第53話 お爺ちゃん、アノマリーで時間を潰す


 結晶生命体との戦闘の後もTR3の戦闘ミッションを幾つか受けてクリアしたりしている内に昼食の時間になり、源三郎達は一旦ログアウトする。


「お爺ちゃんごめーん、学校のお姉様達からお茶に誘われちゃってね、大規模戦闘まで私達ログインできないかも」


 源三郎が自宅で昼食を済ましていると、携帯に彼方から連絡が来る。

 彼方達が通っている学校の先輩からきたお誘いに参加するから大規模戦闘が始まるまで午後の配信を中止する内容だった。


「わしのことは気にせんでいいから楽しんでおいで。また金策でもしてカンパニー資金貯めておくよ」

「お爺ちゃんありがとー! あ、迎えのハイヤーが来たから切るね、バイバーイ」

「やれやれ、慌ただしいのう………」


 孫娘が元気に育って友人達と仲良くしてると思うと源三郎の目尻は下がって笑みがこぼれる。


「少しアノマリーでも探索してみるかの」


 洗い物を終えてまたギャラクシースターオンラインにログインした源三郎は幾つかアノマリー探索ミッションを幾つか受けて探索に出る。


「一発目はアダマンティウムの鉱床か………今後の生産とか考えると採掘用の船も持つべきかのう。まだ量子ストレージには余裕あるしの」


 一回目のアノマリー探索の結果はアダマンティウム鉱床の発見だった。

 採掘にはあまり力をいれてなかった源三郎はこれを機会に採掘用の宇宙船の購入を視野に入れる。


「この座標は記録して、残りのアノマリー探索も解決していくかの」


 源三郎はアノマリー探索を続けるが、はずれ枠の宇宙空間に漂う貨物コンテナを幾つか見つけ、クレジットを回収していく。


「お? またアダマンティウム鉱床かのう?」


 最後のアノマリー反応エリアにたどり着くと、そこはアストロイドベルト帯だった。

 源三郎はこれまでの経験からまたアダマンティウム鉱床が見つかると思い、期待しながらアノマリー反応エリアをスキャニングしてイベントを特定しようとする。


「ユーザー、彼処の小惑星から異常な反応があります。鉱石系のスキルがあれば詳しくわかるのですが残念ながら解析不能です」

「むう………気になるのう」


 アノマリー反応の元を特定が出来たが、肝心のスキルが低くてアノマリーの正体がわからない。


「せっかくだし採掘用の船と鉱石系のスキル覚えるかの」


 同じように座標を記録すると源三郎はバベルステーションに帰還する。


「お、メタボーマンさんがログインしておるな」


 源三郎はフレンドリストを確認して、今北産業のメタボーマンがログインしていることを確認すると、メッセージを送る。


「よう、源三郎さん。大規模戦闘に参加するんだって? 応援してるよ」


 メタボーマンにメッセージを送ると、すぐにビデオチャットルームに招待され、入室すると今夜の大規模戦闘について応援される。


「ありがとうございます。実はわしも採掘に手を出そうとか思ってアドバイス貰えないかと」

「お、源三郎さんも採掘やるの?」

「ええ、今後の生産とか考えると材料揃えておこうかと。あとアダマンティウムも掘りたいです」

「あー、もっと早くいってくれたら俺のお古売ったんだけどな………惑星開拓始めて資金不足になって売っちまった。アダマンティウム掘るならテック3のリーパーだな」


 源三郎が採掘船のアドバイスを求めると、メタボーマンはお勧めの船を紹介してくれる。


「これですか………おお、鉱石圧縮に積載量も凄いし、採掘速度も宇宙船スキルで25%アップは大きいですね」

「デメリットはテック1並の紙装甲、下手にアーマメントで防御力あげるくらいなら、スピード特化でさっさと逃げる。落とされても泣かない精神がいいぞ」


 ステーションマーケットで検索するとバベルステーションが元は採掘ステーションと言うこともあってリーパー本体が売っていた。

 宇宙船の性能をみる限りでは採掘だけに関しては値段以上の性能と価値がある。


 ただ、メタボーマンが言うように紙装甲過ぎてアーマメントで防御力あげても付け焼き刃にもならない。


「お勧めのアーマメントはマイニングカッター強化と鉱石用追加カーゴだな。特に鉱石用追加カーゴを限界まで搭載したら、たった一回でアステロイドベルト帯の採掘用の小惑星全部掘り尽くせるぞ」

