第55話 お爺ちゃん、大規模戦闘に参加する。その2
「海賊艦隊は被害を無視して突っ込んできます!!」
海賊艦隊が自分達の仲間の被害を無視してミサイルとレーザーの嵐の中に突っ込んでくる。
防衛チームは突出した海賊船を優先的に落としていくが寄せ集め故の連携の脆さから突き破られ、敵を寄せ付けてしまう。
「遊撃チームの皆さん、各自迎撃に向かってください!」
「よし、わしの出番じゃな!!」
アドンの号令に応えるように源三郎は斬鑑刀を抜刀してアフターバーナーと斬鑑刀のブースターを起動して敵陣に突っ込む。
「鴨射ちならぬ鴨斬りじゃな!」
敵の数が多いので下手に狙わなくても、斬鑑刀を振り回すだけで海賊船を斬ったり、叩き落としたりする。
「おいおい、俺の獲物も残しておいてくれよなっ!」
グラップラーアームの先端が巨大な握り拳になってるグラップラーシップがやって来たかと思うと、そんなことをいいながらその拳で海賊船を殴り潰していく。
「オラオラオラオラオラオラ、食い足りねえぞっ! ゴルァ!!」
「おーい、私の分も残しとけよー」
源三郎と拳のグラップラーシップが暴れていると、さらに先端がドリルになってるグラップラーシップも参加して海賊船にドリルで穴を穿って行く。
「誰が一番落とせるか勝負しねえか?」
「ほう、面白い」
「今から倒したのを換算と言うことで」
拳のグラップラーシップのプレイヤーが勝負を提案し、ドリルのグラップラーシップのプレイヤーがルールを作る。
「それじゃスタートだ!」
「若いものにはまだまだ負けんぞ」
「勝つのは私です!」
グラップラーシップを操る3人が暴れまわり、次々と海賊船を落としていく
「お爺ちゃん張り切ってるなあ~」
少しはなれた場所で彼方はオートタレットを駆使して射程範囲に入った海賊船を落としていきながら、大暴れする源三郎をみて微笑む。
「彼方さん、お供します」
「サンキュー、すずちん! 愛してる!」
「私もですよ、彼方さん」
鈴鹿のドローンシップから展開したラージサイズの攻撃ドローンが彼方の船に追従して強力なビーム砲で敵海賊船を落としていく。
鈴鹿と彼方の軽口を聞いた配信視聴者達が百合の花が咲いたとか、キマシタワーと叫ぶようにコメントに書き込んでいた。
「ウェーブ1完了! 全機戻って補給と修理を受けてください!!」
「む? もうウェーブ1終わりか?」
気がつけば敵の第一陣が撤退していき、イベントアナウンスと総合チャットルームでアドンがウェーブ1が終わったことを知らせてくる。
各自はステーションに戻ってミサイルなど補充したり、修理ドローンやリペアビームで修理を受けたりする。
「撃沈した人はなるはやで復帰してください。修理が間に合わない人は予備の宇宙船に乗り換えてください」
「トラップ仕掛けられる人は今のうちにおねがいしますっ!!」
ウォーモンガーカンパニーの人達が手分けして指示を出して忙しく動き回っている。
特に機雷などトラップやジャミングドローンの妨害範囲を広げるセンサーアレイを設置していく工作チームは休むことなく働いている。
「おう、いたいた! あんた、斬鑑刀使いのパイロットだろ!」
「む? そうじゃが?」
源三郎がステーションで休憩していると、でかい声で話しかけてくる男性アバターのプレイヤーがいた。
その姿は一言で表すなら暴走族。ピンっとつきたったポンパールリーゼント、純白の宇宙服にはエディタペイントで【天上天下唯我独尊】とか【愛羅武雄】など派手な刺繍文字が施されており、キャラクターネームはリョーマと表示されていた。
「ずいぶんと個性的じゃのう」
「おう、俺はオンリーワンな男だからな!」
源三郎が一言漏らすとブラックエンペラーは自慢げに鼻を高くして櫛で髪型を整えるエモーションを行う。
「お二人ともここにいましたか」
次に声を書けてきたのは昭和チックな宇宙服とヘルメット、片目を前髪で隠した隼人という名前の男性アバターのプレイヤーだった。
「何か用かの?」
「おう、さっきの勝負同点だっただからよ、ウェーブ2に持ち越ししねえかって提案だ」
「おや、私も同じ提案をしようかと」
源三郎が用事を聞くとリョーマと隼人は先程の撃墜勝負の延長戦を申し込んできた。
「そういえば勝負してたな。ウェーブ2の撃墜数、それでも勝負がつかなければウェーブ3で」
「おっし! 負けねえぞ」
「ではそのルールで」
源三郎が延長戦を承諾するとリョーマはパシンと自分の掌に拳をぶつけて気合いをいれ、隼人は前髪をかき揚げてポーズをとりながら去っていく。
「濃い人達だったね、お爺ちゃん」
「ゲームを楽しんでる好い人達じゃよ」
「5分後にウェーブ2が始まります! 各自遅れないように!!」
「む、忙しないのう」
「初めてだからどうしても押し気味になっちゃうよね」
「ウォーモンガーカンパニーの皆さんは頑張ってると思いますよ」
「ウェーブ2も頑張ろう!」
