン出します」


 鈴鹿はジャミングドローンを回収して代わりに攻撃ドローンを展開する。

 攻撃ドローンに搭載された大口径のビーム砲がアイオブヘヴンの宇宙船を落としていく。


「む? あれはグラップラーシップか?」


 敵陣に突っ込んで次々と敵を切り刻んでいく源三郎。


 アイオブヘヴンの旗艦と思われる船を見つけ、大将首を狙おうとすると旗艦側に控えていたグラップラーシップが立ち塞がるようにグラップラーアームを展開して薙刀を構える。


「勝負!」


 源三郎は旗艦から敵のグラップラーシップに狙いを変えて、斬鑑刀をクロスに交差して攻撃を仕掛ける。


 敵のグラップラーシップは源三郎の攻撃を回避するように急速に上昇して回避すると、急降下して薙刀を振り下ろしてくる。


「なんの!」


 源三郎は薙刀を片方の斬鑑刀で受け止め、もう片方の斬鑑刀のブースターを利用して機体の姿勢制御を行いながら押し返す。


 敵のグラップラーシップは初擊が受け止められるとバックするようにバーニアを吹かして距離を取り、源三郎の【ヘカトンケイル】の周囲を飛び回り攻撃のチャンスを伺う。


「あっち、なんかすごい戦いしてるね」

「グラップラーシップ同士の戦いって結構映像映えするね、結構視聴者増えてるよ」

「彼方のお爺さんのところに敵がいかないようにしましょうか」


 彼方とノエルがアイオブヘヴンの取り巻きの船を撃墜しながら、源三郎と敵のグラップラーシップとの戦いを見て感想を述べ、鈴鹿がドローンを駆使して他の敵が源三郎の所にいかないように牽制する。


 ノエルが言うように、源三郎と敵のグラップラーシップとの戦いを見物するために視聴者の数が増えていき、4桁近くの配信視聴者が源三郎の戦いを観戦していた。


 敵のグラップラーシップは源三郎の隙を伺い周囲を飛び回っていたと思うと、一気に攻勢に出て、薙刀を大上段に構えて、源三郎のヘカトンケイルに向けて振り下ろそうとする。


「ふんっ!!」


 源三郎は2刀の斬鑑刀を交差して十字受けで敵のグラップラーシップの攻撃を受け止めるると、アフターバーナーと斬鑑刀のブースターを起動して押し返すと、双方の機体出力はヘカトンケイルの方が上だったのか、敵のグラップラーシップを弾き飛ばし体勢を崩させる。


