第33話 お爺ちゃん、アノマリー探索ミッションに挑戦する。その1


「凄い金額になったのう………」


 メタボーマンとYTと一緒にお互いに飽きるまで輸送ミッションを繰り返したおかけで、源三郎の所持金は800万クレジット近く溜まり、TRも3まで上がった。


「でもカンパニー運営してたら100万単位なんて端金だよ」

「明日は早出だから俺はログインできないから輸送ミッションには付き合えないし、YTも昼間は仕事だ。源三郎さん、良かったら探索ミッションやってみたらどうだい?」

「探索ミッションですか? 孫から聞くとかなり時間がかかってめんどくさいとか」


 ミッションを終えてステーションのカフェで休憩しているとメタボーマンが探索ミッションを勧めてくる。


「それは惑星調査だな。俺が勧めるのはアノマリー探索だ」

「アノマリー? なんですかな、それは?」


アノマリーと聞きなれない単語に源三郎はメタボーマンに聞き返す。


「意味は異質な出来事、このゲームでは異質な反応を探知したから代わりに調べてくれってやつだ」

「正式サービスから追加されたミッションで面白いし、ベータテスト時代は惑星探索しかなくて、皆ベータテスト時代のイメージで探索語るから知らない人多いんだよねえ」

「ほうほう」


 メタボーマンとYTがアノマリー探索について語る。


「星系によってアノマリー探索の内容も変わるよ。普通に破壊されたNPC船の残骸だったり、豊富な鉱石が含まれる小惑星だったり、エイリアンの痕跡だったり」


 YTがアノマリー探索ミッションの内容を源三郎に教える。


「残骸からはクレジットに生産素材や設計図、かなりレア確率だが修理可能な船なら直して自分の船に出来る。小惑星なら採掘すれば儲かるし、座標教えてくれたら俺が情報料払う」

「因みにエイリアンの痕跡からはストーリークエスト始まったりするから、彼方ちゃんの配信にも役立つんじゃないかな?」

「明日はそれをやってみます」


 YTとメタボーマンの2人の話を聞いて興味のわいた源三郎は、彼方達が戻ってくるまでの間にアノマリー探索をやってみることにした。


「戦闘用の船でもいいけど、せっかくだし探索用の船も用意したら? お金にも余裕あるし、量子ガレージまだ余裕あるでしょ?」

「そうですなあ………何がいいですかのう?」


 YTは源三郎に探索用の船の購入を勧め、源三郎は自分の量子ガレージの空きを確認してお勧めを聞いてくる。


「ちょっと待ってくれ。うちのカンパニーで探索メインでやってるやついるから話聞いてみる」


 メタボーマンがカンパニーチャットを開いて、件の探索メインのメンバーに呼び掛ける。


「通常のビデオチャットに招待するからきてくれ」

「わかりました」


 メタボーマンからビデオチャットの招待を受けて、源三郎はビデオチャットルームに入室する。


「あらっ! 渋いイケオジじゃないのっ!」

「のわっ!?」


 入室と同時に野太い声でオネェみたいなしゃべり方をするゴリマッチョのドアップが源三郎の目前に表示され、源三郎は驚く。


「おい、ハプシエル」

「あら、ごめんなさぁ~い、ついイケオジでがっついちゃったわん」

「なかなか個性の強いお方ですな………」


 メタボーマンに怒られて画面から離れるマッチョオネェのハプシエル。

 ドラァククイーンのような衣装と化粧に髪型とインパクトだらけの外見だった。


「今北産業所属のハプシエルよん、ヨ・ロ・シ・ク」

「どうも、源三郎です」


 ハプシエルはウィンクと投げキッスしながら自己紹介をする。


「それでだけどぉ、源三郎ちゃんは探索に興味あるのよねん?」

「ええ、メタボーマンさん達からアノマリー探索について聞いてやってみたいなと。それで探索用の船のお勧めを聞いたらハプシエルさんを紹介されました」

「凄い、ハプシエルと普通に会話できてる」


 ハプシエルはしなをつくってくねくねと体をくねらせて話しかけてくる。

 YTはハプシエルにドン引きせずに普通に会話している源三郎を見て尊敬の眼差しを向ける。


「そぉうねぇんっ、良かったら私のお古使わない?」

「いや、そういうのは………」


 ハプシエルは小指で自分の唇をなぞりながら考える仕草をして、名案を思い付いたと手を叩いて自分の船を勧めてくる。


「遠慮しないでぇん。私ね、捨てられない女でさぁ、使わないのにもったいないとか思ってもの溜め込んじゃうのよ。量子ガレージもパンパン満員でね、空けるのに協力してよんっ! ただでいいからさぁ」