どたばたして休んだ気になれない源三郎達はそんな話をしながら宇宙船に乗り込んでウェーブ2に備える。
「海賊艦隊第二陣きました!!」
「全員、海賊船が機雷エリアに接触するまで待機! 機雷に引っ掛かったら、各自の範囲が届く武器で攻撃をおねがいしますっ!!」
レーダー性能のいい船のプレイヤーがウェーブ2の海賊艦隊がきたことを知らせると、アドンが機雷作戦を説明する。
「敵先頭部隊機雷に接触!」
「撃ち方はじめーっ!!」
海賊艦隊の先方の船達が散布した機雷に接触してダメージを受ける。
敵の足が止まったのを見計らってこちらも攻撃する。
「敵艦隊、機雷エリアを強硬突破する模様!!」
「弾幕密度を上げろ!!」
海賊艦隊はウェーブ1の時と同じように自分の味方船に犠牲を強いて機雷エリアを強硬突破していく。
次々と敵のテック1小型機が機雷の爆発に巻き込まれて大破していくが、後方のテック2~3の船は軽微ダメージで通過していく。
プレイヤー側はミサイルやレーザーを射ちまくって弾幕密度を上げるがウェーブ2の艦隊は全体的に耐久力が高いのか中々撃沈せず強引に突っ込んでくる。
「敵もジャミングドローン展開しました!」
「遊撃チームの皆さん! ドローンシップを優先的に破壊してください!!」
敵艦隊からドローンが射出されるとプレイヤー側のミサイルの命中率が著しく悪くなる。
ミサイルが使えなくなると火力不足になると思ったあアドンは遊撃チームにドローンシップの駆除をお願いする。
「よっしゃあ! 早速撃墜数勝負だ!」
「ふっ、負けませんよ」
「ぬう………ドローンが邪魔じゃのう」
リョーマと隼人はそういうとグラップラーアームを起動して殴り、貫いていく。
源三郎はドローンシップを狙おうとするが、ドローンや雑魚海賊の船に足を止められて中々進めずにいた。
「こっちもセンサーアレイとジャミングドローンのおかげで海賊側のミサイルを防げてるけど、レーザーだけじゃ押しきれない」
お互いジャミングドローンのおかげでミサイルを封じられて決定打を打てず、また海賊側の数が多く、プレイヤー側は回収や修理待ちの船が幾つかあって数の差から攻めあぐねている。
「うおおおおーっ! KAMIKAZE!!!」
「万歳アターック!!」
「よお、タコ野郎! 帰ってきたぜ!!」
「ウォーモンガーカンパニーに栄光あれー!!」
そんな中、安価なテック1宇宙船に乗っていた一部のプレイヤー達が敵艦隊に思い思いの台詞を叫びながら自爆特攻を仕掛けていく。
「死に戻り前提とした自爆アタックか………」
「あ、おいっ! それは俺の獲物だぞ!」
「うーん、有効かもしれませんが美学がないですね」
何機か撃ち落とされたが、それでも敵艦隊に船本体ごとぶつかり合い自爆と衝突の衝撃で押し戻す。
自爆したユーザーはまた安価なテック1予備船に乗り込んでまた突撃しようとする。
そんな自爆特攻をみたリョーマと隼人は感想を述べる。
「敵艦隊のドローン船の全滅を確認!」
「ミサイルチーム! 全弾発射!!」
海賊側のドローンシップが自爆特攻によって片付けられたのを確認すると、すかさずミサイルチームの一斉射撃で残りの海賊船を掃討していく。
「遊撃チーム突撃!」
「おう!」
好機とみたアドンが突撃の号令を出すと、遊撃チームの戦闘船がアフターバーナーを起動して敵陣に突っ込んでいく。
「チェスト! これで12体目じゃっ!」
二刀の斬鑑刀で大型宇宙船を両断する源三郎。
「オラオラオラオラ! 13! 14! 15っ!!」
リョーマが操る拳のグラップラーシップが海賊船やドローンを殴り潰していく。
「ふっ! 17、18、19、20。まだまだいきますよ」
隼人が操縦するドリルのグラップラーシップが複数のドローンを纏めて粉砕していく。
「それそれ!」
オートタレットで的確にダメージを蓄積させて落としていく彼方。
「攻撃ドローン展開します」
ラージサイズの戦闘用ドローンを展開して、攻撃を行う鈴鹿。
「スォームミサイル全弾発射! 気持ちいい!!」
ミサイルを発射して次々と命中爆発することに興奮を覚え始めるノエル。
「このまま押しきれ!!」
ウェーブ2の海賊艦隊を押し返していくプレイヤー側。
特に自爆特攻が有効打撃とわかったのか、死に戻りしては安価なテック1宇宙船で特攻するプレイヤー達。
「うーん、あれ下手したら規制されないかな?」
最後は一番最初に貰える初期船でゾンビアタックを繰り返すプレイヤーが数多く、バランス的に大丈夫かと心配になる源三郎。
「敵艦隊の全滅を確認。ウェーブ2終了です!!」
「皆さん次のウェーブ3で最後です。気を抜かず頑張りましょう!!」
「ウェーブ3に備えて補充と休憩してください。工作チームは残りの機雷を全部使って!」
ウェーブ2の艦隊を全滅させ、インターバルに入るとプレイヤー達はステーションに戻った。
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