第36話 お爺ちゃん、私設刑務所へいく その1
「君達、丁度いいところで出会えた。また仕事受けてくれないかね?」
カンパニーを設立してハウジングルームから出ると、以前ストーリークエストをくれたNPCのブレイドが現れて、源三郎達に話しかけてくる。
「仕事ってなぁに?」
「以前救出したモルガン君を覚えているかね? 彼が君達と一緒にいってほしい場所があると言って探しているのだよ。詳しいことは私の事務所でどうかね?」
彼方がクエスト内容を確認すると、ブレイドは頼みたい仕事の触りを伝えてくる。
源三郎達はブレイドが経営するオフィスへと向かう。
「やあ、この間は助けてくれてありがとう!」
ブレイドのオフィスに到着すると、過去にクリアしたクエストNPCのモルガンが出迎える。
「何かお願いしたい仕事があると聞いたのですが」
「ああ、実は祖父が収監されていた私設刑務所から祖父が亡くなって遺品を引き取ってしてほしいと連絡が来てね。出来ればボディーガードとしてついてきてほしいんだ」
鈴鹿が依頼内容を聞くと、モルガンは源三郎達に依頼内容を伝える。
「遺品回収にボディーガード?」
「ああ、以前祖父がバベルステーションの元ステーションマスターで、戦争時代に財宝を隠した話をしただろ?」
ノエルは遺品を回収しにいくだけのことに護衛を雇う意味がわからず聞き返す。
モルガンは少しイライラした様子で部屋の中を動き回り祖父の話をする。
「ただの都市伝説なのに、アイオフヘブンと言う犯罪組織に私が誘拐されそうになったことで、また幾つかの犯罪組織などがあそこが動くくらいだからやっぱり隠した財宝はあるかもしれないと動き出したんだ」
モルガンは椅子に座ると、うんざりした様子でまた生活が脅かされてると伝える。
「だから私は考えた。祖父が隠したと言われる財宝が本当に実在するか確認して、ないならないと世間に知らせようと」
「えーっと、逆にあったら?」
「地球連邦政府に全額押し付ける。私が持っていても命と一緒に奪われるだけだ」
アイオフヘブンから助けた後も、他の犯罪組織などから何らかの接触があったのか、モルガンはうんざりした様子で語る。
彼方が実際に財宝があった場合の話をふると汚いものでもみるような表情で連邦に丸投げするとモルガンは話す。
「その私設刑務所にいくまで護衛を?」
「取りあえず遺品を回収してバベルステーションポリスの元に戻るまでお願いしたい。その私設刑務所も信用ならないんだ」
ノエルが護衛の期間を聞くと、モルガンは遺品を回収してステーションに戻るまでと答える。
「そういえば、その私設刑務所とはどんな場所なんだ?」
「分かりやすくいえば政府や個人が金を払って政治的な理由や世間体などから手元に置けない囚人を収監させるステーションらしい。レオンハートと言う大規模傭兵団が副業で経営しているが、色々良くない噂があって怖いんだ」
源三郎が私設刑務所について聞くとモルガンは件の私設刑務所について話す。
「良くない噂って?」
「裏取引で囚人を製薬会社などの違法な人体実験の検体として売買しているとか、金を払って表向きは囚人として収容されて匿ってもらうとか………」
「そんなことして騒がれないの?」
「ステーションは連邦と自由同盟の国境境界にあって政治的に介入しにくい。双方手元に置けない囚人を押し込んでるので下手に騒ぐとなんて言われて動かない」
「うわぁ………」
彼方がその私設刑務所の良くない噂について聞くと、モルガンは青い顔して答える。
「報酬は出す! 万が一隠し財産があったならその財産から一割払う。もうこんな生活はうんざりなんだ」
「連邦政府とも話はついてる。刑務所を運営してる傭兵団と揉めても政府がケツもちしてくれるし、覚えも良くなる」
モルガンは精神的に追い詰められてるのか、頭をかきむしって怒鳴る。
ブレイドがこっそり政府案件だと伝えると、ウィンドが表示されて、クエストを受けた時点で源三郎達にかけられてる密輸の注目度がリセットされるとテキストメッセージが書かれていた。
「へー、こんなメリットもあるんだ。どうする?」
「受けてみようよ」
「今日の配信なにするかまだ決めてませんし、丁度いいと思います」
「わしも文句はないな。この注目度あると臨検がしつこくて」
