第40話 お爺ちゃん、投資する。


「うーむ、輸送マラソンより儲かってしまったのう………」


 メタボーマンがログアウトするまで採掘ミッションの護衛をしていた源三郎はバベルステーションに戻って、自分の所持金に唸り声をあげる。


「取りあえず半分はカンパニー資金に回して、残りでスキルでも買うかの」


 源三郎は1レベルのスキルチップを買い漁り、彼方達がログインするまで買い物と合成をしながら時間を潰す。


「ユーザー、宇宙生物学を取得したので以前発見したガス惑星の海月を調査できますが、いかがしますか?」

「そういえば、そんな事もあったの」


 スキル合成を繰り返していると、サポートロボットのロボから以前発見して放置していたアノマリーの続きができると教えてくれる。


「まだ彼方達はログインしておらんし、行ってみるかの」


 源三郎は探索船に乗り換えて、ガス惑星へと向かうと早速ガスの海を回遊する海月を調査する。


「ほー、体内にガスを取り込んで浮き沈みして、ガス惑星内にあるアンモニアが主な食料か………全長100メートルを超えて推定年齢は1000歳っ!?」


 調査が終了してガス惑星の海月のデータが表示される。


「調査完了です。ミッション端末か、連邦、自由同盟勢力の学者NPCに報告することで報酬額が変わります」

「む? その学者とやらは何処にいるのじゃ?」

「ユーザー自身で見つけてください」

「質問チャンネルで聞いてみるか」


サポートロボットのロボの説明を聞いて、源三郎はチャットルーム一覧にあった質問室に入室して、両勢力の学者が何処にいるか質問してみた。


「連邦の学者はアルファケンタウリのステーションで、自由同盟の学者はリーン星系のステーションか………アルファケンタウリが近いな」


 質問チャンネルに書き込んだら、同じようにアノマリー探索ミッションをやっていた先輩達が学者の居場所を教えてくれる。

 どちらに報告しても報酬は変わらないそうなので、源三郎はスターマップを開いてそれぞれのステーションを確認して近いへとワープする。


「アカデミーエリアなんてあったんじゃな」


 アルファケンタウリのステーションに到着した源三郎は報告対象である学者を探し、ステーション内にあるアカデミーエリアに向かう。


 アカデミーエリアには白衣を着た学者っぽいNPCが多数いて、データパッドを操作しながら研究してるような仕草をしている。


「中々興味深いデータだ。またなにか発見したら報告してくれ」

「おおう、輸送マラソン五周分の報酬とかハンパないのう」


 目的の学者にガス惑星の海月の生態データを渡すと高額な報酬とTRが上がった。


「本当にアノマリー探索ミッションは当たればでかいな」

「お爺ちゃん、ログインしたよー」

「ぬ? 今からそっちに向かう」


 今後はこちらに力をいれるかと考えていると、彼方からボイスメッセージが来たのでバベルステーションに戻る。


「彼方、これ使って投資の配信とかどうじゃ?」

「うわっ! こんな大金いいのっ!?」


 彼方と合成した源三郎は配信用にと小遣いを渡すと、その額に彼方が驚く。


「メタボーマンさんと遊んだり、アノマリー探索ミッションやってたら稼げての」

「アノマリー探索ミッション?」


 ノエルと鈴鹿はまだログインしていないので2人を待つ間、源三郎はアノマリー探索ミッションについて彼方に説明する。


「それ面白そう!」

「生物調査とかなら配信盛り上がるかも知れんのう。その前に調査ボーナスがつきそうな投資や家具を設置せんとな。調査時間の間暇かもしれん」


 源三郎からアノマリー探索ミッションについて教えてもらった彼方は目を輝かせてはしゃぐ。


(小さい頃忙しい息子夫婦の代わりに遊園地につれていった時を思い出すのう………)


