第51話 お爺ちゃん、ウォーモンガーカンパニーの代表と話す
「お爺ちゃん、待ち合わせ場所はこっちのバベルステーションでいいの?」
「うむ、先方のウォーモンガーカンパニーの代表さんがわざわざこっちにきてくれるそうだ」
学校が終わりギャラクシースターオンラインにログインした彼方達と合流した源三郎はタスケン星系のバベルステーションのロビーで人を待っていた。
「源三郎さんこんばんは、お待たせしました」
「お、ペロペロさんこんばんは」
バベルステーションのロビーで彼方達と今後の配信について話し合っていると、デューティーミッションで一緒になったウォーモンガーカンパニーのペロペロさんと、アドンと言う名前が表示されたもう一人ゴリマッチョなスキンヘッドの黒人キャラの人物が待ち合わせ場所にやって来た………が、なぜか黒人マッチョのキャラは挙動不審でペロペロに引っ張られて連行されている。
「初めまして、フリージアカンパニー代表の彼方です。えーっと、そちらがウォーモンガーカンパニー代表のアドンさん?」
「そうです。おら、挨拶しろよ」
「あ、あのっ! おひゅっ、ふ、ふひひ………みっ、見てます! ふひっ」
「???」
彼方が軽く頭を下げて挨拶すると、ウォーモンガーカンパニー代表のアドンは何故か緊張した様子で噛み噛みで意味不明な発言をして、彼方が苦笑を浮かべている。
「はぁ………すいません、兄は彼方さんのファンらしくて緊張しているんです。先ほどの見てますもストーカー的な………ではなく、とにかく配信見ていると言う意味です」
グダグダな空気にペロペロは頭を抱えて深いため息をついて、アドンが彼方の配信チャンネルのファンだと伝える。
ストーカー疑惑に関しては否定も肯定もしなかったのが源三郎には気になった。
「あ、そうだったんですか! チャンネル視聴ありがとうございます。これからも応援してくださいね」
「これからもご視聴よろしくお願いします」
「ゲーム内だけどリアルチャンネル視聴者に会えた」
彼方はペロペロの説明を聞いて納得したのかいやがる素振りも見せずに笑顔でアドンに挨拶する。
その後ろで鈴鹿やノエルがリアルファンに会えたことを喜んでいる。
「はっ、はひっ! お、応援しまひゅ!! スパチャも限界………いや、借金してでも続けます!!」
「ええっと………私生活に無理のない範囲でお願いしますね」
アドンは興奮した様子で鼻息荒く彼方のチャンネルに貢ぐ発言をし、彼方が苦笑しながらやんわりと注意をする。
「あー、借金しようとしたら俺が阻止するから」
「そういえば兄とか聞こえたがリアル兄弟かの?」
「ああ、リアル兄貴だ。不本意ながら」
彼方とアドンのやり取りを見ていたペロペロは力が抜けたようにその場にしゃがみこんでなげやりに答える。
源三郎は先ほどの会話で聞こえた兄と言う単語について質問すると、ペロペロは肯定する。
「兄貴は女慣れしてないオタクだと、思ってシカトしてくれ。取りあえずコラボについて話し合おうか」
「彼方さんに全部任せます」
ペロペロが空気を入れ替えようと手を叩いてコラボについて話し合おうとすると、アドンがキリッとした顔で開口一番全部任せると発言する。
「えーっと………」
「もう、それでいいわ。俺らは全然収益化してない趣味チャンネルだし、チャンネル登録者も二桁行けば御の字レベルの過疎チャンネルだから問題ない」
彼方が助けを求めるようにペロペロに視線を向けると、ペロペロはもうどうにでもなれと投げ槍な態度で彼方の配信チャンネルに任せることにしていた。
「じゃっ、じゃあ大規模戦闘の配置について話し合いませんか?」
「あっ、安心してください! 彼方さんには俺が指一本触れさせません!!」
「よし、お前もう黙ってろ」
彼方が大規模戦闘の配置について質問するとアドンは興奮した様子で答え、ペロペロが目が笑っていない笑みを浮かべてアドンを黙らせようとする。
その後はペロペロと彼方があれこれと話し合い、配置など決めていく。
「では明日の土曜日22時からお願いします」
「はい、明日はよろしくお願いします」
段取りなど全部決まると彼方とペロペロが握手をする。
「アドンさん、蚊帳の外でしたね」
「鈴鹿ちゃん、お口チャック」
話し合いを見ていた鈴鹿とノエルがそんな話をしている間、アドンは彼方と握手をしているペロペロにガチャエモーションの血の涙を流しながら睨んでいた。
「俺が代表なのに」
「兄貴がポンコツ過ぎてダメだから弟の俺がフォローしてんだよ、他のカンパニーとの話し合いもあるんだから行くぞ」
アドンは恨みがましくペロペロにウザ絡みするが、ペロペロは耳元を飛び回る蚊を追い払うような仕草をしながら手伝ってくれる別のカンパニーとの会談に向かう。
「アドンさん明日はよろしくお願いします。私のチャンネル、これからも応援してね」
「はいっ! ずっとずっと応援しまひゅ!!」
彼方がリップサービスも込めてアドンに話しかけると、アドンは直立不動の最敬礼の仕草で返事をして、ペロペロにドロップキックされててつれていかれた。
