第46話 お爺ちゃん、ソロモン自由同盟領域に入る


「ソロモン自由同盟領域へようこそ! 規則として密輸品を運んでいないか調べさせてもらいます」


 ソロモン自由同盟領域にワープアウトした源三郎達は早速ソロモン自由同盟軍の臨検を受けた。


「問題なし! ソロモン自由同盟にようこそ、我々はフリーパイロットを歓迎します!!」

「え? 私達地球連邦からきたんだけど、いいの?」


 臨検を終えるとソロモン自由同盟軍側は歓迎の挨拶をしてくる。

 何かされると警戒していた彼方は驚いて思わず聞き返していた。


「連邦軍やこちら側にテロや犯罪行為を行わない限りは問題ないですよ。フリーパイロットの皆さんが物資を運んでもらったり、我々の目が届かない宙域の海賊を討伐したりしてもらっていますから」

「あははは………緊張するだけ損だったね」


 戦争していた敵国だからと源三郎達はあれこれ警戒していたが、何も問題がないとわかるとノエルが拍子抜けだと苦笑する。


「取りあえず、目的地まではまだ距離あるから何処か近くのステーションでワープ燃料補充しようよ」

「ついでに自由同盟側のマーケットとかも覗いてみたいの」


 彼方と源三郎はそんな話をしながら最寄りのアルテミス星系にむかう。


「自由同盟側はステーションじゃなくて居住惑星に街があるタイプなんだ」

「国で違いがあるのはいいね」

「どんな街か楽しみです」


 ソロモン自由同盟領域アルテミス星系にやってきた源三郎達。

 プレイヤー達の活動拠点でもあるステーションは存在せず、代わりに惑星に居住地拠点がある。


「おお、この星は緑が多くて景色がいいのう」


 大気圏突入し、惑星デネブという星へと降り立った源三郎達は鬱蒼と生い茂る緑の木々の海に声を漏らす。


 そんな緑の海とも言える大森林の一角に浮き島のようにポツンと存在する居住地拠点の発着場に源三郎達の宇宙船が着陸していく。


「うーん! ゲームの中だけど、やっぱ空があるだけで解放感あるね」


 宇宙船から降り立った彼方は大きく伸びをして深呼吸して惑星の緑と広さを堪能する。


「ここはまだ開拓中って感じですね」


 鈴鹿は周囲を見回して感想を述べる。

 鈴鹿が言うように惑星デネブの人類拠点は1つしかなく、まだ入植が始まったばかりなのか、道路はむき出しの土であちらこちらに開拓資材が積み上がり、重機が稼働している。


 NPCの住人も全体的に土木作業服にヘルメット姿で資材を運んだり忙しく働いていた。


「本当に開拓中って感じだね」


 ノエルが言うように惑星デネブの人類拠点はコンクリートのような建材の壁に囲まれ、見張り塔には対空砲のような兵器が設置されている。


 人類拠点の町中もビルとかはなく、土地を放り開く時の木材を再利用したログハウスやドーム型のテントが立ち並ぶ。


「マーケットはここかの?」


 源三郎は西部開拓時代のサルーンのような建物のウェスタンドアを開けて中に入る。

 建物の中もサルーン風の木製テーブルや椅子があり、中にいる客が宇宙服を着て腰にレーザー銃をぶら下げ、壁掛けテレビから今週のガチャの特集CMが流れてなければ、別ゲームと源三郎達は勘違いしたかもしれない。


