第50話 お爺ちゃん、お誘いを受ける


「いやー、やっぱデューティーミッションは儲かるな!」

「ソロモン自由同盟領域まで遠出しないといけないがな」


 そろそろ昼食の時間だったのでデューティーミッションを切り上げてもよりの居住地拠点でドロップ品の山分けをしていた源三郎達。


「取りあえず欲しいアーマメントの分とか抜いて各自の報酬はこの値段だ」


 売買スキルの一番高いペロペロが全員のドロップ品を売却した分を渡していく。


「できれば午後もデューティーミッションやりたかったな」

「塾や習い事疎かにしない約束だから仕方ないさ」

「正直ずっとゲームしていたい」


 ウォーモンガーカンパニーの3人はリアルでは同じ学校の友人らしく、今日は創立記念日とかで朝からログインしていた。

 午後からはリアルの用事でログインできないようでお互いに愚痴っている。


「あ、そうそう、源三郎さんは土曜日の夜22時空いてる?」

「うん? 孫娘の配信を手伝う予定じゃが………何かあるのかの?」


 ペロペロが源三郎に声をかけると、源三郎は顎髭を弄りながら答える。


「俺らのカンパニーで大規模戦やる予定でさ、ノラだとどんな奴らくるかわからないから、なるべく顔見知りで集めたいんだ」

「ふーむ………それは配信してもよいかの?」


 たかやんが源三郎を誘った理由を述べて、源三郎は顎髭を弄りながら孫娘の彼方がやってる配信の題材になるのではと質問する。


「カンパニーマスターに聞かないといけないけど、多分いけると思う」

「こっちも配信やる予定だし、いっそコラボするか?」

「コラボになるとこっちも確認せんといかんのう」


 コロッケそばとペロペロは配信コラボを提案してくる。


「取りあえず源三郎さん、おれらとフレンド登録してさ、詳しい話はお互いのカンパニーマスターがログインしたらで」

「ふむ、また後での」


 お互い昼食でログアウトしないといけない時間になったので、コラボ配信はまた後で話し合うことにと言うことになった。


「彼方にメッセージ送っておくかの」


 一旦ログアウトして現実に戻った源三郎は昼食の用意をしながら彼方にメッセージアプリでコラボ配信案件を伝える。


「返事早いのう………」


 彼方達も昼休みだったのか1分もかからずに返事が返ってくる。

 彼方達もコラボには前向きのようで、帰宅したらすぐに話し合いたいと返事に書いてあった。


「こっちの船を見ていくか」


 昼食を終えて洗い物を片付けると源三郎はまたギャラクシースターオンラインにログインして、ウォーモンガーカンパニーのペロペロに返事のメール送り、ソロモン自由同盟で売られている宇宙船を覗く。


「ふむ………テック2の探索専門船タロンか」


 端末でステーションマーケットを物色していたら、ソロモン自由同盟で作られていると言う設定の探索専用宇宙船を見つけた。


「スペックはガチで探索特化じゃな」


 船のスペックを調べると、船事態に探索関連のボーナスがついており、探索系のアーマメントをつけるスロットも豊富だった。

 反面スピードはテック1宇宙船よりましだが遅く、装甲とバリアの数値は最低で武装スロットがない。


「探索系アーマメントも付けて500万か………買うか」


 デューティーミッションで財布に余裕があった源三郎はタロンを購入すると早速アノマリー探索ミッションを受けて宇宙に飛び立つ。


「遅いな………」


 探索専用宇宙船タロンの見た目はタワータイプのデスクトップパソコン。

 ヘカトンケイルのスピードに慣れている源三郎からするとタロンは鈍く、ストレスを感じる。


「スキャン速度は3倍近いな」


 最寄りのアノマリー反応にたどり着くと早速スキャニングを開始すると、解析度を表す%があっという間に100%になる。


「貨物コンテナか………む、アーマメント効果で開けなくても中身が確認できるのか?」


 スキャンを終えると現れたのは宇宙空間を漂う貨物コンテナ。

 いつもならセキュリティスキルでロックをはずさないと中身が確認できないのに、搭載されたアーマメント効果で貨物コンテナに何が入っているか、解錠難易度や失敗すると発動するトラップなどが事前にわかるようになっている。


