第45話 お爺ちゃん、クルーザー型宇宙船を堪能する
「皆さん今晩は、彼方です! 昨日はごめんね、まさか詫びチケットで当たるとは思わなくて………」
源三郎はログインした彼方達と合流し、早速配信に参加する。
彼方が昨日の配信でテンパった事を謝罪すると、【ええで】【ポンコツ化した彼方ちゃん可愛かった】【あれは俺もテンパる】など彼方をフォローするような好意的なコメントが書き込まれていく。
「今日の配信一発目は早速ガチャで手に入れたクルーザー型宇宙船を紹介するね!」
彼方はそう言ってステーションのハンガーデッキに向かう。
「はい、こちらが今回のガチャの目玉であるクルーザー型宇宙船です!」
彼方はハンガーに繋留されている宇宙船をドローンカメラで撮る。
クルーザー型宇宙船の見た目は海上を走る大型クルーザーとほほ同じだが、特に目立つのは甲板にガラス張りのドーム型パーティールームがある。
「それじゃあ、船内を紹介するね。と言っても家具とか置いてないから部屋だけだけど」
彼方を先頭に源三郎達はクルーザー型宇宙船の船内に足を踏み入れる。
「中は見た目よりも広々としていますね」
宇宙船の外見と違い内部はインスタンスエリアになっているのか通路も広く、彼方、鈴鹿、ノエルの3人が横に並んで通れる広さだった。
「ここはリビングルームかな?」
「何もないと少々殺風景ですね」
「あ、このスイッチで壁が透明になって外の景色見れるよ」
最初に到着したのは12畳ほどの広い空間。
彼方達が走り回って広さを確認していると、ノエルが壁にあるスイッチを見つけて、オンにすると、壁が半透明になる。
「こっちに進むと個室が4部屋あるね」
「部屋もそこそこ広いですし、押し入れとユニットバスに使えそうなスペースもありますね」
「うわっ! こっちは部屋全体が透明になった!?」
リビングルームを抜けると個室エリア。
1部屋6畳ほどあり、鈴鹿が言うように押し入れとユニットバスに使えると思えるスペースがあった。
ノエルはリビングルームみたいなスイッチがないかと探して見つけると、スイッチをオンにする。
するとリビングルームとは違い、個室は壁床天井全てが半透明になり外の景色が見える。
「この船をオフィスルームにしたかったなあ」
「それじゃとステーションに投資できんじゃろ?」
彼方はクルーザー型宇宙船を気に入り、ここをオフィスルームにしたいと言うと、源三郎が投資システムの関係で無理ではと突っ込む。
「それじゃあ、次はパーティールームだ! レッツゴー!」
彼方はそう言って駆け出し、パーティールームに向かう。
「うわー、ひろーい!!」
「天井も高くて解放感がありますね」
「あ、ここは床や壁が透明になるだけじゃなくて、パーティールーム限定で無重力空間に出きるみたい!」
パーティールームはかなり広く、彼方ははしゃいで走り回り、鈴鹿と源三郎は楽しそうに走る彼方をみて微笑む。
ノエルは壁にあるパネルを操作して壁や床が透明になるだけじゃなく、重力もオンオフ出来るとわかるとカメラに向かってアピールする。
「それ面白そうだから、試してみよう!」
「それじゃスイッチオン!」
彼方が許可するとノエルがパネルを操作してパーティールーム内の重力を0にする。
「うーん、ゴーグルタイプのVRだと無重力というよりは壁のないエレベーターで上下に動いてる気分かな」
「そうですねえ………」
「思ったよりも地味?」
「そうか? わしは堪能しとるがの」
あくまで視覚がメインのVRゴーグルタイプでギャラクシースターオンラインにログインしている彼方達3人は期待したほどてはないことにがっかりしている。
ところが、五感でフルダイブ式のVR機器でログインしている源三郎は無重力遊泳を堪能していた。
「あ、エイリアン言語解読のプロジェクトが完了したみたい」
クルーザー型宇宙船を探検していると、カンパニーマスターである彼方にお知らせのメールが届いたのか、彼方は探検を中断して源三郎達や配信視聴者に見えるようにメール内容を公開する。
