第52話 お爺ちゃん、大規模戦闘に備える


「皆さん、おはようございまーす!」

「土曜日の朝からギャラクシースターオンラインやっていくよ」

「お昼で一旦抜けますが、お付き合いのほど宜しくお願いします」


 翌日の土曜日、朝の10時から彼方達はギャラクシースターオンラインの配信を始める。


「今晩の大規模戦闘に備えてテック3宇宙船を買うんだけど、その前にこれまでこつこつ研究プロジェクトに投資してたのが幾つかアンロック完了していたりするので、それをご紹介します」


 彼方はそう言ってカンパニー管理画面を配信カメラに映す。


 これまで源三郎達がミッションやストーリークエストのミッションから天引きされたカンパニー税金がかなり貯まっていたのでそれを使ってさまざまな研究プロジェクトをアンロックしていた。


「皆にお勧めなのはこれかな? 【設計の標準化】と言って、効果はカンパニーメンバーが宇宙船の購入値段と製造時の必要素材数が割引されるの」

「攻略サイトでも可能な限り最初にアンロックしろっていってるよね」

「わしもヘカトンケイル作る前にこれが欲しかったのう」


 彼方が1つ目のアンロックされた研究プロジェクトを紹介する。


「交易やるなら必須と思える研究プロジェクト【宇宙交易会社1レベル】、レベルごとに範囲が決まってるけど、隣の星系の交易品の相場が見れるよ」

「レベルが高くなるほど研究完了時間が長くなるみたいだね」

「各ステーションにカンパニーの支店を作って宇宙交易会社をアンロックすればかなり交易が捗りそうですね」


 次にノエルが宇宙交易会社と言う研究プロジェクトの効果を説明する。


「それから次にアンロックしたのは【強化外骨格】宇宙服にパワーアシストつけて地上戦闘時の近接攻撃力と防御力が上がります」

「これはわしには嬉しいのう」

「お爺ちゃん、地上戦では近接武器がメインだもんね」


 今度は鈴鹿がアンロックした強化外骨格について説明し、源三郎がうんうんと頷く。


「4つ目は異星生物多様性研究、カンパニーメンバー全員異星生物スキルがなくてもレベル分、現地のクリーチャーのデータがわかるようになるぞ。将来スキル枠で悩む時に助かるかもしれんの」

「注意して欲しいのは元々プレイヤーが所持してる異星生物スキルには加算されないからね。」

「さすがにスキルチップに加算されたらバランス崩れちゃうもんねー」


 4つ目のアンロックされた研究プロジェクトを源三郎が説明し、彼方とノエルが補足を入れる。


「今回アンロックしたのはこの4つ、まだ研究中のもあるからまたアンロックされたらお知らせするね」

「それでは【設計の標準化】で少しお安くなったテック3宇宙船を買いに行きます」

「購入したらお披露目もするから、少し待っててね」


 彼方達がそう言うとステーションマーケットでテック3の戦闘用宇宙船を購入していく。


「それじゃあ私からお披露目するね、私が購入したのは【ハーヴィンジー】と言うオートタレットを多数搭載した突撃戦闘機だよ」


 彼方が購入した宇宙船は一言でいうとクワガタみたいな形の宇宙船だった。

 合計10門のオートタレットが360度の範囲に対応しており、敵陣に突撃してタレットで隊列を乱すと船の説明テキストに書かれていた。


「アーマメントはオートタレットの攻撃範囲拡大と射撃レートアップ、あとバリアコンデンサで回復力アップとアフターバーナーをつけたよ」


 配信画面ではハーヴィンジーの各種能力値が表示されており、同じくギャラクシースターオンラインをプレイしている視聴者が性能の品評会的なことをしている。


「次は私。【ゴーラム】と言う船でスピードをは遅くなったけど防御力とミサイル火力が高くなったよ。あと宇宙船固定のスキルでバリアが強固されてる」


 続いてノエルが購入したのはエイの形をした宇宙船で前の船より鈍足になったが、防御力が強化され、ミサイルランチャーの搭載数も増えた。


「ミサイルは一発の威力は弱いけど、数で勝負するスォームタイプ。アーマメントでミサイルロック距離、範囲数、速度を限界まで強化したよ」


 彼方に習ってノエルもゴーラムの各種能力値を配信画面に表示して視聴者達の品評を受ける。


「最後に私ですね。私が購入したのはドローン戦闘特化の【ニム】です。2機しか展開できませんがラージサイズの強力なドローンを使えます」


 鈴鹿市が購入したのはフルフェイスヘルメットみたいな形のドローン操作特化宇宙船で、テック3から使用可能になるラージサイズドローンを他の船だと1機のところ同時に2機扱える。