「国が変わると商品もガラリと変わるな」


 ステーションマーケットの販売品を確認すれば地球連邦とは違う品物がズラリと表示されている。


「こっちは全体的に実弾兵器がメインなんですかね?」

「宇宙船も連邦と似たスペックですけど名前と外見が違いますね」


 商品の画像プレビューなど見ていた源三郎達が配信視聴者にむけて連邦と同盟の違いを説明していく。


「ここの戦闘ミッションは地上戦のミッションが多いね」

「輸送ミッションは報酬高いけど運ぶ量が凄いね」

「探索や採掘、生産は連邦とあまり変わりませんね」


 彼方達はミッション一覧を見て連邦と同盟のミッションの違いを確認する。


「ねえねえ、ここからカンパニーオフィス用の土地が買えるよ」

「土地の広さによって値段が違うな………どうやら販売するのは土地だけだから建物は自分達で作らないと駄目のようじゃな」


 端末であれこれ連邦との違いを調べていた彼方が土地が買えると叫ぶ。

 連邦はステーション内の部屋だが、自由同盟側は土地を販売し、生産スキルなどで建材を作って家をたてる方式のようだった。


「購入できる土地の内見もできるんだ………風景の良い場所とかあるならオフィス移そうかなぁ」

「観光もいいけど、クエストやらないと」

「あ、そうだったね」


 ノエルに言われて彼方はソロモン自由同盟領域に来た目的を思い出し、燃料を補給するとエイリアン言語学者が行方不明になったクノックス星系の惑星ゼノスへとワープする。


「この惑星は全体的に乾燥した荒野地域だけど空気も重力もあるみたい」

「エイリアン言語学者はこの星系で見つかった遺跡発掘していたとか?」

「クエストではそうなっていますね。取りあえず惑星に降りてみましょう」


 彼方が惑星をスキャンして酸素があることを確認すると着陸地点にむかう。


「遺跡がある場所に降りれたらよかったのに」

「クエスト設定では地盤が緩いとかでここから車でいけということです」

「それじゃあ、お爺ちゃんウォーカー出して」

「あいよ」


 源三郎はヘカトンケイルの格納庫に収納されている六輪式装甲車両ウォーカーを地上に降ろす。


「それじゃあ、遺跡に向かってレッツゴー!」


 源三郎達がウォーカーに搭乗するとフィーンという独特のエンジン音を唸らせてウォーカーが発進し、クエストマーカーに沿って走り出す。


「あ、敵だ!」

「クレンジャーという動物型クリーチャーのようです。惑星原種生物でしょうか?」

「レーダーでは敵対の赤だし、ウォーカーの性能を見てみようよ」


 遺跡に向かって走っていると、赤い体毛の例えるなら顔の皮がめくれて筋繊維が剥き出しのライオンのようなクリーチャーが5体ほどウォーカーに向かって走ってくる。

 走ってくるクリーチャーをみた鈴鹿が異星生物学のスキルが発動したのか、クリーチャーの名前を教えてくれる。


「キャノン発射!」

「ギャンっ!?」


 装甲車の天井部分に搭載されたキャノンからビームが放たれて、ライオンのようなクリーチャー達がいた部分に着弾すると爆発してクレンジャー達が吹き飛ぶ。


「まだ生きてるか」

「結構丈夫ですね」


 武器が弱いのか、クレンジャーが強いのか、キャノンの爆発で吹き飛ばしても立ち上がって戦意を喪失することなく襲ってくるクレンジャー。

 ウォーカーはガトリングガンで弾幕を張って迎撃する。


「頭はそこまでよくないみたいですね」


 鈴鹿が言うようにクレンジャーは回避することなくガトリングの弾幕の中に飛び込んでどんどんヒットポイントを減らしていく。


「お爺ちゃん、キャノン再装填完了だよ」

「よし、発射!」


 再度キャノンから砲弾が発射されてクレンジャーを蹴散らす。


「うわぁまだ生きてるのがいる」

「普通に戦ってたらやばかったかも」


 ほとんどのクレンジャーは二度目のキャノンで倒せたが、一匹だけ生き残りこちらに向かってくる。


「よしっ、ブースター轢き逃げアタックじゃ!」

「ギャン!!」


 ウォーカーを運転する源三郎はアクセルをベタ踏みし、更にブースターを起動させて生き残ったクレンジャーを撥ね飛ばす。


 弧をを描いて撥ね飛ばされたクレンジャーは頭から地面に落ちるとそれがトドメとなったのか動かなくなる。


「ドロップ品回収していくかの」

「そうだね、投資におカネ必要だし」


 ウォーカーを止めて源三郎達は下車すると、クレンジャーの死体からドロップ品を回収していく。


「皆さん、このクレンジャーはこの星の生物じゃありません。外部から持ち込まれた生物兵器だと私のスキルで説明が表示されてます」


 ドロップ品を回収していると、鈴鹿がクレンジャーの正体を知らせてくる。


「ふむ………エイリアン言語学者の件と関係あるのかの?」

「うーん………ここで考えても埒があかないし、取りあえずクエストマーカーエリアまで進もう!」


 クレンジャーからのドロップ品を回収終えた源三郎達はウォーカーで先へと進んだ。


 

 

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