「それは凄いですのう………」


 源三郎はメタボーマンのアドバイスに沿ってテック3採掘船リーパーとアーマメント装備、それから採掘に必要なスキルチップを購入していく。


「そういえば惑星開拓始めたと言っていましたが、どんな感じですかの?」

「購入する惑星と、開拓コンセプトしっかり考えないと下手すると赤字だな」


 源三郎はメタボーマンに惑星開拓の感触を質問してみる。


「コンセプトですか?」

「ああ、俺らは大気のない安い惑星購入したんだが、これを仮に宇宙服なしで住める惑星にテラフォーミングしようと思ったらた試算で数兆クレジット、実時間で年単位必要だわ」

「うへぇ!?」


 メタボーマンが試算内容を言うと源三郎は絶句する。


「さすがにそれはしんどいからやらない。ただ、地下資源が豊富なので資源採掘惑星として採掘や加工の施設を設置してる」

「それって普通に採掘するのとどうです?」

「んー………短時間で考えるなら俺が掘った方が効率はいい。けど、燃料さえ確保していれば惑星は24時間365日掘り続けるし、採掘系の研究プロジェクトや施設のアップデートしていったら多分惑星の方がよくなる」

「なるほど」

「さて、俺はそろそろ仕事行くよ。直接みれないけど大規模戦闘頑張ってな」

「時間作って頂いてありがとうございます」


 惑星開拓について話し合っている内にメタボーマンは出勤時間になったようでログアウトする。


「さて、掘りに行ってみるかの」


 源三郎は早速購入したリッパーで最初に見つけたアダマンティウム鉱床がある小惑星へと向かう。


「おおっ! 掘れる掘れる!!」


 初期の船では全く掘れなくて歯がたたなかったアダマンティウム鉱床をガリガリと掘っていき、カーゴにアダマンティウムの鉱石が運び込まれていく。


「ついでに周りも掘っていくかの」


 ものはついでとばかりに源三郎はアステロイドベルト帯にある鉱床反応がある小惑星を次々と掘っていき、あっという間に小惑星を消滅させていく。


「この船、ゴールデンタイムなんかに使ったら顰蹙買いそうじゃのう………」


 あまりの採掘速度の早さに、正式サービス初日の混み具合でこの船を使ったらと妄想する源三郎。


「採掘はなるべく人のいない時間帯にするかの。鉱石系スキルもセットしたし、アノマリー解析できるか試してみるかのう」


 源三郎はメタボーマンに会う前、解析出来なかった小惑星の正体を探りに行く。


「ユーザー、小惑星内部から生命反応があります」

「なんじゃと?」


 最初はスキルが低くてアノマリーの正体がわからなかったが、今回は必要スキルを満たしているのか、サポートロボットの台詞が違う。


「ふーむ………慎重に調べてみるかの」


 源三郎は離れた距離から何度も小惑星をスキャンして、生命反応の正体を探ろうとする。


「げっ! 結晶生命体じゃないかっ!!」

「下手に小惑星に刺激を与えたら危なかったですね」


 何度か小惑星にスキャンをあてると、小惑星に擬態して休眠中の結晶生命体の群れの塊であることがわかった。


「今回は運がよかったが、戦闘の可能性もあるアノマリーも増えてきそうじゃな」


 源三郎は触らぬ神に祟りなしと呟きながら休眠中の結晶生命体から離れていく。


「ふむ、そろそろ彼方達も帰ってくる頃かのう? 準備しておくか」


 源三郎はテック3戦闘用グラップラーシップ【ヘカトンケイル】に乗り換えると、ウォーモンガーカンパニーが主催する大規模戦闘の集合場所近くのステーションへと向かった。

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