第56話 お爺ちゃん、大規模戦闘に参加する。その3
「ふう………何とかウェーブ2凌いだのう」
「さすがに敵固かったね」
ウェーブ2を終えて、ステーションに戻った源三郎達は船を修理に出して休憩にはいる。
「よう、源三郎のじいさん!」
「おお、リョーマか」
「私もいますよ」
源三郎が休憩していると、リョーマと隼人がやって来る。
「結局ウェーブ2も同点になりましたね」
「こんなに勝負が拮抗するとは思わなかったぜ。楽しいけどよ」
「決着はウェーブ3ですな」
源三郎、リョーマ、隼人の三人は意気投合したように雑談が盛り上がる。
「ウェーブ3がもうすぐ始まります! 修理を終えた人は搭乗してください。修理が間に合わない人は予備機体を出してください」
「おっ、もうすぐ始まるみたいだな」
「それじゃあお互い検討を」
「そうだ、よかったらフレンド登録しませんか?」
大規模戦闘用の総合チャットルームで主催のウォーモンガーカンパニーの代表アドンがウェーブ3の出撃準備を告知していく。
それを聞いた源三郎とリョーマがハンガーデッキに向かおうとすると、隼人がフレンド申請してくる。
「おっ! いいな、これから俺たちはダチな」
「こちらからもよろしくお願いします」
源三郎とリョーマは隼人からのフレンド申請に同意し、源三郎とリョーマもお互いにフレンド申請する。
「勝っても負けても恨みっこなしだぜ」
「んな無粋なことはせん」
「もちろんですよ」
源三郎、リョーマ、隼人の三人はお互いに武運を祈って自分達の船に乗る。
「お爺ちゃん青春してるねえ」
「ハッハッハ、10は若返った気分じゃよ。確かにこのゲームは認知症に効果ありそうじゃよ」
源三郎とリョーマ達の会話をみていた彼方が話しかけ、源三郎は笑う。
「それじゃあウェーブ3頑張ろうね! フリージアカンパニー出撃!!」
「うむ!」
「はい」
「最終戦も頑張るぞいっ!」
彼方の号令にあわせて源三郎、鈴鹿、ノエルが発進していく。
「敵艦隊ワープアウトしてきます!!」
ウェーブ3開始のカウントダウンが開始されると、演出としてNPCのオペレーターからの通信が入る。
そして、プレイヤー達の前にワープアウトしてきたのは継ぎ接ぎだらけの全長900メートルを越える巨大な戦艦だった。
「ウェーブ3はボス戦です! 皆さんここが正念場です!!」
「ミサイルチーム攻撃してください!」
先手必勝ととばかりにプレイヤーサイドがワープアウトしたばかりの海賊戦艦にミサイル攻撃を行う。
「やったか?」
「おいばか止めろ」
「フラグ立てんなっ!」
プレイヤーの誰かがチャットルームでやったかと呟くと、一斉に非難のコメントが書き込まれていく。
「戦艦ダメージなし! すべてバリアに阻まれました!!」
「おい、やったかってフラグ立てたやつKAMIKAZEってこい!」
ミサイルは全て戦艦のバリアに塞がれ、戦艦側のジェネレーターも性能がいいのか、バリアもすぐに回復する。
戦闘ログを確認していたプレイヤーがダメージがないことを報告すると、フラグを立てた戦犯に自爆特攻しろとコメントするプレイヤー達。
「責任とって、カムロ逝っきまーす!!」
やったかフラグを立てたプレイヤーがまたネタ台詞を叫びながら1機で戦艦に向かって自爆特攻を図ろうとする。
「戦艦主砲に高エネルギー反応!」
「ミっ!?」
自爆特攻しようとするプレイヤーの船に戦艦の主砲が向いたかと思うと、極太のビームが放たれてプレイヤーの船は一瞬で蒸発した。
「バリアが消えました! どうやら戦艦は攻撃するとバリアが消えるギミックです!!」
「総員総攻撃!!」
一人のプレイヤーの犠牲のお陰で戦艦の戦闘パターンの1つが判明した。
バリアが消えた今がチャンスとばかりにアドンは総攻撃の号令を出す。
「戦艦から戦闘用ドローンが数多く展開されています」
「遊撃チームはドローンの駆除を!」
ミサイルとロングレンジ攻撃を持つ宇宙船が戦艦を攻撃し、ショートからミドルレンジ攻撃しかもたない宇宙船がドローンの駆除を行う。
「チェエエストオオオ!!」
そんな中、源三郎はミサイルとレールガンのオートタレットでドローンを排除しながら、斬鑑刀で戦艦の装甲に傷をつける。
「ぬおっ!?」
斬鑑刀という名前だけあって、対艦船追加ダメージボーナスがあり、そこそこのダメージを与えた源三郎はダメージヘイトを稼いでしまい、ドローンの集中砲火を受けて、バリアを壊され、アーマーにダメージが入っていく。
「源三郎のじいさん、無理すんなよっ!」
「年よりの冷水ってとこですかね?」
