第54話 お爺ちゃん、大規模戦闘に参加する。その1
「皆さん今晩はっ! お昼は急用で配信できなくてごめんなさい」
時刻は夜21時、彼方達がログインして早速配信を始める。
「もうすぐユーザーイベントの大規模戦闘だけど凄く楽しみだね」
「お誘いいただいたウォーモンガーカンパニーの皆様ありがとうございます」
「集合場所になってるステーションへ向かいます」
配信視聴者の人達と雑談しながら源三郎達は大規模戦闘が発生する星系のステーションへと向かう。
「ひゃー、凄い人の数。これ皆大規模戦闘参加者かな?」
「あっちこっちで私たちみたいに配信している人たちもいるね」
集合場所にもなってるステーションのメインロビーには数多くのプレイヤーが集まっており、道を進むのも一苦労だった。
ノエルが言うようにロビーの端々では配信者と思われるプレイヤー達がカメラドローンに向かってレポートしていたり、パフォーマンスしている。
「大規模戦闘に参加する予定の人は、大規模戦闘と書かれたチャットルームに入室してください!」
「チャットルームに入ってない方は大規模戦闘とは無関係の人として扱います!!」
源三郎達が大規模戦闘イベントの参加者の数に右往左往していると、ウォーモンガーカンパニー所属のプレイヤー達が大規模戦闘イベント用に開設したチャットルームに誘導するように叫んでいる。
「うわっ!? ルーム入室者がもう100人も越えてるよっ!?」
「人数多すぎてチャット内のログも滝のように流れていってる」
「これイベント大丈夫なんでしょうか?」
チャットルーム内も入室者の数が多く、挨拶やら雑談やらでチャットログが滝のように流れてコメントを確認できない状態だった。
鈴鹿が呟くようにこれでイベント進行できるのかと源三郎も心配していたが、大規模戦闘イベント開始30分前に突然チャットルームのコメントが止まる。
「あれ? チャットにコメントを書き込めないぞ?」
「バグかな?」
源三郎達の周囲にいたプレイヤー達もチャットに書き込めないことを周囲に話し合って不安そうな表情になる。
「皆さんこんばんは。ウォーモンガーカンパニー代表のアドンです。これから大規模戦闘の流れを説明するのでログが流れないようにチャットルーム管理者権限で皆様のコメント書き込みを一旦禁止にしました」
チャットを書き込めないことに戸惑っていると、今回の大規模戦闘の主催者であるウォーモンガーカンパニー代表のアドンの書き込みコメントが表示される。
「今回の大規模戦闘は宇宙海賊の大群がステーションに襲撃をかけてきます。全部で3ウェーブあり、ウェーブ3でラスボスが出てきて、それを倒すと大規模戦闘は終了です」
アドンは大規模戦闘の大まかな流れを説明する。
「今回初めての大規模戦闘なので私も皆様も勝手がわからないと思いますが、少しでも勝率をあげるためにロールでグループ分けし、可能な限り各グループのチャットリーダーの指示にしたがってください。まずはドローンで回復や妨害などができるプレイヤーはウォーモンガー(ドローン)と書かれたチャットに入室してください」
アドンはグループ分けしてそれぞれのチャットルームに入室させていく。
グループ分けはドローンを使ったヒールやクラウドコントロールチーム、ミサイルなど範囲攻撃が得意なアタッカー、バリアなど防御が得意なタンカー、一番入室者の多い様々な武器で戦う遊撃チームの4つにわかれていく。
「それでは最後に撃沈されても泣かない、負けても腐らない、トロールプレイ死すべし慈悲はないの精神で行きましょう! では大規模戦闘起動します!」
グループ分けが終わるとアドンは大規模戦闘の開始宣言をして、イベントを起動する。
するとステーション内が赤い非常灯だけになり、エマージェンシーコールが鳴り響く。
「緊急警報、緊急警報! 当ステーション近域で大規模のワープアウトを確認! 海賊の艦隊による襲撃です!!」
