第59話 お爺ちゃん、ハウジングに着手する
「お爺ちゃん、新しいルーム見つけたって本当?」
「ああ、ほんとうじゃとも」
昼食後、孫娘の彼方達と合流した源三郎はバベルステーションの不動産で新しいハウジングルームが購入できることを知らせた。
「ゴージャスルームは100万クレジットとか安い!」
「先週までは10万クレジットでも大金に思えましたのに」
「このゲーム、TRが大きいミッションになると報酬が倍どころじゃないもんねえ」
源三郎は彼方達と再びブレイドの不動産に訪れ、購入できるハウジングルームを物色していた。
「内装テーマもいっぱいあるね。全部で50種類もあって悩んじゃう」
「近未来的な物からファンタジーのお城っぽいもの、どれにしましょうか?」
「うーん、このお菓子の家テーマも悪くないなあ」
彼方達はキャイキャイ言いながら内装テーマを選んでいる。
「わしはゴージャスルームで、内装テーマはこれじゃな」
「ゴシックテーマかあ、お爺ちゃん渋い」
「今のアバター衣装と相性いいテーマだよね」
源三郎が選んだのは19世紀のイギリス貴族が住むような屋敷風の内装。
今回のガチャで当てたゴシックアバター衣装と一体化していると彼方やノエルがはしゃぐ。
「じゃあ、私はこれ~」
「なかなかいいですねえ」
ノエルもゴージャスルームを選び、ピンクの壁紙にハートマークの窓などがあるファンシーテーマを選ぶ。
「うーん、私はこれ………やっばりこっち! しゃなくてこれにする!!」
彼方はあれこれ迷いながら、ゴージャスルームで、南国リゾートなテーマを選ぶ。
「私はこれ一択ですね」
「あー、すずちんらしいね」
「わかる~」
鈴鹿もゴージャスルームを購入し、オリエンタルと言う時代劇に出てくるような武家屋敷風の内装のテーマを選び、彼方とノエルが鈴鹿らしいと納得するように頷く。
「ゴージャスルームを御購入ありがとうございます。ご一緒にシーナリーはいかがでしょうか?」
「シーナリー? なにそれ?」
源三郎達がゴージャスルームを購入するとブレイドはほくほく顔でも揉み手をしながらシーナリーと言う商品を勧めてくる。
「簡単に言いますと、庭や窓の外の風景をホログラフィックで飾ります。例えば市街地風なら庭先から都会のビル群などがみれます。こんな感じてす。ゴージャスルームなら庭から見える外の風景も同じように変わります」
ブレイドはシーナリーについて説明して、自分のオフィスの窓から見える風景をビル群、大森林、オーシャンビューとまるでテレビのチャンネルを変えるように次々と変えていく。
「ふむ、これはまた悩むのう………わしは無難に森のシーナリーかの」
源三郎はあれこれシーナリーを切り替えて自分のルームに似合いそうな風景を探し、森の中風のシーナリーを選ぶ。
「私はこの桜の並木と富士山が見えるシーナリーを」
鈴鹿は迷うこと無く、日本風のルームに似合う桜の並木と遠くに日の出と富士山のシーナリーを選ぶ。
「私はこれ一択だね」
ノエルは大翔にペガサスがいたり、遠くにお菓子の家があったりする風景のシーナリーを即座に購入する。
「私は………海岸着いたかなあ?」
彼方は砂浜とエメラルドグリーンの海が広がるシーナリーを選ぶ。
「あとは家具だけど、部屋みてから決めない?」
「皆の部屋がどんな感じか覗いてみたい」
「いいですねえ。あ、家具とか揃えたら皆様の部屋を配信で紹介してみませんか?」
「それいいね!」
「その案採用!」
鈴鹿がハウジングルームを完成させて配信することを提案すると、ノエルと彼方が良いアイデアとばかりに拍手する。
「そこで部外者の振りをしてるお爺ちゃん! お爺ちゃんの家も配信するから、ちゃんと内装飾ってよね!」
「わしもかっ!? こんな爺さんの部屋なんて誰も見たがらんじゃろ?」
彼方達がはしゃいでるのを温かく見守っていた源三郎。
彼方から指をさされて自分も配信の対象になっていると言われて慌てる。
「お爺ちゃんもフリージアカンパニーのメンバーなんだから一蓮托生です!」
「むう………仕方ないのう、変な部屋になっても文句言わないでくれよ」
「そうと決まればまずは資金集めです!」
源三郎達はハウジングルームを飾る家具を購入するべく、夕食まで貨客ミッションマラソンで資金を稼ぐ。
