第34話 お爺ちゃん、アノマリー探索ミッションに挑戦する。その2


「ふむ、アノマリー探索ミッションと言うのはこれか」


 翌日の月曜日、食事やゴミ出しを終えた源三郎はギャラクシースターオンラインにログインすると、早速端末からメタボーマン達が言っていたアノマリー探索ミッションを受ける。


 アノマリー探索ミッションは大まかな座標域に変な反応があるから調べてくれと言う文章だけで、何が発見できるかはランダムらしい。


 ミッション報酬も発見物によって価値が変わるため、アノマリー探索ミッションはちょっとしたバクチになっている。


 源三郎は端末から受けられるアノマリー探索ミッションを全て受諾すると、ハプシエルから買い取った探索船に搭乗してステーションからそれほど遠くない座標へと向かう。


「この辺りかの?」


 座標に到着するが、目視できる範囲にはなにもないように見える。

 スキャニングを始めると探索中と言うテキストと数値バーが表示され、100%になると少し離れた座標に漂流物があると知らせてくる。


「これは………貨物コンテナか? 中身は………クレジットか」


 座標に向かうと貨物コンテナが漂っており、中身を回収する。

 貨物コンテナに入っていたのは数千クレジットだけで、今回はハプシエルから聞いていた外れよりのミッションだったようだ。


 貨物コンテナの中身を回収した時点でミッションもクリア扱いになり、追加で100クレジットほど報酬が貰えた。


「次のミッション座標に向かうか」


 源三郎は次の座標へと向かい、またスキャニングをする。


「うん? 今度の目標物は移動しておるのう?」


 スキャニングを完了すると目的物の座標が表示されるが、ゆっくりと移動している。


「あれか………」


 移動する目的物の座標に到着すると、アンノウンと表示される漂流物がゆっくりと宇宙空間を移動している。


「ユーザー、正体不明の漂流物を回収しました」


 トラクタービームで漂流物を回収すると、【考古学スキルで解析中………0%】と言うテキストが表示され、徐々に数値が増えていく。


「ユーザー、正体不明の漂流物を解析する場合、ユーザーがアクティブにしている該当スキルレベルとメンバーシップに加入しているかで解析速度が変わります。また、漂流物によってはスキルレベルが高くても解析に時間がかかる場合があります」

