第32話 お爺ちゃん 輸送ミッションに挑戦する2
「さて、2人は何処じゃろう?」
YTとメタボーマンがいるステーションに到着した源三郎はステーションの中央ホールで2人を探す。
「おーい、源三郎さーん、こっちこっち!」
「よう、アーマメントつけといたぞ」
YTが元気よくピョンピョン跳び跳ねながら両手を振って挨拶する。その横にはメタボーマンもいた。
「おや、お二方の名前の横にエンブレムと【今北産業】と言う文字がありますが、これは?」
「私達が加入してる生産系カンパニーだよ」
二人と合流した源三郎は、二人の頭上に表示されるキャラクターネームの上に今北産業と言う文字とエンブレムが表示されていた。
「ほー、カンパニーに入るとそんな風に表示されるんですな」
「それよりも、船を渡すからトレード同意してくれ、アーマメント込めて38000クレジットだ」
「いや、お手数かけます」
メタボーマンがトレードを送信し、源三郎が同意すると、2人の視界にトレードウィンドが表示される。
メタボーマンからは拡張コンテナが搭載された輸送船サイジール。
源三郎が現在メインで使っている悟堂と比べると積載量以外は何もかもが大幅に下回っている。
源三郎は代金を提示して双方が同意してトレードは無事に完了する。
「それじゃあ、源三郎さんは船乗り換えたら、このステーションのTR1輸送ミッション、全部受けて」
「全部ですか?」
「そそ、拡張コンテナ2つ着けたサイジールでちょうど満杯になるの」
YTに言われて源三郎はサイジールをメインの宇宙船に設定し、TR1輸送ミッションを全部受ける。
輸送ミッション報酬の合計がちょうど10万クレジットになる。
「あと向こう側でも似たミッション受けて往復するだけで往復するだけ20万、これを飽きるまで繰り返す」
「こんなに簡単に金策して良いんかのう?」
これまで数万単位でしか儲けたことのない源三郎からすれば破格の報酬に感じて、経済バランスを心配する。
「ちょっとネタばらしになっちゃうけど、カンパニー運営してたら、今回のミッション報酬とか雀の涙だよ」
「スキルチップのレベル上げも5レベルから合成代ガッツリ上がるし、船やアーマメントとかも上を見れば数百万~数千万単位が当たり前だし、ゲーム内経済のバランスはとれてると思うぜ」
源三郎の呟きが聞こえたYTとメタボーマンが大丈夫だとフォローしてくれる。
「俺らはストーリークエストとかやってないからTR上げるなら輸送ミッション繰り返すしかないからな」
「うちのカンパニー、生産メインで戦闘系苦手なエンジョイ勢が多いからね。それよりも出発しようよ」
「そうですな」
雑談をしながら源三郎達3人は宇宙船に搭乗して、宇宙空間で合流する。
「お二方の船はどちらも違いますね」
「俺のはバッシャーと言って、ワープ距離にボーナスがあって長距離輸送に適した船だ」
今回メタボーマンはいつもの採掘船ではなく、蜻蛉の形をした宇宙船だった。
「私のはリンクス、ちょっと改造してリペアドローンを飛ばして回復もできる輸送船だよ」
YTの船は弾丸のような形の宇宙船で、クラゲのようなドローンを射出してアピールする。
源三郎達はチームを組んで輸送ミッションの目的地へと向かう。
「そこの船団停まりなさい。密輸品を持ち込んでないかスキャンさせてもらう」
「またぁ? これで3回目だよ」
「わしのせいです、申し訳ない」
ステーションから出発して目的地へと向かう途中、源三郎達はNPCの地球連邦軍の臨検を受けて足止めを食らっていた。
「配信見てたけどなるほど、密輸をやって注目度が高いとこういうデメリットがあるのか」
スキャン中はエンジンを停止しないといけないため、YTはうんざりし、メタボーマンは密輸をやった配信を見て感想を述べる。
「しかし………ストーリークエストしてた時は全然臨検とかほとんど受けなかったんじゃが………」
「そうだよね、私配信見てたけど、その時は一度だけじゃん」
源三郎はしつこいNPC軍からの臨検を受けて首をかしげる、密輸を売買してた時の動画を視聴していたYTも同意する。