「それでもただはよくねえからNPCの売却値段は請求しろよ」


 ハプシエルは大胸筋をピクピクさせてアピールしながら船を譲ろうとすると、メタボーマンから注意が入る。


「えぇー、一番初期のやつよん? ただでいいじゃない」

「駄目だ、そういうのはよくない。譲る気ならチャットはこれで終わりのするぞ」


 ハプシエルはくねくねしながらそれぐらいはと言うが、メタボーマンははっきりと拒絶する。


「あー、わしも代金払ったほうが気持ち的に軽いし、そうさせてくれんかの?」

「んー、2人がそういうなら仕方ないわねん。取りあえず、これが船のスペックよん」


 源三郎も頭を下げてお願いすればハプシエルも頬に手を当ててしかたないと妥協してくれる。


「探索船のヘロンか………アーマメントはスキャニング特化か」

「最初は戦闘とかないしぃ、先ずはスキャンでアノマリーを遠く素早く発見することが優先よん」


 源三郎に売り付ける探索船のスペックを見て、メタボーマンは悪くないとお墨付きする。

 宇宙船の形はスペースシャトル型で、アーマメントで背中に巨大なアンテナが装着されている。


「これでいくらですかの?」

「ちょっと待ってね、マーケットで見積もりだしてもらうから………えーっとアーマメント含めて8万クレジットよん」


 源三郎が値段を聞けばハプシエルは自分の船の売却価格を調べて提示する。


「買います」

「じゃあ、そっちまで船をもっていくから」


 輸送ミッションで荒稼ぎした源三郎からすれば端金だったので即決で購入を決めると、ハプシエルは船を源三郎達がいるステーションまで運んでくれることになった。


「ところで、アノマリー探索にあったほうがいいスキルとかありますかの?」

「結構いるわよぉ。必須はスキャン、セキュリティ、考古学この3つねん。アノマリー探索するなら借金しても覚えなきゃ駄目よん」


 ハプシエルが船を運んでる間、源三郎はアノマリー探索について質問する。


「スキャンはアノマリーを発見する距離と速度。これが低いとだいぶ近づかないといけないし、TRの高いアノマリーだとNPC海賊とかの襲撃を受けるから、素早く見つけて、襲われる前に離れる」

「こないだついていってひどい目にあったよ。船も壊れるし」


 ハプシエルはスキャンについて説明すると、YTがうんざりした顔でぼやく。


「あれはPKのせいで、あたしのせいじゃないわよ」

「それはわかってるよ」

「PKもいるんですか」

「うん、対人目的の人や海賊とかロールプレイで襲ってくる人もいるよ」


 PKことプレイヤーキラーの話題が出てきて源三郎も聞き返す。


「治安度の低い星系とかは気を付けたほうがいいわよ」

「気を付けます」

「話戻すけど、セキュリティはアノマリーの発見物で宇宙船の残骸だとコンテナがロックされてたりするわ。難易度によってはロック解除に失敗すると自爆して船にダメージ与えるし、戦利品は藻屑になるしくたびれ儲けよ」


 ハプシエルはセキュリティスキルについて説明する。


「考古学はエイリアンの痕跡調べるのに必須よん。これがないと価値のないガラクタを発見したとしか説明されないのよ。スキルレベル毎に発見物が何か解析速度が変わって、100%解析完了すると、設計図などのアイテム、ストーリークエストのトリガー、発見物としてアカデミーやコレクターに売れるわ」

「これがすごく美味しいんだよね! こないだ発見したので1000万で売れたんだっけ?」

「それは夢がありますなあ」


 ハプシエルは考古学スキルについて説明すると、YTが話に入ってきて過去最高額の売却価格を教えてくれる。


「今後はわからないけど、正式サービスから始めたプレイヤー達が外れと勘違いしてギャラクシーマーケットでアノマリーのガラクタ売ってたりするから、これも狙い目よん。でもたまにガチで外れもあるからバクチ要素でもあるわね」

「100万クレジットで購入したガラクタが本当にガラクタだった時はまじでやる気失せた」


 ハプシエルがギャラクシーマーケットでのガラクタ購入の話をすると、メタボーマンがため息つきながら外れを掴んだ時の話をする。


「あとはアノマリー探索続けてたらどんどん必要なスキルが出てくるから、そこはキャパとかと相談ね、そろそろステーションに到着するわん」


 そんな話をしている間に、ハプシエルはステーションに到着する。


「ありがとうございます」

「いいのよん、探索仲間増えるのは歓迎だし、源ちゃんはいい男だからあたし個人も知り合いになれて嬉しいわ。フレンド登録よろしいかしらん?」


 ハプシエルを出迎えた源三郎は船を購入してフレンド登録もする。


 その後は4人で輸送ミッションを何度か繰り返してログアウト時間になったので解散した。


 


 

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