 源三郎は彼方のはしゃぐ姿をみて昔を思い出す。


「やっほー、ログインしたよ」

「皆様、先ほどぶりです」


 そんな話をしている間にノエルと鈴鹿もログインしてくる。


「ねーねー、アノマリー探索ミッション行かない?」


 彼方はノエルと鈴鹿がログインしたのを確認すると早速アノマリー探索ミッションに誘う。


「それ面白そうですが、スキルがかなり必要なんですね」

「面白そうだけど、それは次だろ?」


 彼方からアノマリー探索ミッションについて話を聞いた鈴鹿とノエルは興味をもつ。


「取りあえず、今日の配信は投資にしないか? 探索系が有利になる投資があるとわしは嬉しい」

「うーん、スポンサーのお爺ちゃんがそう言うなら」

「それにここ最近はずっと配信ばっかりで駆け足ぎみで、キャラクターとして成長が疎かでした。スキルや船とか強化してより上のTRミッションなどに挑戦したいです」

「せっかくハウジングルームも手に入れたんだし、内装にも手を出したい」


 源三郎が軽く声をかけると、鈴鹿やノエルも自分がやりたいことを述べる。


「うーん、それじゃあ………今日の配信したあとは数日配信お休みして、スキルとか強化する? 明日は定期メンテナンスだし」

「そうですね、それがいいかも」

「ストーリーミッションも悪くないけど、たまにはゆっくり遊ぶのもいいかも」


 彼方達は今後の配信スケジュールを相談しあって決めていく。


「よしっ! それじゃあそんな感じでいこう! 取りあえず今日はカンパニーの投資で何ができるか配信しようね」


 彼方達はあれこれ話し合って今後の配信スケジュールが決まると、今日の配信準備に入る。


「皆さんこんばんはー! 彼方です!!」

「やっほー、ノエルだよー」

「鈴鹿です」


 配信が開始されると彼方達3人が挨拶をする。


「今日はお爺ちゃんがお小遣いくれたので、そのお金でカンパニーの投資で何ができるか配信します」


 彼方が今日の配信の趣旨を伝えると、孫活だーと言うコメントが滝のように流れていく。


「カンパニーの投資がなんの事か分からない人は概要欄に過去の動画リンク貼ってるのでそっちみてね」

「それじゃあ、早速カンパニーウィンド起動!」


 ノエルが補足を入れて彼方がカンパニーウィンドをカメラに映す。


「投資は一口100万クレジットで、投資の合計額でカンパニーオフィスがあるステーションの施設などが強化されていくよ。投資は今は施設、行政サービス、研究プロジェクトの3つだけだね」


 彼方はオフィスの投資についてテキストを読み上げていく。


「まずは施設からみていこうか。ええっと、施設に投資するとマーケットの倉庫などが建てられたりして、商品の種類や交易品の取引量が増えたり、交易品を大量に売買しても相場が変動しにくく安定するみたい」

「合計50口………つまり、5000万クレジットで特殊施設としてカジノがアンロックされ、プレイヤーがギャンブルで遊べたり、収益の一部が投資したカンパニーに配当されるんだって。その後も総額で特殊施設がアンロックされていくよ」


 彼方が施設投資について説明し、後ろから覗き込んでたノエルが指をさして特殊施設について解説する。


「行政サービスは投資すると、カンパニー所属プレイヤーがオフィスのあるステーション内のサルべージや船の修理費用などが割引されるんだって」

「こちらも合計金額でマーケットでお得意様限定販売的な感じで特殊アイテムやサービスが受けられるそうです。楽しみですね」


 続いて彼方はサービスに投資するとどうなるか解説し、鈴鹿が合計金額でアンロックされる項目を説明する。


「研究プロジェクトは………うわ、凄い量!!」


 研究プロジェクト部門を確認すると大量のテクノロジー項目が表示され、彼方がその量に驚く。


「えっと、こっちは投資すると研究プロジェクトが開始されて、投資額によって研究速度が変わるみたい」

「事前にこの研究を完了させるとどんなボーナスがあるのかわかるのはありがたいですね」

「施設はステーション利用者全体に影響があって、行政サービスと研究効果は投資したカンパニーメンバーのみだって」


 彼方が研究施設投資だけ違うルールであることを説明して、鈴鹿とノエルが投資の補足をする。


「それじゃあ、まずは施設に投資してみるね。その前にどう変わるか投資前のステーションの商品一覧を確認してみよう!」


 そう言って彼方はステーションマーケットにアクセスして商品一覧を確認する。


「それじゃあ、まずは一口投資!」


 彼方が施設に投資すると、ステーションマーケットの商品在庫数が増えたが、新しい商品は現れなかった。


「こんな感じで変動するんだね」

「カンパニーが多いステーションほどかなり有利になりそう」


 施設投資でどう変化するか確認した彼方とノエルが感想を述べていた。


 

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