テキストを読んだ彼方が仲間達にどうするか聞いて、満場一致でクエストを受けることになった。
「あれが私設刑務所のステーションか」
モルガンのクエストを受けた源三郎達はモルガンの祖父が服役していた私設刑務所のステーションに向かう。
「ここから見ると、普通のステーションに見えるね」
「元々は農業や畜産を目的にした農耕ステーションだったのですが、破綻して企業や政府に売られて、今はレオンハートの私設刑務所です。公式発表では収容している囚人の数は約45000人です」
事前に調べていたのか、モルガンが刑務所ステーションの来歴と収容者数を教えてくれる。
「こちらはレオンハート所有の私設ステーションだ。用件を述べよ」
「私はモルガン。そちらに収監されて獄中死した祖父の遺品を受け取りに来た」
ある程度ステーションに近づくとステーション側から通信が入ってくる。
「これよりスキャニングを行う。爆発物や囚人の脱走を幇助する物がないか確認させてもらう」
ステーション側から高出力のスキャナーが照射される。
「問題なし、ドッキングベイ許可する」
源三郎は私設刑務所ステーションにドッキングしてエアロックを抜けてステーション内へと足を踏み入れる。
「意外ときれいですね」
「こう、汚いイメージがあるよね」
「バベルステーションより綺麗かも」
ステーション入り口は整理整頓され、清掃も行き届いてる。
鈴鹿とノエルがステーションの内装をみてまわりそんな感想を述べて、彼方がバベルステーションと比べる。
「ようこそ、レオンハート私設刑務所へ。現在遺品保管室までの通路を構築中です。案内スタッフに付き添って引き渡し場所の待合室でお待ちください」
「ん? 通路を構築中?」
ステーションの通路を進んでいくとバトルスーツで武装した兵士が話しかけてくる。
「ステーション内は脱走防止のために限られたルート以外は通路をはずしており、今回のような引き渡しや面会時のみ通路が構築されます」
兵士はそれだけ言うと、案内スタッフの元へ行けとジェスチャーする。
「武器は預からなくていいの?」
「脱走防止や内外の襲撃に備えたセキュリティを各所に構築しており、巡回する兵はレオンハートの傭兵団で構成されております。あなた方が暴れたとしても鎮圧できますので」
案内人について行こうとした彼方が自分達の武器を預かろうともしないことを疑問に思うと、レオンハートの兵士が預からない理由を教えてくれる。
「ご案内します。現在地は第2独房棟になります。ご覧の通り、受刑者の管理は徹底されています」
案内人は細長い通路のガラス窓の向こう側を指差す。
源三郎達がガラス窓の外に視線を向けると、まるで蜂の巣のような穴が壁一面にあり、穴の一つ一つに冷凍カプセルに収容された囚人達のの姿が見えた。
「独房は全て自立型モジュラーユニットカプセルになっています。万が一問題が起きてもカプセルごとエアロックから廃棄することで鎮圧できます。当ステーションは同様の独房が100を越え、万単位の囚人の収容を可能としています」
案内人は自分達のステーションのプレゼンをしながら先へと進む。
「万が一脱走や暴動、襲撃が起きてもモジュラーブロックごとに封鎖やパージして対処できます」
「でもこれだけすごいと維持費とかも大変そう」
案内人の解説を聞きながら窓の外をみていた彼方が独り言のように呟く。
「そこは囚人を冷凍睡眠させることで食事や管理のコストダウンをしています。また、囚人の出身惑星やステーションから費用を一部負担してもらっています。凶悪犯を惑星外に隔離できるとなれば喜んで負担してくれますよ」
案内人はにっこり笑いながら彼方の疑問に答える。
「負担を拒否されることはなかったのか?」
「いいえ、何度かありましたよ。それなら我々は囚人は管理できませんので、出身惑星やステーションに釈放するとご説明するだけです。ただ、釈放場所と釈放時間は通達しませんがね」
「脅迫じゃないか………」
源三郎が経費を拒否したらと言うと、案内人は嗜虐的な笑みを浮かべて拒絶した場合の対処法を伝える。
それを聞いたモルガンはぎょっとした顔で呟いた。
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