第39話 お爺ちゃん、アダマンティウム鉱床を掘る


「メタボーマンさんはまだログインしてないか」


 翌日火曜日、家の用事を終えた源三郎はギャラクシースターオンラインにログインすると、フレンド一覧でメタボーマンがログインしてるかチェックする。


「メール送って、ログインするまでは輸送マラソンでもするかの」


 相談事があるとメタボーマンにメールを送り、源三郎はカンパニーの金策の為に輸送マラソンを開始する。


「む、メタボーマンさんがきたか」


 何度か輸送マラソンを繰り返していると、メタボーマンからビデオチャットのお誘いがくる。


「よお、メール読んだけどなんか相談したいことがあるって?」

「はい、アノマリー探索ミッションでアダマンティウム鉱床というのを見つけたんじゃが、スキルと装備不足で掘れなくて」


 ビデオチャットにログインすると、ルーム作成者のメタボーマンが話しかけてくる。


「それ当たりじゃねぇか! 金出すから掘らせてくれ」

「おお、そうなんですか? 掘るのに必要なスキルと装備教えてくれたら料金は結構です。あと見学させてもらえます?」

「それだけじゃこっちが貰いすぎだ。採掘量にもよるがわけるから現地で会おう。座標くれ」


 源三郎はメタボーマンに座標を送ると、輸送マラソンを切り上げて合流しにいく。


「おや、また船を変えたんですか?」

「こいつはトルカと言ってアダマンティウムとかレア鉱物用だ」


 合流地点に向かうと、やじろべえのような形をした船がいた。


「前のと違いはなんですかな?」

「アドベンチャーは鉱石の容量圧縮特化。こいつは鉱石容量圧縮がない代わりに採掘速度特化だ。アダマンティウムとかレア鉱石は一般鉱石と違って採掘量が少ないからな」


 源三郎が船の違いを聞くと、メタボーマンは以前のっていた船との違いを教えくれる。


「へー、そうなんですか」

「ここら辺は安全だけど、辺境とかだとレア鉱石狙いのプレイヤーキラーやハイエナがいるから速度が重要になるんだ。アーマメントも移動と採掘速度強化するやつだ」

「ハイエナ?」

「自分で鉱床探さず、他人が見つけた鉱床を横取りする奴らさ」


 源三郎はハイエナと言う聞きなれない言葉の意味をメタボーマンに聞き返し、ハイエナがどういう行為か教えてもらうと、このゲームにそういう性根の人物がもいるんだなと思った。