「そういう場合、解析速度を早めることは出きるのか?」


 源三郎が漂流物の解析を待っていると、サポートロボットのロボが解析について解説を始める。


「何種類かあります。1つは課金アイテムで解析速度を上げれます」


 ロボは源三郎の質問に答えて、公式サイトの課金アイテム一覧から解析速度を早めるアイテムを紹介する。


「他には?」

「未解析の漂流物を所有する状態でステーションに戻りますと、有料で解析サービスが表示されます」

「そんなサービスがあったのか」

「次にユーザーが所有するハウジングルームか、宇宙船に解析装置を設置して、その装置を利用すると解析速度にボーナスが付与されます」

「それはほしいのう………」


 ロボの解説を聞きながら、源三郎はクエスト報酬でもらった倉庫にその装置を設置するか考える。


「最後にカンパニーが所有するステーションや惑星に大掛かりな施設や研究開発で解析速度を上げることができます。現代では以上が解析速度を上げる方法になります」

「これは彼方に話したほうがいいのう」


 源三郎は髭を弄りながらそんな事を考え、解析が終わるのを待つ。


「ユーザー、解析が完了しました。どうやらこれはワープ技術が生まれる前の地球が送り出した亜光速探査機です」

「こりゃまた年代物が見つかったな」


 解析が完了すると、漂流物のアイテム名称が亜光速探査機に変わる。


「ユーザー、探索データを抽出することが出来ますがいかがしますか?」

「抽出するとどうなるんじゃ?」

「データを抜き取った探査機はジャンク品になります。マーケットに二束三文で売却かハウジングルームのオブジェに利用できます」


 発見して解析したら終わりだと思っていた源三郎はロボからデータ抽出を聞いてどうするか悩む。


「逆に抽出しなければ?」

「観測データの付加価値がついてマーケットに売却かオブジェです」

「売却価値が違うくらいか………データの中身はわからんのか?」

「ランダムです」

「なら抽出してくれ」

「了解しました」


 年代物の探査機からデータを抽出すると、アイテム欄に座標が表示されたデータストレージが追加される。


「ふむ、そんなに遠くないな。覗いてみるかのう」


 座標データをスターマップに照らし合わせると同じ星系内にある近くのアステロイドベルト帯を指しており、源三郎は座標に向かう。


「ふむ? 座標はこの小惑星を指しているが………スキャニングしてみるか」


 源三郎がアンティークの探査機から抽出した座標データの場所に向かうと、何処にでもあるような小惑星があった。


「うん? 時間がかかるな?」


 スキャニングを開始するが、中々%が進まない。

 源三郎は最初、画面を見てスキャニングが終わるのを待っていたが、3分ぐらいで待ちくたびれてチャットチャンネルを開いて人がいる雑談チャンネルに入室して時間を潰す。


「やっとか! アノマリー探索も本腰いれるなら装備しっかりさせんといかんな、こりゃ」


 実時間で30分過ぎてスキャニングが完了するアラームがなる。


「アダマンティウム鉱床? レア鉱石かの?」


 源三郎がスキャニング結果を見ると、目の前の小惑星にはアダマンティウムと言う鉱石が埋蔵されていると表示される。


「一旦戻って採掘してみるか」


 座標データを保存して源三郎はステーションに戻って、採掘装備に切り替えて再度小惑星に向かう。


「ユーザー、装備性能とスキルが低くて採掘できません」

「ありゃま」


 採掘スキルチップをセットしてマイニングカッターを照射すると、サポートロボットのロボが採掘できないと報告してくる。


「明日メタボーマンさんに聞いてみるかのう………」


 どれだけスキルと性能があれば目の前の小惑星からアダマンティウムを採掘できるかわからないので、源三郎は採掘を諦めて残りのアノマリー探索ミッションの消化に切り替える。


「うーむ、大抵クレジットがあるコンテナばかりじゃのう………TRの高いアノマリー探索ミッションに挑戦してみるか?」


 アダマンティウムの鉱床を発見した後も何度かアノマリー探索ミッションに挑戦するが、アンティーク探査機のようなイベントは起こらない。

 宇宙空間に漂う貨物コンテナからお金や少量の交易品や生産資材を拾うだけだった。


 少々飽きてきた源三郎は戦闘の可能性もあるTRの高いアノマリー探索ミッションに挑戦する。


「モーガード星系は何処じゃ?」


 TR2のアノマリー探索ミッションを受諾した源三郎。

 ミッション内容はモーガード星系で異常な電波を探知したので調べてこいと言うもの。


「こりゃまた辺境よりじゃな、この船だと3回もワープしないといけない」


 スターマップで目的のモーガード星系を探すと、地球連邦領域ギリギリにある星系だった。


「時間帯的にこのミッションが最後じゃな」


 リアル時間を確認したらあと2時間もしたら彼方達が食事や課題を終えてログインする時間だった。


「ミッション座標は………あの惑星か」


 モーガード星系にワープアウトした源三郎はアノマリー反応があった惑星に向かう。


「ガス惑星?」

「警告、これ以上惑星への接近は危険です」


 目的の惑星は木星のようなガス惑星だった。

 船の性能的に下手に近づくことができず、船から警告アラームが鳴り響く。


「スキャン強化のアーマメントがなければ諦めるとこじゃったな」


 限界までガス惑星に近づくと、源三郎はガス惑星にスキャニングを始める。


「なっ………なんなんじゃ………あれは……」


 数分かけてスキャニングを終えると、ガス惑星に生命反応があり、ガスの海を回游する超巨大クラゲの大群を発見する。


 クラゲ達は悠々とガスの海を泳ぎ、虹色に発光して幻想的な風景を作り出す。


「ユーザー、異星生物学スキルがないのでこれ以上は対象を調査できません。この発見物を報告して報酬を得るか、異星生物学スキルを習得して再度調査してください」

「ふーむ、覚えるスキルが増えていくのう………」


 ガスの海を回游するクラゲに見とれていた源三郎はロボの声で我にかえり、スキルを覚えて再調査することを決めると、彼方達と合流するためにタスケン星系のバベルステーションへと向かった。






 


 




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