執拗に源三郎のヘカトンケイルを攻撃しつづけるドローンをリョーマと隼人が迎撃していく。
「助かった」
「源三郎のじいさんはヒーラーのとこで修理を受けてきなよ」
「その間に私が撃墜数を稼がせて貰いますよっと!」
「あっ、てめっ! それ俺が狙っていたのに!!」
源三郎が礼を述べてる間もリョーマと隼人が撃墜数を競いあう。
リョーマが狙っていたドローンを横取りするように隼人のドリルで撃墜し、リョーマがクレームをいれる。
そんな二人に戦場を任せて、源三郎はヒーラー達が待機しているエリアに向かう。
「彼方のお爺さん、修理しますね」
「いつもすまないねぇ~」
「いえいえ」
鈴鹿のドローンシップニムから修理用ドローンが展開され、源三郎のヘカトンケイルを修理していく。
「戦艦またバリアを展開! エネルギーチャージ始めました!」
「全員散解! 回避集中してくれ!!」
「主砲が来ます!!」
また海賊の戦艦から極太のビーム砲が発射されて、運悪く射線上にいたプレイヤー達が一撃で撃墜されていく。
「バリア解除! ドローンがまた展開されています!!」
「全員攻撃をつづけて!!」
海賊の戦艦は先程と同じように主砲を発射するとバリアが消え、ドローンを展開していく。
「行ってくる」
「ご武運を!」
修理を終えた源三郎のヘカトンケイルはフルブーストして海賊の戦艦に向かっていく。
「邪魔をするでない!」
進路を妨害するようにドローン達が道を塞ごうとするが、斬鑑刀で一掃して突破していく。
「うおおおおおおっ!!」
二刀の斬鑑刀を前に突き立てて戦艦に向かって突撃する源三郎。
斬鑑刀を戦艦に突き刺し、ほぼ0距離からレールガンとミサイルを放ち、離脱する。
「戦艦に動きあり!」
源三郎の攻撃を受けた海賊の戦艦は船全体にあったタレットや砲門を全て展開すると、敵味方関係なく巻き込むように縦横無尽無差別に攻撃を開始する。
「クソッ! これじゃ近づけねえぞ!」
「先程の主砲でロングレンジチームとミサイルチームがかなり撃墜されて火力が足りません!!」
戦艦の無差別攻撃に近寄れないプレイヤー達はロングレンジから攻撃を仕掛けるが、火力が足りず押しきれない。
戦艦の無差別攻撃に回避しきれなかったプレイヤー達が撃墜され、機体の回収や修理が間に合っていない状態だった。
「彼方や、わしちょいと艦橋に特攻かましてくるわ」
「はい? ちょっ! お、お爺ちゃん!?」
このままではじり貧と感じた源三郎は散歩に出かける感覚で特攻を仕掛けると伝えると、フルスロットルで海賊の戦艦に突撃する。
「源三郎のじいさん! それはむ………はあ?」
近くにいたリョーマが止めようとするが、源三郎の行動を見て目を白黒させる。
源三郎が操るヘカトンケイルはまるで弾幕ゲーのような戦場に突っ込むと、レーザーやミサイル、ドローンの攻撃を予測していたように掻い潜って戦艦に近づいていく。
「うわぁ………RTP値500だから出来る芸当だねぇ」
彼方の配信チャンネルでは源三郎の人外染みた回避業で盛り上がる。
「っ! 皆さん、ドローンをあのグラップラーシップに近づけさせないように攻撃をつづけてください!!」
呆けていたアドンはハッとすると、源三郎の負担を少しでも減らそうと海賊の戦艦から次々と現れるドローンを撃墜するように指示を出す。
「ぬううううっ!!!」
戦艦との距離が近くなれば近くなるほど攻撃は激しくなり、いくら源三郎のRTP値が500あろうと、面でこられたら回避は不可能。
損傷覚悟で弾幕の薄いエリアに突っ込みバリアとアーマーが削られていく。
「ユーザー、船体残りヒットポイント40%をきりました。離脱してください」
コクピット内は赤い非常灯だけになり、警報が鳴り響き、コクピット内のあちこちでスパークや煙が発生し、サポートロボットのロボが戦場からの離脱を進めてくる。
「船体残りヒットポイント10%、ユーザー、このままでは撃沈します」
「構わん! このまま突撃じゃ!!」
あちらこちらダメージを受けてボロボロのヘカトンケイルはそれでもスピードを緩めず、遂に斬鑑刀が海賊戦艦の艦橋に突き刺さる。
斬鑑刀が突き刺さった瞬間、クリティカルの文字とダメージが表記されて、海賊の戦艦のヒットポイントが0になり戦艦が爆発する。
【大規模戦闘終了。プレイヤー達の勝利です】
戦艦の撃沈と同時にサーバーアナウンスで大規模戦闘がプレイヤー側の勝利で終わったことをお知らせしていた。
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