「推測だか………星系の治安度にもよるんじゃないかな?」
メタボーマンがボソリと呟く。
「メタボー、どゆこと?」
「配信を見ていたが、タスケン星系やレオン星系は地球連邦の辺境星系で治安度も低い。逆にいま俺たちがいるトーリマン星系は地球連邦の中心部に近いから治安度も高く、NPCの軍も巡回している」
「あー、なんとなく納得できる」
YTが聞き返すとメタボーマンは持論を解説し始める。
「臨検終了、違法品なし。協力感謝する。いっていいぞ」
そんな話をしている間に臨検は終わり、NPCの軍も離れていく。
「注目度下がるまで抜けた方がよいかのう?」
「別にいいよー、ミッションのチームボーナス美味しいし」
「俺も今日は仕事休みだから時間に問題ない。むしろ密輸に手を出した時の参考になった」
再三の足止めに源三郎は申し訳なくなってチームを抜けることをメタボーマン達に打診するが、2人は優しく源三郎を引き留める。
「もう目的地か、雑談してると移動時間が短く感じるな」
メタボーマンが言うように、軍の臨検トラブル以外は何もなく雑談しながら進んでいたら目的地のステーションに到着していた。
「荷物を運ぶだけで片道13万か………あの臨検がなければ片道5分前後かの、確かにこれは序盤の金策になるのう」
ステーションに到着してミッションの荷物を納品した源三郎。
元々の報酬額10万ににチームボーナスと会計スキルあわせての3万クレジットの報酬が手に入る。
「単調だし、戦闘ミッションのようなドロップ品とか臨時収入がないからな、ながら作業でもしてないと飽きる」
「帰りのミッション受ける前に私達は交易品売ってくるね」
「問題なければ見学してもいいかの?」
ミッション報告を終えると、メタボーマンとYTはミッションとは別に買い込んだ交易品を売りにいこうとするので、源三郎が後学のためについていこうとする。
「うーん、まあいいかな?」
「まあ、相場荒らされるほどでもないし、今後も何か頼むかもしれないしな、いいぞ」
「ありがたい」
メタボーマンとYTは少し悩むが同意する。
「今回売るのは嗜好品だ」
「支配エリアの辺境か中心部かで売れるもの読めるんだよ。辺境ならレアメタルや医療品。中心部なら娯楽、嗜好品など。無難なのは食料かな」
「えーっと、それは聞いてもいいのかの?」
メタボーマンが今回持ち込んだ交易品の品目を述べ、YTが交易のコツのようなものを喋り、源三郎は少し焦る。
「ある意味交易の基本だし、喋ってもいいよね?」
「まあ、戦闘メインよりの源三郎さんは今後も護衛とかちょくちょく手伝ってもらいたいし、まあいいか」
YTとメタボーマンはふたりで話し合って源三郎にも交易の基本を教えることにした。
「交易に必要なスキルは売買、発注、会計、デイトレードだ」
「売買と会計は知ってるが、残りのスキルはなんですかな?」
「んとね、発注スキルはあると購入量が増えるの」
メタボーマンが交易に必要なスキルを紹介していき、YTがスキルの効果を説明していく。
「源三郎さん、マーケットの食料の在庫数は?」
「ん? 2600となっておるの」
「私達は発注スキルがあるから食料品は万単位の在庫数があることになってるの」
「なるほど、デイトレードは?」
「こっちは各星系の交易品の相場が遠くにいても確認できる。スキルレベルが高いほど遠くの星系の相場がみえるが………ひとつだけ注意がある」
メタボーマンがデイトレードスキルについて話し始める。
「この相場は現実時間で一時間毎に更新されるから、次の更新時間までに相場崩される可能性もある」
「なるほど」
「交易品の売却と向こうで売る品物も買ったし、帰りのミッション受けにいこう」
そんな話をしている間にメタボーマンとYTは交易品を売りさばき、帰りの交易品を購入する。
源三郎は残念ながら輸送ミッションだけで貨物が満杯になるので何も買えなかった。
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