ミッションで荷物や客を運んでいる間も彼方達はこんな内装したいとか、こんなインテリアがほしいなど盛り上がり、そんな三人を見守る源三郎。
「さて、まずは新しいハウジングルームを見て家具を決めるかのう」
彼方達とは一旦解散して、夕食を終えた源三郎は自分が購入したゴージャスルームをかくにんしにいく。
「ほう、中はこんな風になっているのか」
建物内部は昔見たイギリスのカントリーハウスに良く似た内装で、一階と二階にわかれている。
今は家具をなにもおいてないので殺風景だが、ゴシック朝の装飾品で飾れば良い雰囲気になりそうだ。
一階からは庭に出ることができ、芝生の庭が広がっており、周囲は木々に囲まれた森の中のカントリーハウスといった感じだった。
「とりあえず、まずはマーケットにアクセスできる端末をこっちに設置しなおして」
クエストで貰ったルームに置いてあった家具をゴージャスルームに置き換え、源三郎はステーションマーケットで家具一覧を確認する。
「家具にも拘りたいが………今後の生産を視野にいれてまずはクラフト機材を充実させていくかの。まずは生産時間短縮に生産の大成功率あげる機材は必須じゃな」
源三郎は以前購入したクラフト機材と並べるように追加のクラフト機材を購入して設置していく。
「次は………まずはエントランスホールから飾っていくかの」
源三郎はまずは巨大なペルシャ絨毯を床に敷いて顎髭を弄りながら次のコーディネートを考える。
「ウェルカムマット? ほう、マットを踏むと設定したメッセージがホログラムで表示されるのか。『ようこそ、ご自由にお寛ぎください』と書いて………」
源三郎はウェルカムマットを設置しようとするが、ペルシャ絨毯との相性が悪く感じ、縦横向きを変えたり、置く場所を変更したりするが、納得のいくコーディネートにならず悪戦苦闘する。
「む! こうすればいいのかっ!!」
源三郎があれこれ試していると、ウェルカムマットの上に重ねるようにペルシャ絨毯が敷けたことに興奮する。
「床はこれで良いじゃろ、天井にはこのシャンデリアで………蝋燭の灯りで統一していくかの」
ゴシック調の見た目で蝋燭の暖かな灯りで部屋を照らすシャンデリアを設置し、壁にはキャンドルスティックと呼ばれる壁掛け式の蝋燭台を幾つか設置していき、灯りを調整する。
「うーむ………もうちょっとなにかほしいのう」
源三郎はマーケットで調度品を購入して飾っては撤去してあーでもないこーでもないと悩む。
「ここはこの壺を置いて、ここに絵画を………うむ、イメージ通りじゃ」
源三郎は風景画や良くわからない壺を置いてエントランスを飾っていく。
「次は寝室を作るかの」
源三郎はエントランスホールから二階に上がり、ひとつの部屋をを寝室としてコーディネートしていく。
「ベッドは天涯つきのキングサイズベッドで、ここにナイトテーブルを置いて………ベルベット生地のカーテンを窓につけて完成だな」
ベッドルームができると次は書斎、応接間、娯楽室と空いてる部屋をどんどん家具で飾り付けていく。
「トレーニング器具はミニゲームになっておるのか」
家具のトレーニング器具を設置すると、ミニゲームに挑戦できるようになっており、ヨガマットは時間内にシルエットと同じポーズを取るゲームで、サンドバッグはリズムゲームのようにタイミング良くマークにパンチする。
「オーディオルームは蓄音機の方が部屋の雰囲気に合っておるな」
家具一覧の中にレコードレイヤーやジュークボックス、アンティーク蓄音機とゲーム内の音楽を再生するアイテムがあり、源三郎はこの三つを購入して置き比べて悩んだりしていた。
「庭は薔薇のアーチに東屋、ここに噴水を置いて、東屋の中にテーブルと椅子を置いて、机の上にティーセットと………」
源三郎は庭に出ると薔薇のアーチを次々と設置してトンネルを作り、景観を確認しながら微調整していく。
最終的に源三郎はハウジングルームの家具設置に熱中しすぎて、夜更かししないように自分で設定したアラームがなるまでずっと休まず続けていた。
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