第44話 お爺ちゃん、新しい戦闘船を作る
定期メンテナンス翌日、いつものように源三郎は朝食を終えるとギャラクシースターオンラインにログインする。
「さて、何かいい船が販売されていないかの?」
源三郎はログインしてすぐにテック3の戦闘船が販売されてないかステーションとギャラクシーマーケットで検索する。
「ギャラクシーマーケットも品物が増えてきたの」
プレイヤー同士の売買がメインのギャラクシーマーケットも正式サービスから一週間以上も過ぎると商品を求めるオファーや、市場に流れるアイテムの数も増えてきている。
「船ではないが、これはほしいの」
ギャラクシーマーケットに出されている品物一覧を見ていると、アノマリー探索にボーナスが入る解析機や、ハウジングルームで生産が行えるたり、少しボーナスが付与される機材の完成品が売られていた。
「相場はわからんが、買えるしいいかの」
源三郎はハウジングルームアイテムを購入していくと、フリージアカンパニーのオフィスに設置していく。
「ふむ………完成品ではないが、テック3のグラップラーシップの設計図か………ギリギリ買えるな」
改めてテック3戦闘船をマーケットで検索していると、グラップラーシップの設計図を見つける。
「わかっておったが、作るには色々材料が足りないのう………」
所持金の殆どをはたいてテック3グラップラーシップ設計図を購入した源三郎。
船を完成させるのに必要な材料の量を見て少しだけ後悔した。
「取りあえず貨客ミッションしながら報酬で材料揃えるかの」
源三郎は貨客ミッションのマラソンをしながら出先のステーションでテック3グラップラーシップ作成に必要な材料を買い集めていく。
「ふむ? 1から生産するとフレームの構造から選べるのか」
テック3グラップラーシップの作成画面を開くと、ライト、ノーマル、ヘビーの三種類から船体フレームを選べるようになっていた。
「フムフム、ライトは経費と製造時間を抑えられるがアーマーヒットポイントと本体ヒットポイントが低くなり、ノーマルが市場で売られてる船と同等、ヘビーは必要材料と製造時間が倍かかるが、アーマーと本体ヒットポイントが増加されると………戦闘船ならヘビー1択じゃな」
「ユーザー、付け加えますと製造関連のスキルや設備、プロジェクトを完了することで宇宙船の性能が上がります。また、素材にアダマンティウムを使いますとランダムでシップスキルが付与されます」
源三郎はフリージアカンパニーのオフィスに設置した製造機でフレームなど設定を弄り、ステーションで鉱石を購入しては合金に変えてグラップラーシップの基礎フレームを作り上げていく。
「基礎のフレームが出来上がったな。次はセンサーか………複数相手に出来るミサイル系にするか」
別途製作や販売されているセンサーを何れにするか源三郎は悩む。
悟堂を操縦していた時はソロで戦闘すると多数に囲まれると手数が足りなくなって追い込まれることもあったので、源三郎はミサイル向けの多数ロック機能があるセンサーを選ぶ。
「こりゃ、拘ったら青天井じゃな………」
センサーを選ぶと次に装甲、エンジン、バリア、ジェネレーター、ワープドライブと次々と選択肢が現れてどの性能の部品を使うか源三郎は頭を悩ませる。
資金が底をついたら使わない船や溜め込んでるドロップ品を売却したり、また貨客マラソンを行って資金を稼いで部品を購入したり製作していく。
「アーマメントモジュールの装備数もか………」
宇宙船の本体を作り上げると、次に宇宙船に装備させるアーマメントモジュールの数を設定してしてくださいといわれて、源三郎は頭を悩ませる。
数を増やせば増やすほど追加料金がかかり、源三郎のゲーム内貯蓄が溶けていく。
「よしっ! 完成じゃ!!」
昼食と休憩を挟んでやっとこさテック3グラップラーシップが完成する。
テック3グラップラーシップの名前はヘカトンケイル。
その名前を表すように4本のグラップラーアームが備えられている。
「次に武装じゃが………こいつにするか」
ステーションマーケットで見つけたグラップラーシップ専用近接武器【斬艦刀】を源三郎は2つ購入する。
両手持ち用の野太刀のような刀で、峰の部分にブースターがついている。
武器の使い方を紹介する動画ではブースターを点火させて、スピードを乗せて相手の宇宙船をぶったぎっていた。
船体武装としてミサイルランチャー、発射速度は遅いが一発の威力が高いオートタレットタイプのレールガン、アサルトアンカーを搭載する。
「最後にアーマメントモジュールじゃが………これにするかの」
源三郎が選んだのはバリアのヒットポイントを増幅するバリアエクステンダーとバリアのリチャージ速度を早めるバリアチャージャーを複数、速度を早める追加アフターバーナー、ミサイルのダメージをあげる弾道制御装置、レールガンの発射速度をあげる磁場制御装置を装備できるだけ装備させた。
「ふいー………完成じゃっ!」
