第42話 お爺ちゃん、新しい金策を始める
「さて、今日は11時から定期メンテナンスじゃし、輸送マラソンで時間を潰すかの」
朝食を終えた源三郎は家の用事を後回しにしてギャラクシースターオンラインにログインすると、早速今北産業カンパニーのYTに教えて貰った金策である輸送ミッションのマラソンを開始する。
「平日の朝で定期メンテナンスがあるからチャットチャンネルも人が少ないのう………」
いつもなら朝でもチャットチャンネル一覧は数ページほど開設されているが、今日は1ページ分しかない。
「ほう、貨客船とな?」
雑談チャットのひとつに入室して輸送ミッションを行っていると、在室しているチャットルームで源三郎が行っている輸送マラソンより効率のいい金策の話が話題に出る。
新しい金策の内容はマーロンと言う貨客船を使った輸送とタクシーミッションを同時に行うもので、タクシーミッションのリセマラで単価の高い客を乗せて、乗客と同じ行き先の輸送ミッションを行うと言うもの。
これを行うと源三郎が今やってる輸送マラソンの時給を大幅に上回る効率になる。
「ふむ………ステーションに到着したら、マーケットで売ってないか調べるか」
メモ帳を開いて新しい金策に必要な船やアーマメントを書き込み、ステーションに向かう。
「まずはテック2貨客船のマーロンを買ってと………中々いい性能じゃな」
ステーションマーケットで貨客船のマーロンを購入する。
貨客船マーロンは新幹線のような長方形の形をしており、プレイヤーが客室と貨物室の割合を決められる。
「とりあえずサイジールに搭載している拡張コンテナをマーロンにつけかえて貨物容量を確保して………速度が上がるアーマメントで乗客の要望に答えられるようにして、客室用にキャビンとベッド、フードも品質良くして、最後にキャビンアテンダントのスキルチップを2レベルにすると」
源三郎はメモ帳片手に新しい金策に必要なパーツを買っていく。
客室は快適度によってチップなど追加報酬が出るらしく、快適度が上がるアーマメントを搭載していく。
キャビンアテンダントのスキルはタクシーミッションの報酬や快適度が上昇し、スキルレベル2からミッション選択時に、貧乏人や金持ち、モンスタークレーマーなど客の質がわかるようになる。
雑談チャットではこのスキルで金持ちで気前のいい客のミッションを選べと言っていた。
「よし、こんな感じか。早速試してみるかの」
ミッション端末から条件のいいミッションをリセマラして受けていく。
リセマラのやり方は目的のミッションが出るまでいらないミッション受けてキャンセルするだけ、今のところミッションキャンセルにペナルティはない。
「やはり輸送系のミッションは味気ないのう」
目的のミッションを受託して、目的地に客と荷物を運ぶ。
荷物輸送はステーションに到着すれば勝手に納品されて、報酬が振り込まれるだけで、源三郎には少々刺激が少なく感じる。
「ほう、タクシーミッションは目的地に到着すると顧客の評価コメントが貰えるのか」
目的地に乗客を下ろすと、報酬と一緒に評価コメントが送られてくる。
今回の客は快適で満足したと言うコメントとチップと言う形で追加報酬を貰えた。
「タクシーミッションは、リアルのタクシーみたいな感じだな。近距離で数をこなすか、長距離で単価をあげるか………」
その後も何度か荷物と人を運んで源三郎は効率を計算する。
貨客ミッションを5回もすれば初期投資費用は回収できた。
客からの評価も好評で、金持ち客がより上の内装設備のクオリティを求めてくるぐらいだった。
「全体的に長距離客ほど快適さを求めて、星系から星系に移動する客が一番単価たかいな」
源三郎はWeb上のメモ帳で大まかな収支を書いて近距離と長距離どちらがいいか考える。
「荷物と一緒なら長距離で、客だけなら限界まで客を乗せて、目的地でまた別の客を乗せて同じ星系内をグルグル回るのが効率がよいの」
チャットの人は長距離客と荷物が効率がいいと言っていたが、ローマンの貨物全部を客室に変えて限界まで客を乗せて運ぶのも悪くないと源三郎は思った。
貨客ミッションで宇宙空間を移動中は暇だった源三郎はいくつかのチャットルームに入室して雑談しながら宇宙船を運転する。
「どのミッションが一番儲かるかか………うーん、難しいの」
その中で探索、輸送、戦闘、採掘、生産、交易のどれが一番儲かるか議題が上がり、チャットルーム参加者があれこれ意見を言ってる。
「ほう、TR3からは船と武装さえちゃんとしていれば宇宙戦闘ミッションが一番儲かるのか」
そんな中、ベータテストからプレイしていたユーザーがTR3の戦闘ミッションが儲かると言う。
特に暗殺ミッションと呼ばれる特定のNPCが操縦する船だけ破壊するミッションが特に儲かると述べる。
「地上戦闘は時給換算するとやはり微妙か」
チャットルームにいる参加者の1人が地上戦闘ミッションについて質問すると、全体的に戦闘が長いなど否定的なレスが書き込まれていく。
「やはり探索は当たればデカイが、博打すぎるよのう………逆に輸送」
戦闘ミッションの次に儲かるのはと言う議題が出ると、探索と輸送でかなり意見がわかれる。
「交易と生産はまだ不明瞭か」
次に交易と生産について話し合うと、まだ正式サービスが始まって一週間ほどでまだ読めないと言うのがチャットルームにいる参加者の答えだった。
交易はプレイヤー達がどこで何をとれだけ売買したかで変わるので、これを買えば安牌と言うのはない。
生産はまだ正式サービスが始まったばかりで、スキルや設計図に材料が揃っていないし、カンパニー投資の研究で生産品の性能アップもあるらしくて読めないと言うのが在室しているチャットルームでの総評となった。
「ユーザー、あと30分で全サーバーが定期メンテナンスに入ります」
「おっと、もうそんな時間か」
貨客ミッションを繰り返していると、サポートロボットのロボから定期メンテナンス時間が近づいている報告がされる。
同時にチャットルームや各地のステーションでもNPC達が定期メンテナンスが近いからログアウトしろとテキストメッセージが表示され、ちらほらいた他のプレイヤー達がログアウトしていくので、源三郎もミッション目的のステーションでログアウトする。
「ふう………少し早いが昼飯にするかの、どっこらしょっと」
ログアウトして現実に戻った源三郎はVRカプセルから起き上がり、冷蔵庫にある材料で軽く昼食を作ると、妻の位牌がある仏壇の前で食事を取る。
「痴ほう症予防に始めたがすっかりハマってしまったわい。お前も生きていたら一緒に遊んでいたかの?」
源三郎は生前の妻の写真を見つめながら話しかける。
「少し前までは生存確認の為に週1回しか孫や息子と連絡取れなかったのに、今は孫とその友達とほぼ毎日一緒に遊んで、メタボーマンさん達とかゲーム内での友達もできて気持ちが若返った気がするよ。もう少し遊んでいたいからの、迎えにくるのはもうしばらく待ってくれ」
最後に手をあわせて祈りを捧げると、源三郎は家の片付けを始める。
「うん? メンテナンス延長か………」
家の用事を済ませて、そろそろ定期メンテナンスが終わる時間が近づいたので公式サイトを確認しに行くと、公式側からのお知らせでメンテナンス延長の告知と終了時間未定のお詫びがトップページに表示されており、源三郎は出端をくじかれる。
「仕方ない、メンテナンス終わるまで素振りでもするか」
源三郎は棚にかけてあった木刀を持つと庭で素振りを始めて、延長メンテナンスが終わるのを待った。
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