「アーマメントは全体的にドローン操作関連です。状況に応じて展開するドローンを変更します」


 鈴鹿も宇宙船の各種能力値と搭載しているラージサイズドローンの種類を配信画面に表示する。

 コメント欄では特にラージサイズドローンが話題になり、他のドローン使いのプレイヤーもニム買うか検討し始める。


「それじゃあ、新しい船の性能試しに戦闘ミッションを受けるね。あ、珍しい戦闘ミッションがあるよ!」

「結晶生命体討伐?」


 バベルステーションに戻った彼方達は端末のミッションボードからTR3戦闘ミッションの1つを指差す。


 ミッション内容はアステロイドベルト帯に徘徊する結晶でできた宇宙空間を遊泳する生命体を倒せと言うもの。


「なかなか報酬もよいのう」

「知らない敵ですから気を付けないといけませんね」

「面白そうだし受けようよ」

「試しにこのミッションだけ受けるね」


 これまでは戦闘ミッションでは海賊やゴブリンと言う野生化したドローンがメインだったので、物珍しさもあって彼方は結晶生命体の討伐を請け負い、目的地であるアステロイドベルト帯へと向かう。


「あれ? いない?」

「クエストマーカーはここですけど、レーダーに反応はないですね」

「探さないといけないのかな?」

「取りあえず敵の規模や情報もないから固まって動かんか?」


 源三郎達は目的地であるアステロイドベルト帯に到着するが、肝心の結晶生命体がどこにもいない。


 これまでの戦闘ミッションでは目的地にたどり着くとミッション対象が必ずいたのに、今回はレーダーにも反応がなく、配信視聴者もバグかと疑惑を抱く。


「キャアアアーッ!?」

「こっ、攻撃じゃとっ!?」

「え? レーダーには反応ないのに、どこからですかっ!?」

「あ、あそこ!!」


 結晶生命体を探して先頭を進んでいた彼方が突如攻撃を受け、バリアにダメージが入る。


 突然の襲撃に浮き足立つ源三郎達。

 視界にもレーダーにも敵の反応がなく、戸惑っていると、ノエルが小惑星のひとつにミサイルを撃ち込む。


「擬態っ!?」

「レーダーにも映らないとかチートじゃん!!」


 ミサイルを撃ち込まれた小惑星は爆発の衝撃でバラバラになったかと思うと、欠片が不規則な軌道を描いて攻撃を仕掛けてくる。


「うわっ、攻撃力たかっ!?」


 ミサイルを撃ち込んだノエルのゴーラムに向けて結晶生命体の体から光線が放たれてゴーラムのバリアを削る。

 そのダメージ量をみてノエルは結晶生命体の火力の高さに驚く。


「おかえ───うわわっ!?」


 奇襲を受けた彼方がレーザー系のオートタレットで反撃するが、レーザーが跳ね返ってさらにバリアにダメージが入る。


「結晶生命体はレーザー系ダメージを反射するようです! ミサイルや彼方のお爺さんのようなレールガンや斬艦刀みたいな物理のみ、ダメージを受けるようです」

「それ早くいって~!!」


 異星生物スキルを育てていた鈴鹿が結晶生命体のデータを見破れたようで注意喚起する。

 レーザー系攻撃しか持ってない彼方は悲鳴をあげながら結晶生命体から逃げて距離を取る。


「わしの出番じゃな!」


 源三郎はグラップラーアームを起動して斬艦刀を抜刀して結晶生命体に近づく。


「チェスト!!」


 レールガンのオートタレット、ミサイルランチャー、斬艦刀で結晶生命体を粉砕していく。


「宇宙生命体なのでジャミングが通用しないので回復をメインにします」


 鈴鹿の攻撃用ドローンもレーザー攻撃で使えず、ジャミングドローンも生物には意味がないので、後方に下がってラージサイズのリペアドローンを射出して彼方の機体を修理する。


「ミサイルロック完了! 弾けろーっ!!」


 ノエルのゴーラムからミサイルが飛び出し、さらにミサイルの先端が割れたかと思うとスォームミサイルの名前に相応しい小型弾頭がばらまかれて、面で結晶生命体を破壊していく。


「たーまやー!!」


 視界いっぱいに広がる無数の爆発エフェクトを見たノエルが思わず笑いながら叫ぶ。


「オーバーキル気味だね」


 爆発が収まると結晶生命体だけでなく、周囲にあった無数の小惑星すら破壊されてデプリとなって漂っていた。


「ミッションクリアしたけど、私達いいところなかったなー」

「TRが上がると相性とか考えないといけない敵が出てくるようですね」


 今回活躍できなかった彼方と鈴鹿がそんな話をしていた。

 

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