「えっと、エイリアン言語やエイリアン考古学の学者に解読を頼んでいたけど、エイリアン遺跡の発掘先で行方不明になってプロジェクトは中断したから見つけて来てってストーリークエストがきたよ」
「へえ、アノマリーやプロジェクト投資から始まるストーリークエストもあるんだ」
「報酬も悪くありませんね」
「じゃあ受けるね」
彼方は公開したメールを読み上げ、ストーリークエストがきたことを知らせ、クエストを受ける。
「む? どうやら地上車両がいるようじゃな」
「ちょうど設計図手に入れたし、それ作る?」
「いいですね!」
「じゃあ一旦ステーションのカンパニーオフィスまで戻ろう」
彼方がストーリークエストを受けると、クエスト目的地が表示され、目的惑星の広大な地上を探索するらしく、地上車両を使用することを推奨とクエストテキストに書かれていた。
クエスト内容を読んだノエルが私設刑務所の所長から手に入れた車両の設計図を取り出して作ろうとアピールする。
「六輪式の装甲車両で………あ、これ搭載するにはテック3の宇宙船が必要だって」
「え? 私たちの船はテック2……」
「今からテック3の船を買って………って、3億クレジット!?」
バベルステーションのカンパニーオフィスルームに戻った源三郎達は早速地上車両を製造しようとするが、説明文を読んだノエルが待ったをかける。
彼方達3人の船はテック2の宇宙船なので搭載できず、彼方がステーションマーケットでテック3宇宙船の完成品を検索するとその値段に悲鳴をあげる。
「あ、彼方が当てたガチャの船は?」
「えーっと………テック1。武器もアーマメントも装備できないけど、その代わり破壊されないしって」
ノエルが思い出したようにガチャの宇宙船の種別を聞くが彼方は首を横に振る。
「ほう? ちょうどよかった、わし昼間にグラップラーシップじゃがテック3宇宙船を作ったぞ」
「お爺ちゃんナイス!」
源三郎が髭を弄りながらテック3宇宙船を作ったことを知らせると、悲しそうな顔をしていた彼方が一転して笑顔でサムズアップしながら源三郎を誉める。
「それじゃあ、作っていこうか!」
ノエルが生産機器を稼働させて地上車両を作り始める。
地上車両も宇宙船の製造と同じくフレームやセンサーにエンジン、タイヤに搭載武器など部品ごとに種類を選択して組み上げていく。
「予算の関係で一番安い素材で作ったけど、大丈夫かな?」
「やばかったら撤退して作り直そう」
完成したのは必要最低限の性能を持たせた六輪式装甲車両ウォーカーで、武装も実弾式のキャノンとガトリング両方一門のみ。
「目的地は………あ、ソロモン自由同盟領域の星だ」
「えっと、大丈夫?」
六輪式装甲車両【ウォーカー】を源三郎のテック3グラップラーシップ【ヘカトンケイル】に搭載して目的地である惑星の位置を調べるためにそれぞれがスターマップを開く。
彼方が言っていたように、、行方不明になった言語学者が向かった遺跡がある惑星はソロモン自由同盟が領有する星系だった。
「取りあえずいくだけいってみませんか? もしかしたら現地でクエストが更新されて入れる方法出るかもしれませんし」
「そうじゃな」
自由同盟という地球連邦と戦争していた高度な文明地に二の足を踏む源三郎達。
鈴鹿が行くだけ行ってみようと提案すると、代案が思い付かなかった源三郎達はソロモン自由同盟の国境へむかう。
「これがお爺ちゃんの新しい船? でかいね」
「彼方のお爺さんはグラップラーシップでやっていくの?」
「彼方のお爺さんの船素敵です」
宇宙空間に出港すると、源三郎の新しい船に彼方達や配信視聴者達が感想を述べる。
「それじゃソロモン自由同盟領域にしゅっぱーつ!」
「おー!」
彼方がソロモン自由同盟領域に繋がるワープゲートを生成すると、源三郎達はゲートに飛び込んだ。
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