ステーション内に緊急警報と海賊が襲撃してきたことを知らせる放送が流れる。
「ほう、臨場感あるのう」
「他の大規模戦闘だとどんな感じなのかな?」
「当ステーション内にいるフリーパイロットの面々に緊急依頼、海賊から当ステーションを防衛してください」
彼方と源三郎がイベントの演出に感想をのべていると目の前に防衛戰ミッションのウィンドが表示される。
ミッション内容を読むと、このミッションを受けないとインスタントエリアの大規模戦闘に参加できないようだ。
「皆さんミッションを受けたら船に乗って出撃してください。可能な限り各チャットルームの管理者の指示にしたがってください」
アドンの指示に従い源三郎達がミッションを請け負いハンガーから自分達の船に乗って出撃する。
「おおっ! グラップラーシップもおるの!」
源三郎が宇宙空間に出撃すると、自分とは違うタイプのグラップラーシップを幾つか見つける。
源三郎と同じように斬鑑刀を持つ機体、アームの先端がドリルになってるのもいれば、殴るつもりなのかでっかい握り拳になってるグラップラーシップもあった。
「これは壮観じゃの!」
ステーションから次々と大小様々な宇宙船が飛び出し思い思いに飛び回る。
まだみたこともない機体もあれば、同じ機体でも装備コンセプトで違いを出している物、中にはペイントツールやデカールで痛宇宙船を作ってるプレイヤーもいた。
「遊撃チームはこちらの座標に集まってください」
源三郎が他のプレイヤーの宇宙船を見て回っていると集合の号令が入り、座標へ向かう。
他のプレイヤー達も各自のロールに合わせたチーム座標に集まっていく。
「第一陣がもうすぐきます。まずは長距離攻撃を持ってる船はチャージを開始してください」
「ドローンチーム、サポートドローン持ってる人は展開してください」
「ミサイルチームは長距離攻撃のあと残った海賊船を狙ってください」
「タンカーチームは敵の攻撃を受けて凌いで」
「遊撃チームはミサイル攻撃で生き残ったのを各自で攻撃」
チャットルームでは各チームリーダーから指示が飛び回り、長距離攻撃を持った宇宙船は武器を展開したり、エネルギーチャージを開始する。
ドローンチームの船からは次々とドローンが射出されていき、まるで宇宙の海を回遊する魚の群れのように見えた。
「海賊第一陣来ました!」
「長距離攻撃チーム撃ち方はじめっ!!」
海賊艦隊の第一陣が船のレーダー範囲内に現れると、ウォーモンガーカンパニー代表アドンの号令にあわせて長距離攻撃を持ってる宇宙船から次々とビームやマテリアル弾が発射され、命中した敵海賊艦隊から爆発エフェクトが発生する。
「敵艦隊命中するも損害は軽微! 反撃きます!!」
「タンカーチーム前へ! 各自回避行動!!」
「ドローンチーム、ジャミングお願いします!!」
先手をとられた海賊艦隊から反撃のレーザーやミサイルなどが撃ち込まれる。
タンカーチームが前にでバリア出力を上げたりして攻撃を防ごうとし、ジャミングドローンがミサイルを狂わせて明後日の方向に飛ばしていく。
それでもカバーしきれない場所にいたアタッカーチームの宇宙船に攻撃が命中し、テック1戦闘船で大規模戦闘に参加していた宇宙船が撃沈していく。
「ヒーラー! 負傷船の治療と撃沈した船の蘇生を!!」
「長距離チーム、チャージなして射ちまくって!!」
チャットルームは慌ただしくなり、指示や救援を求むコメントが次々と書き込まれていく。
「蘇生は時間かかるのでステーションに戻って別の船できてください! 他に船がないならサルベージサービスで船を回収して急いで戻って!!」
「ミサイル距離到達」
「ミサイル撃ち方はじめっ!!」
敵味方双方から無数のミサイルが発射されて軌道を描きながら双方に到達して爆発していく。
ウェーブ1から激しい戦闘が始まった。
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