第48話 お爺ちゃん、脱出する



 行方不明になったエイリアン言語学者を探してソロモン自由同盟領域にあるクノックス星系の惑星ゼノスへと降り立った源三郎達。


 同じくエイリアン言語学者を誘拐するためにやってきた海賊を倒し、エイリアン遺跡内を探索している。


「しかしこの遺跡、見た目はファンタジーのダンジョンみたいじゃのう」

「SFチックな機械とかないから余計にそう思うよね」

「そこまで文明が発達しなかったエイリアン遺跡なんでしょうか?」

「エイリアン達にとっても古い遺跡だったとか、ほらパルテノン神殿とかみたいな」


 源三郎が言うようにエイリアン遺跡の内部は石造りで機械など近未来的な物は見える範囲にはない。


「おーい、誰かいるのか? 助けてくれであーる!」

「お爺ちゃん、今の聞こえた?」

「ああ、この奥に誰かいるようじゃな」


 遺跡を進んでいくと進行方向から男性の助けを求める声が聞こえてくる。

 源三郎達は武器を抜いて警戒しながら助けを求める声の方向へと進んでいく。


「おおっ! 誰だか知らないが、天の助けであーる! 我輩をここから助けてくれであーる!!」


 声の方向へと進んでいくと、発掘中と思われる広場に出る。

 遺跡の小部屋の1つにバリアが張られており、そのバリアの向こうに球体フィールドに大の字で拘束されている中年男性がいた。


「貴方がエイリアン言語学者?」

「如何にも! 我輩がエイリアン言語学の権威、ブータニアスであーる! 助けて」


 彼方がフィールドに捕らわれている中年男性を指差して質問すると、ブータニアスと名乗った中年男性は自己紹介をする。


「いったい何があったんじゃ?」

「この遺跡を発掘中に海賊の襲撃を受けたのであーる。我輩は咄嗟にこの部屋に逃げ込んだら偶然にも仕掛けが作動してバリアが張られて海賊の襲撃を防いでくれたのであーる!」


 源三郎が捕らえられている理由を問うと、ブータニアスは何があったか教えてくれる。


「その球体フィールドは?」

「バリアを破れなかった海賊達は一旦諦めて去ったので、解除しようとあれこれ弄っていたらトラップを発動させてしまったのであーる。ほんとまじで助けて」


 ノエルが球体に捕らわれている理由を聞くとブータニアスは視線で自分が弄っていた装置を指しながら状況を話す。


「このバリアをどうにかしませんと、こちらからは何もできないような………」


 鈴鹿が周囲を調べるが、あるのは発掘用の大型採掘カッターや資材ぐらいで、ブータニアスを拘束する球体フィールドを解除できると思われる装置がある場所に移動する手段が見当たらない。