「勝機っ!!」


 体勢を崩した敵のグラップラーシップに上下から斬鑑刀降りおろし、振り上げて切り裂こうとする。


 最初は敵のグラップラーシップのバリアに阻まれるが、斬鑑刀のブースターを発動させて強引に質量でバリアを崩壊させて、船体を切り裂く。


 1拍間を置いて敵のグラップラーシップに紫電が走ったかと思うと爆発して機体がバラバラになった。


「お爺ちゃん! こっちも片付いたよ」

「残すは旗鑑だね」

「押して参ります!!」


 彼方達も取り巻きのアイオブヘヴンの海賊船を破壊していき、源三郎と合流する。


「敵旗艦前進してきます。敵のウェポン起動を確認。主砲来ます!」

「散開して回避っ!」


 敵旗鑑の主砲がこちらに向いてビーム砲を撃ってくる。

 源三郎達は左右に別れて主砲を回避して、そのまま側面に回り込んで源三郎達は攻撃を仕掛けるが、バリアに阻まれる。


「敵対空砲火きます」

「ぬうううっ!!」


 逆に旗鑑に搭載された対空砲が命中して、源三郎達のバリアのヒットポイントがごっそり削られる。


「敵は図体がでかいから攻撃すれば当たるが、バリアの出力も段違いじゃな!」

「市販品じゃ火力が不足し始めてる気がするよ」

「回復します!」


 対空砲を回避しながら、源三郎達は旗鑑に攻撃を加えるがまだ、バリアを破壊するに至っていない。

 こちらも鈴鹿のリペアドローンのお陰でダメージを受けてもすぐに戦線に復帰できる程度に被害を押し止めている。


「何とかバリアさえなくせれば、奥の手使えるのに」

「む? そんなのがあるのか?」


 ノエルがぽそっと呟き、たまたま聞こえていた源三郎が聞き返す。


「使い捨ての一発100万クレジットもする対艦ミサイルを1つだけ切り札として積んでるけと、ロック完了までの時間が長いの、これ」

「ならわしと彼方で牽制、鈴鹿はシールドドローンとリペアドローンでノエルを守ってくれ」

「オッケー、お爺ちゃん!」

「承知しました」


 ノエルが切り札を持っていることがわかると、源三郎は孫娘の彼方と共にアイオブヘヴンの旗鑑のヘイトを稼ぐ。


「ロック速度系のスキルもうちょい育てておくんだっなあ………」


 ノエルは切り札の対艦ミサイルを装填して旗鑑に狙いを定めるが、ロック完了までの時間が中々終わらず焦った声を漏らす。


「彼方さんとお爺さんならやってくれますよ」


 鈴鹿はドローンを駆使してノエルを護衛しながら励ます。


「チェエエエストオオオ!!」

「バリアが消えたよ、ノエルっ!!」

「ロックオン完了! いっけえええええ!!!」


 源三郎が捨て身の突貫で旗鑑のバリアを解除し、彼方がノエルに呼び掛ける。


 バリアが解除されるとほぼ同時に対艦ミサイルのロックオンが完了して、ノエルは発射ボタンを押す。


 ゴーラムのミサイル発射口から一際大きなミサイルが発射されてまっすぐアイオブヘヴンの旗鑑へと飛んでいき、旗鑑の船体中腹まで突き刺さると大爆発を起こして撃沈する。


「よっしゃ!」

「やったー!」

「100万クレジットの威力みたか!」

「やりました!!」


 ノエルの対艦ミサイルでアイオブヘヴンの旗鑑が撃沈し、クエストもバベルステーションに戻ると言う内容に更新される。


「お、旗鑑からレアのジェネレーター本体が手に入ったの」

「あ、私はアーマメントの追加装甲で自動修復能力もち」

「私は採掘速度アップのマイニングカッター。外れより?」

「私は属性防御が追加されたバリア装置ですね」


 アイオブヘヴンの旗鑑からは確定ドロップでレア宇宙船装備が全員に手に入る。


「グラップラーシップから超硬度薙刀と言うのが手に入ったの」


 源三郎と一騎討ちをしていた敵側のグラップラーシップが持っていた薙刀が源三郎のドロップ品として手に入る。


「私達は交易素材とクレジットだけだったね」


 逆に彼方達はグラップラーシップからはアイテムはドロップしなかったようだった。


「それじゃあ、バベルステーションに帰還しようか」

「そうするかの」


 アイオブヘヴンの艦隊からドロップ品を回収すると源三郎達はバベルステーションに帰還し、モルガンと共に連邦軍に祖父の財宝が見つかったことを報告する。


「これでやっと肩の荷が降りました。連邦を通して祖父の財宝を回収して返還したと公表して貰うので、今後は私も家族も狙われることはないでしょう。皆さんのお陰です、ありがとうございました」


 連邦軍に報告を終えるとモルガンから声をかけられお礼を言われると、クエストが完了する。


「うっ、うわっ!? クエスト報酬が1人10億クレジットって!?」

「しかもクエスト参加者全員にじゃから総額40億か………カンパニーの税金がすごいことになりそうじゃのう………」

「これさ、皆の分とカンパニーウォレット合わせたら惑星の開拓権利買えない?」

「ちょっと購入できる惑星探しましょうか?」


 洒落にならない額のクエスト報酬に源三郎達は唖然とする。

 配信視聴者達はバグの可能性をコメントしたり、自分もこのクエスト受けると言っている視聴者もいた。


「とりあえず今日はもう遅いからここまでだね。明日は今回のクエスト報酬が問題なければ私達のハウジングルームの紹介と、惑星開拓権利を購入するのを配信したいと思うから、みてね」

「この配信が面白かったらチャンネル登録と高評価よろしくお願いします」

「またあしたー!」


 彼方達がスパチャしてくれた人に個別に挨拶したあと、締めの挨拶をして配信を終了するとログアウトしていった。

 


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