「中身はクレジットのみか………まあセキュリティ難易度も低いし、船の代金回収しないとのう」


 源三郎は貨物コンテナのロックを解除してクレジットを回収すると、次のアノマリー反応に向かう。


「今度は惑星か。これは期待できるか?」


 次のアノマリー反応があったのは大気のない人が住めない惑星だった。


 惑星上空を周回しながら反応が強い場所を探してスキャンをかける。


「ここか………」


 反応があったのは巨大なクレーターがある場所で、特にクレーター中心部に強い反応がある。


「墜落した宇宙船?」


 しばらく巨大クレーターの中心部を旋回してスキャニングを続けていると解析度が100%になった瞬間、クレーターの中心部に墜落した宇宙船が現れる。


「直接船を調べないといけないのか」


 墜落船が現れると同時にアノマリークエストと言う物が始まりる。クエスト内容は【墜落した宇宙船内部を調べて墜落原因を見つけろ】と言う物で、クエストマーカーも墜落船に向かって延びている。


「うーむ………彼方のためにとっておくか? いや、彼方達もアノマリー探索すれば同じクエスト見つけるじゃろ」


 一瞬源三郎は孫娘の彼方のためにクエストを残しておくかと考えたが、いまでも密輸クエストなど放置しているクエストもあるし、同じクエストを見つけるだろうと思って源三郎は一人でクエストを進めることにした。


「これは酷いのう………」


 惑星に降り立ち、墜落船に徒歩で近づく。

 船は衝突の衝撃で中心部からくの字に折れ曲がっている。


「ほぼ減速せずに地表に追突した模様です。船体が残っているだけで奇跡と言えるでしょう。船の構造はアクセス可能な連邦同盟両データベースに存在しない物質構造です」


 墜落船をスキャンしていたサポートロボットのロボが源三郎に船の素材を知らせてくれる。


「こっから船内に入れるようじゃな」


 船が折れ曲がってできた亀裂から船内に入る源三郎。


「天井はずいぶんと低いのう………」


 墜落が原因か、それとも元々そういう構造なのか船内の天井は異様に低く、源三郎は中腰で内部を探索する。


 「ここがコクピットか?」


 ひいこら言いながら狭い船内を進んでいき、時折見つかる貨物コンテナからクレジットなど、ドロップ品を回収してコクピットと思われるエリアにたどり着く。


「データアクセス、ログを回収中」


 コクピットにたどり着くとロボがコクピットにあった機材にアクセスしてデーターを回収していく。


「データ回収完了」

「あとはログを確認してどの勢力に売ればクエストクリアか………あっけないのう」


 ロボが墜落した宇宙船からアクセスログを回収完了するとクエストが更新される。

 またひいこら言いながら墜落船から脱出してヘカトンケイルに戻ると、ロボが回収したログを確認する。


「墜落の衝撃で殆どのデータが壊れていますが、どうやら発見した船はワープドライブをもたらしたエイリアン文明とは別のエイリアン文明で、ワープではなくFTL走行と呼ばれる独特の移動方法の実験船だったようです」

「FTL走行? どんなのじゃ?」


 データ再生をしたロボが墜落した宇宙船に使われていたテクノロジーを解説する。


「このエイリアン文明はゼノエレメントと呼ばれるレアメタルを利用したダークエネルギーフィールドで光速を越えるスピードになっても相対的な時間の遅れに干渉されない技術を見つけたようです」

「よくわからんが、とにかく凄い技術を見つけて実験したが、ブレーキに失敗して惑星に激突したと?」

「その認識であってます。このデータどちらに売りますか?」

「どちらも値段が一緒なら連邦かのう」


 データの内容を確認すると、ロボはデータの売却先を聞いてくるので源三郎はカンパニーがある連邦を選ぶ。


「ぬおっ!? 1000万単位で報酬が振り込まれたぞ」

「エイリアンオーバーテクノロジーの断片情報が高く評価されたようです」

「今回のアノマリーは大当たりと言うやつか」


 連邦に売却を設定したら大金が振り込まれて驚く源三郎。

 報酬額の内訳をロボから聞いてなるほどと納得していた。


「さて、彼方が帰ってくるまでの間残りのアノマリーを片付けるかの」


 源三郎はその後もアノマリー探索を繰り返すが、墜落船のような大当たりはなく、宇宙空間に漂う貨物コンテナを開けて時間を潰していった。

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