「そこはほら、知恵と勇気と力業で何とかして欲しいであーる」

「クエストが更新されたけど、内容読んでる限りじゃ、この中にあるものでどうにかできるみたいだよ?」

「あ! 彼方のお爺さんが持ってる刀は? バリア無視でしょ?」


 どうしたものかと悩んでいると、ノエルが名案を思い付いたように手を叩いて源三郎の刀を指差す。


「いや、さすがにこれじゃないじゃろ? ドロップしなきゃ詰むぞ、このクエスト」


 それでも物は試しと、源三郎は刀でバリアを斬ってみる。


「ダメじゃ、刀身は通り抜けるがバリアそのものをどうにかはできん」

「ダメか~、いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」


 刀身部分は通り抜けるが、すぐにバリアは復元されて通り抜けるような穴は作れない。


「あのう………もしかして、これを使うのではないでしょうか?」


 バリアをどうにかする打開策がないかと遺跡内をうろうろしていると、鈴鹿が大型採掘カッターを指差して呼び掛ける。


「射出口も遺跡側を向いてますし、なぜか外部から操作できるパネルがついてますし」

「うーん………ダメ元でやってみる?」

「ダメだったらまた考えよう」


 彼方達はそう言うと、大型採掘カッターの操作盤を弄り作動させる。


「きゃっ!?」


 ゴォン!っと勢いよくマイニングカッターレーザーが照射されて大量の土砂や砂ぼこりを巻き上げながら遺跡の地面を貫通していく。


「あ、ほらみてみて! 下から遺跡の中に入れるっぽいよ!!」


 大型採掘カッターのエネルギーがつきると同時に照射を終わり、土に埋もれていた遺跡への侵入通路が現れる。


「これで何とか遺跡内部へ入れそうだね」


 採掘カッターで出来たトンネルを通り抜けて源三郎達は遺跡の内部へと侵入する。


「おーい、早くなんとかしてくれであーる」

「この装置じゃったかな?」


 拘束されたブータニアスの元までやってくると源三郎が床から生えた装置と思われる長方形の金属をさわる。


「いだだだだだっ!? てっ、手足が引っ張られるであーる!!」

「ぬっ? 操作間違えたか? こっちか?」

「ぬわー!? 目が回るであーる!!」


 源三郎が適当に金属に触ると何故かフィールドに拘束されているブータニアスの手足が何かに引っ張られる。


 慌てて源三郎が別の部分を触ると、今度は球体フィールドが回転し始め、中に拘束されているブータニアスが悲鳴をあげる。


「ええいっ! 説明書ぐらいおいとかんかっ!!」

「ぷべらっ!?」


 操作方法がわからないことにイライラした源三郎はガツンと金属を殴る。

 するとブータニアスを捕らえていた球体フィールドが消えて、中で回転していたブータニアスが地面に落ちる。


「いやすまぬ」

「ひっ、酷い目にあったであーる」


 源三郎が謝罪し、起き上がったブータニアスが体についた埃を払い、大きく延びをする。


「ともかく助かったであーる。ところで君達は何者であーる? 海賊の一味には見えないであーる」

「私達は偶然エイリアンの文字が書かれた遺物を手に入れて、読める人探していたら貴方の話を聞いて」


 ブータニアスが改めて源三郎達の方に向き直ると頭を下げてお礼を言う。

 彼方はポケットからデータパッドを取り出し、アノマリー探索で見つけたエイリアン文字を写した画像を見せる。


「こっ………これはっ!!」

「え? なっ、なんて書いてあるの? すごい重要なこと?」


 ブータニアスが画像を見ると驚愕の顔をして言葉に詰まる。

 ノエルは何が重要なことが書かれているのかと前のめりになって聞き返す。


「いや、全然わからん」


 ブータニアスのその一言に視聴者も含めて全員がずっこけた。


「ブータニアスさんはエイリアン言語学者じゃないんですか?」

「如何にも我輩はエイリアン言語学者だが、全てのエイリアン言語を理解しているわけではないであーる。これは我輩が今までみたこともない文明の言語であーる! 調査の時間が欲しいであーる」


 鈴鹿がつっこめば、ブータニアスはアノマリーでみつけた文字は、ブータニアスの知識にある知らない言語だと答える。


「それよりも海賊達の増援がくる前に脱出しよう」

「でもどうやって? 私達が乗ってきたエレベーターは壊れちゃったよ?」

「それなら大丈夫であーる! この遺跡の中心部は大型エレベーターになっているのであーる」


 ブータニアスはそう言うと遺跡の中央へと歩いていき、先ほど源三郎が触っていたのと同じ長方形の金属をさわる。


 するとガタンと地面が揺れてゆっくりと床が上昇していく。


「ところでここはどんな遺跡だったのです?」

「うむ、ここはバードマンと呼ばれるいまから一万年前にこの星にいたと言われるエイリアンの刑務所であーる。特にここは重犯罪者を収監していたと思われるであーる」


 エレベーターで上昇中、鈴鹿が遺跡についてブータニアスに質問すると、ブータニアスは上機嫌で話し始める。


「海賊達が何が奪っていったが、なにか重要な物があったのか?」

「わからんであーる。おおかたエイリアンの遺物に興味のある好事家に売りさばく辺りであーる」

「そうかのう………」


 源三郎は海賊達が奪ったものについてブータニアスに聞くが、ブータニアスはあまり出土品に興味がないようだった。

 命令書をみる限りでは何か重要な物があったのではないか、盗まれたエイリアンの遺物についてまたクエストとかありそうだと源三郎は思った。


「地上だ!」


 遺跡のエレベーターは山の中腹に出るようになっていた。


「さっさとウォーカーを回収して戻るとしよう」

「うむ、お前達が持ち込んだエイリアン言語も興味あるのであーる。しばし時間を頂くが、解析するのであーる」

 

 そんな話をしながら源三郎達はウォーカーを回収して船に乗り込むと惑星から飛び立つ。


「お前ら! 命が惜しければ学者と船を置いていけ!!」

「まだいたか」


 惑星大気圏を抜け出すと、海賊船が待ち伏せしており脅しの通信をしてくる。


「相手は5隻の海賊船か………」

「あ、クエストが更新されてあの海賊倒せって」

「海賊倒したらクエストも終わりかな?」

「最後まで頑張りましょう!」


 海賊側からの通信を聞いてクエストが敵海賊を殲滅させろに更新される。


「参る!」


 源三郎がグラップラーアームを起動させて二本の斬鑑刀を抜刀すると、アフターバーナーと斬鑑刀のブースターを起動して突っ込む。


「撃ち落とせ!」


 海賊船側は突っ込んでくる源三郎のヘカトンケイルを撃ち落とそうと攻撃をくわえるが、へかトンケイルに搭載しているテック3バリアとアーマーに守られて、軽傷しか与えられていない。


 逆に大質量の斬鑑刀をぶつけられて2隻の海賊船が二つに叩き割られ爆発して、宇宙の藻屑にされる。


「お爺ちゃん、私達も手伝うよ!」


 彼方達も参戦すると一気に戦線は源三郎達が有利な方に傾き、海賊達は殲滅されていく。


「クエストクリアー!」


 海賊を倒し、最寄りの居住地拠点にブータニアスを降ろすとクエストクリア扱いになった。


「うわっ! 学術系のスキルチップがたくさんクエスト報酬でもらえた!」

「これはありがたいですね」

「クレジットも数百万単位だし、意外と美味しかったね、このクエスト」


 彼方達は配信視聴者達にクエスト報酬内容を報告していく。


「それじゃあ今日の配信はここまで! お疲れさまでした~」

「面白かったらチャンネル登録と高評価お願いします」

「お金もたまってきたし、私達もテック3宇宙船に乗り換えようかな?」


 クエスト完了すると彼方達はログアウトする時間帯だったので配信の締めに入り、スパチャしてくれた人に三人はお礼のコメントを返していく。


「それじゃ皆おつかれー」

「お疲れさまでした」

「また明日学校で」


 彼方達がログアウトするのを見送った源三郎も追従するようにログアウトした。


 


 

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