源三郎は輸送ミッション用のマーロンとアノマリー探索用の探索船以外のこれまでのプレイで溜め込んでいた資産と引き換えにテック3グラップラーシップ【ヘカトンケイル】が完成する。
その姿は巨大なクジラに4本の腕が生えた異形の存在。
悟堂の1.5倍の大きさのある宇宙船で、頭部部分にあたるコクピット上部にミサイルランチャー、クジラの顎にあたる部分にレールガンのオートタレット。
クジラの目にあたる部分からはアンカーが飛び出す機構になっている。
「まだ時間があるし、TR1の戦闘ミッションで慣らしてみるか」
源三郎はTR1の海賊狩りの戦闘ミッションを複数受けて宇宙に飛び立つ。
「まずはテック3のミサイルランチャーの威力からみるかの」
ミッションの討伐対象であるNPCの海賊船を見つけた源三郎は、ターゲットをロックするとミサイルを発射する。
「過剰すぎたかの?」
ターゲットである海賊船にミサイルの雨が降り注ぎ、海賊船は秒で宇宙の塵となった。
「TR1では検証にならんの………」
オートタレットレールガンも一撃で海賊船に風穴をあけ、斬艦刀にいたってはオーバーキルと言う言葉すら生ぬるいかもしれない。
「TR1なら無傷でクリアできるな」
次にバリアの防御力を試そうと、わざと海賊船のレーザーを喰らうが………ジェネレーターの回復量の方が強く、バリアのヒットポイントが全然減らない。
「TR2を試してみるか」
源三郎が次に受けたのはTR2のゴブリン退治の戦闘ミッション。
TR2のゴブリンは、TR1の海賊よりは歯応えはあるが、ゴブリン側の強みである数もミサイルランチャーによる範囲攻撃の前では無意味で、万が一囲まれたとしても斬艦刀を振り回しながら旋回すればゴブリンの包囲網を崩せる。
「バリアの残りHPにさえ気を配ればソロでもいけるな………彼方達がログインするまでまだ時間あるし、TR3に挑戦してみるか」
ゴブリンの群れを倒してミッションを終わらせた源三郎はステーションに戻ると早速TR3の戦闘ミッションを調べる。
「バウンティーミッション? ロボやこれはどんなミッションなんじゃ?」
TR3の中でも報酬の高い賞金首を討伐するバウンティーミッションと言うのを見つけた源三郎は、サポートロボットのロボにミッション内容を質問する。
「お答えしますユーザー。バウンティーミッションは賞金首の対象の居場所を捜す所からミッションが始まります」
「ん? クエストマーカーはでないのか?」
「はい、支給されるシーカードローンを使って対象を探します。シーカードローンを大量に派遣する、ドローン関連のスキル、市販もしくは自作した性能のいいシーカードローンを使用するほど目的対象を早く見つけます」
サポートロボットのロボはバウンティーミッションについて説明する。
「また、プレイヤーキラーなど犯罪行為を行ったプレイヤーがミッション対象にもなります。宇宙戦闘か地上戦闘かはランダムです」
「ふむふむ………物は試しじゃ、一度やってみるかの」
ロボの説明を聞いた源三郎はTR3のバウンティーミッションを受ける。
今回受けたのはボルアと言う名前もちのNPC海賊の討伐で、ミッションを受けるとシーカードローンを3体支給された。
「ユーザー、ドローンを使って見てください。使うほど発見率が高くなります」
「うむ」
源三郎がシーカードローンを起動させると、ドローン達はステーションから出ていき宇宙に消えていく。
ミッションのタスクには捜査中と言うテキストと進行度を表す%が表示される。
「お、標的が見つかるとクエストマーカーが表示される仕様か」
進行度%が100%になるとターゲット発見したとして目的地までのクエストマーカーが表示される。
船に乗って宇宙に出て、目的地まで向かうと、そこはアステロイドベルト帯で、小惑星を縫うように1隻の宇宙船が遊泳しており、その宇宙船には賞金首ボルアと名前が表示されていた。
「ちっ! 賞金稼ぎか!!」
「ロックアラート!」
ある程度近づくと、賞金首のボルアが源三郎のヘカトンケイルに気づいてミサイルを撃とうとする。
「先手必勝!!」
源三郎はミサイルロックが完了する前に近づこうとアフターバーナーと斬艦刀のブースターを点火して、賞金首ボルアに肉薄する。
「アサルトアンカー発射!」
「がっ!?」
クジラの目の部分からは発射されたアンカーがボルアの船に食い込み、巻き上げる。
ボルアは釣られた魚のように暴れるが、アンカーは外れず引き寄せられる。
「いくぞっ!」
「グアアアーッ!!」
ブースターが点火した二本の斬艦刀でボルアの船を上下から一刀両断すると、ボルアの船は三枚におろされて爆発する。
「これだけでミッション報酬が50万クレジットじゃと!? TR1の輸送ミッション1往復よ りも時間短くて報酬もよすぎじゃ!!」
ボルアを倒すと同時に賞金額が振り込まれてその額に源三郎は驚く。
更にボルアの船から手に入れたドロップ品が100万で売却出来たことに更に驚いた。
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