「個性的な人だったね」
「本当にね」
「大規模戦闘楽しみです」
「大規模戦闘に備えて、三人の船をテック3に変えるかの」
彼方達三人はウォーモンガーカンパニーの二人を見送り、船の強化に入る。
「それじゃあ配信しながらそうしようか」
「取りあえずウォーモンガーカンパニーの人達待ってる間にステーションとギャラクシーマーケット覗いて、テック3の船は見つけたから、あとは代金分お金稼ぐだけだね」
「彼方のお爺さん、何かいい金策ありませんか?」
「ふーむ、ちと確認とらんといかんので待ってくれるかの?」
金策を聞かれた源三郎はフレンドリストを確認して、今北産業のYTがログインしているか確認すると、輸送マラソン公開していいか確認のメールを送る。
しばらくすると、YTから経済活性化のために広めて欲しいと言う返信がきた。
「取りあえずわしがフレンドから教えてもらった初心者向きの輸送マラソンからでよいかの」
「それ配信で公開してもいいの?」
YTから承諾をもらった輸送マラソンのことを話すと、彼方が不安そうに聞いてくる。
「承諾はとっておる。このマラソンをみんなにやってもらってお金稼いでカンパニー投資とかでゲーム内経済活性化して欲しいそうじゃ。他のMMOみたいな狩場ブッキングとかトラブルもないしの」
「なるほど、じゃあそれから始めようか!」
源三郎が公開の理由を述べれば彼方も納得して配信の準備に入る。
「皆さんこんばんは、彼方です! 今日は配信が遅れてごめんなさい」
「皆様ごきげんよう、鈴鹿です」
「やっほー、ノエルだよ」
彼方達が配信を開始し、いつもよりも遅れて公開したことを謝罪すると、心配するコメントが書き込まれていく。
「トラブルじゃないよ。実はね………今度ウォーモンガーカンパニーさん主催の大規模戦闘に参加することになって、配信とかの話し合いで遅れちゃいました」
「大規模戦闘と言うのは、大勢のプレイヤーが協力して大軍のウェーブを撃破したり、レイドボスを倒したりするコンテンツです」
「今回のメンテで修正されて、早速明日の22時からやるみたいなの」
彼方達はウォーモンガーカンパニー主催の大規模戦闘イベントの告知をする。
「でもって、今日は大規模戦闘に備えて船を買い換えたいんだけどお金がなくて………ちょっ、ちょっと待って! スパチャはいいからっ! そう言う意味じゃないから待って~!!」
彼方がお金がないと発言すると大量のスパチャが飛んできて、彼方はあたふたしながらスパチャをやめるように呼び掛ける。
因みに高額スパチャをしたアカウントの中にはアドンの名前もあった。
「気持ちは嬉しいけど、自分達で稼ぎたいからね。えっと、返金は出来ないから皆さんのスパチャはチャリティーなどの寄付に回します」
「今回は彼方のお爺さんが初心者向けの金策を教えてくれるので、それを配信で公開説明します」
「公開しても問題ないって言ってたよ。ね、彼方のお爺さん」
「うむ、輸送ミッションを繰り返すだけじゃから他のMMOであるような狩り場の取り合いとかは起こらん。皆儲けてカンパニー作って投資とかしてゲームを盛り上げて欲しい」
金策を公開というと時給が下がらないかとか心配のコメントがあったが、源三郎が公開する理由を伝えると納得し、逆に公開はよと催促される。
「やり方は簡単じゃ、初期輸送船のホエールに拡張コンテナ2つつけて以下のミッションを受けて往復するだけじゃよ」
「それじゃあどれだけ儲かるか試してみるね」
源三郎の解説と同時に彼方達が輸送船のホエールとアーマメントの拡張コンテナを購入してミッションを開始する。
「往復で一回30万クレジットももらえたよ」
「因みにグルーブを組むと報酬にボーナスがつくし、会計など関連スキルを持っておればさらに増えるぞ」
お試しで彼方達が輸送ミッションを1往復すると、スキルとグルーブボーナス含めて1人30万クレジットの報酬を得られる。
「ある程度資金を集めたら今度は貨客ミッションじゃな」
「そんな金策もあるんだ」
源三郎はチャットルームで教えてもらった貨客ミッションのやり方も伝えると、コメント欄は大いに盛り上がる。
「あ、もうログアウトしないといけない時間だ」
「儲かりすぎて船買うの忘れてた」
「船の購入は明日でよろしいかと」
「夜更かしは認めんぞ。そう言う約束で遊んでいるし、わしが息子夫婦に怒られる」
彼方が現実時間に気づいて慌てたようにノエルと鈴鹿に声をかける。
配信のコメント欄では夜更かし配信延長を求める越えもあったが源三郎が注意する。
「私達の新しい船のお披露目はまた明日。カンパニー資金も貯まってきたからまたプロジェクト投資の報告もするね」
「それでは皆さんまた明日。チャンネル登録と高評価宜しくお願いいたします」
「おやすみー」
最後にスパチャのコメント返しと挨拶を終えると源三郎達はログアウトした。
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