「所で、アダマンティウムって何に使えるんです?」

「ああ、普通の生産アイテムにそいつを使うとレアリティ等級が上がる。生産スキルレベルと投入した量によってレアからレジェンドまで変わる」

「お詳しいですねえ」

「ハプシエルが何回か見つけてな、あれこれ試してわかった」


 そんな話をしている間に目的地であるアダマンティウム鉱床の小惑星に到着する。


「この時間帯ならないと思うが一応プレイヤーキラーとかいないか見張ってくれるか?」

「わかりました」


 メタボーマンはマイニングカッターをアダマンティウム鉱床に照射し始め、源三郎は小惑星周辺を巡回する。


「終わった、さっさと戻ろう」

「結構かかりましたな。たしかにこれだけ時間がかかるとプレイヤーキラーやハイエナ警戒するのもわかります」


 実時間で10分近く採掘し続けていたのを見て源三郎は思わず言葉を漏らす。


「採掘時間短縮船でこれだからな。これだけ手間かけて採掘量は100も行かない」

「うわぁ………」


 採掘量を聞いて源三郎はうんざりした声をあげる。


「じいさん、この後は予定あるか?」

「いや、何もないから輸送マラソンでカンパニーの投資資金稼ごうかと」

「ならまた護衛手伝ってくれ。TR3の採掘ミッション、NPCの海賊が出没するんだわ。海賊のドロップ品は全部そっちで」

「了解じゃ」


 ステーションに戻る途中、メタボーマンからまた護衛を依頼され、源三郎は了承する。


「そういえばじいさんはTR3いけたか?」

「昨日受けれるようになった」

「ならこのミッション受けてくれ、その間に俺は船を乗り換える」


 メタボーマンが提示したのは連邦南部辺境にある星系での採掘、源三郎が所有している船だと最低でも5回はワープしないといけない距離だった。


「お待たせ、受けてくれたか?」

「いや、このクエスト距離が………」

「それなら安心しろ、あんたの船は俺が運ぶからクエスト受けてくれ」

「はい?」


 戻ってきたメタボーマンはをみて、源三郎は申し訳ないように依頼を断ろうとすると、メタボーマンは笑いながら大丈夫だと源三郎の肩を叩く。


「これは………」

「テック3の採掘船だ。じいさんのテック2までなら最大3機までドッキングできるんだわ」


 メタボーマンにいわれるままにクエストを受けて宇宙に出る源三郎。


 先に宇宙に出ていたメタボーマンの船は一言でいえば先割れスプーンみたいな形の船で、先端のスプーンのような形のコクピット、4門のマイナーカッター。細長い胴体には追加の貨物室が両サイドに3つ、後部にドッキングベイがあった。


「ドッキングベイにくっついてくれたら俺が牽引するから」

「こんな船もあるんですなあ」

「TR3以上のミッションやクエストになるとテック3以上の船が必要になるぜ」


 源三郎がメタボーマンの船に見とれていると、メタボーマンが船について軽くアドバイスする。


「わしもそろそろ乗り換えかのう………」

「まあ、財布と相談だな。テックの数値が高いほど強いが、その分値段も高いから破壊されるときつい。とはいえ輸送も探索もTRが上になると戦闘を視野にいれないとな」


 昨日のノエスタとの戦闘では鈴鹿のジャミングがなければどうなっていたかわからない。

 源三郎が乗り換えについて考えていると、メタボーマンはテック3以降のメリットとデメリットを説明する。


「さて、ドッキングしたか? 出発するぞ」

「よろしく頼む」


 源三郎が操縦する戦闘用宇宙船伍堂がメタボーマンの船にドッキングするとワープ準備に入る。


「こっちはなにもしなくていいんだ」

「ワープの燃料も俺の船だけだ。将来的には格納できる船を母艦にして遠くの戦場に運ぶとかあるだろうな」


 メタボーマンの船がワープに入るが、源三郎側は特になにもしなくていい。

 ミッション目的地までメタボーマン任せで源三郎は雑談に興じる。


「さて、もうすぐ目的地だが………海賊が沸いてるな。じいさん、頼めるか? ヤバかったら俺の船盾にしてくれ」

「任せてくれ」


 目的地であるアステロイドベルト帯にはNPC海賊船が2機徘徊しており、源三郎の伍堂が排除に向かう。


 ある程度近づくと、海賊船も伍堂の存在に気づいて向かって行き、射程距離に入るとレーザーを撃ってくる。


「ふむ、それほど脅威ではなさそうじゃな」


 レーザーを回避したり、盾で受けたりして近接距離まで近づけば、剣で一回斬りつけただけでバリアが剥がれて相手の船のヒットポイントが半分以下になる。


 源三郎はダメージを受けた方をオートタレットで攻撃しながら、もう1機の無傷の海賊船を剣で斬る。


「片付いたぞ」

「助かる」


 戦闘開始から3分も経たずにNPCの海賊船は宇宙の藻屑となり、源三郎は残骸からドロップ品を回収しながらメタボーマンに声をかける。


「それじゃあ、採掘始めるから護衛頼むな」

「心得た」


 メタボーマンの船がアステロイドベルト帯に到着すると、広範囲スキャンで周囲の小惑星から鉱石の埋蔵率を調べあげる。


「おおっ! こりゃ凄い!」


 メタボーマンの船から照射されるマイニングカッターは極太のビームの形をしており、秒で小惑星が消えていく。


「じいさん、このエリアの鉱石はなくなったから次のアステロイドベルト帯に行くぞ」

「壮観じゃのう」


 5分もしない内に最初のアステロイドベルト帯にあった破壊できる小惑星が全て破壊されるのを見て源三郎は目を白黒させる。


「俺のキャラと船は採掘にとことん特化したからな。カンパニーのステーション投資で採掘系にボーナスつくのもアンロックしていってるしな」

「なるほど」

 

 源三郎とメタボーマンはそんな話をしながら次のアステロイドベルト帯へと向かった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る