第31話 お爺ちゃん、輸送ミッションに挑戦する1


「まさか研究所がそんなことになっていたなんて………」


 異星生命体Xを倒し、レオン星系で受けたストーリークエストの報告をする源三郎達。

 研究所の結末を聞いた依頼人はショックを受けていた。


「とにかく子供達は私が責任をもって保護させてもらいます」

「よろしくお願いします」


 研究所の唯一の生き残りである子供達は依頼人が引き取ることになり、彼方達はほっとしている。


「産業スパイについてはこちらで調べてみます。何か解ったらまた仕事を依頼するかもしれません。こちらが今回の報酬です」

「20万クレジットにアーマメントの設計図!? 凄い報酬!」

「依頼人の言い方、続きのクエストとかありそう」

「この報酬から、難易度の高いクエストだったかも知れませんねえ」


 依頼人に報告することでクエストはクリア扱いになり、報酬が振り込まれる。


 1人20万クレジットとアーマメントと呼ばれる船に装着させる装備の設計図が数枚とかなり破格の報酬だった。


「さて、良い時間なので今日の配信はここまで。明日は私達リアルの用事があるから配信は早くて月曜日の夜になります」


 彼方がカメラに向かって締めの挨拶をする。

 視聴者達は明日はせっかくの日曜日なのに配信がないことを残念がっている。


 彼方達が通う聖クレプスキュール女学院では隔週の日曜日に女学園にある教会での行事があり、3人はそちらに参加することになっている。


「ごめんなさい、どうしてもはずせなくて………」


 申し訳なさそうに鈴鹿が頭を下げれば視聴者達はリアル大事と手のひらを返して鈴鹿をフォローする。


「それじゃあ、お疲れ様ー!」


 最後にスパチャした人のアカウント名を呼んで返事を返し、彼方達の配信は終了する。


 彼方達は配信で得たスパチャなどの収入は基本的に寄付に回している。


「ふー、お疲れ様。付き合ってくれてありがとうね」

「とても楽しいですし、気にしないでください」

「一気にお金貯まったね。カンパニー設立まであとちょっとだね」


 まだログアウトには若干の時間があるので3人は配信の反省会をする。


「わしの分もあわせて80万か………明日明後日と少し金策してみるかの」

「お爺ちゃん、いいの?」

「ええっと、彼方のお爺さんも装備とかに使って良いのですよ」

「そうそう、無理とかしなくて良いからさ。ゲームを楽しむのが優先だよ」


 源三郎が呟くと彼方達は苦笑しながら声をかけて来る。


「わしもカンパニーは気になるし、彼方達よりは時間はあるしの。それにわし個人のフレンドで金策に強い人がおる」

「え? お爺ちゃん、私達以外にフレンドいたのっ!?」


 源三郎は彼方の頭を撫でながらフレンドのメタボーマンの採掘クエの護衛手伝いか、何か儲かる話を聞こうと思っていた。

 彼方は源三郎に自分達以外にフレンドがいたことに驚く。


「昼間限定でログインしてる人じゃ。採掘船で採掘ミッションをマラソンしとるプレイヤーさんじゃ」


 源三郎はメタボーマンとの出会いを彼方達に説明する。


「あっ! もうログアウトしないと!」

「私もそろそろ落ちますね」

「また明日学校で、おつー」


 彼方達3人は挨拶をしてログアウトしていく。


「わしも風呂はいって寝るか」


 源三郎も彼方達3人を見送ったあとにログアウトした。




 翌日、洗濯など家の用事を終えた源三郎はギャラクシースターオンラインにログインする。


「お、メタボーマンさんはもうログインしているようじゃの」


 源三郎はログインしてすぐにフレンドリストを開いてフレンドのログイン状況を確認する。


 メタボーマンがログインしているのを確認すればテキストメッセージを送って挨拶すると、すぐにビデオチャットチャンネルに招待される。


「おはようございます、メタボーマンさん」

「源三郎さん、おはよう」

「あー! 彼方チャンネルの源三郎お爺ちゃんだーっ!」


 ビデオチャットチャンネルに入って挨拶すると、ビデオチャットにはメタボーマン以外に女性キャラクターが先客でいた。


「YT、源三郎さん知ってるのか?」

「うん、知ってるよー。私が視聴してるギャラクシースターオンライン配信者さんのリアル祖父さん。どうも~配信見てまーす!」


 ビデオチャットのカメラ画面には赤毛のショートカットに褐色肌、首にゴーグルをぶら下げメカニックスーツ姿の中学生ぐらいの年齢にみえる女性キャラが手を振って挨拶していた。


「こりゃ孫の配信視聴者さんでしたか、見てくれてありがとうございます」


 まさか彼方のチャンネル視聴者に会うとは思っていなかったが、源三郎は頭を下げて挨拶する。


「お、このチャンネルか。登録しといた」

「すいません、ありがとうございます」


 メタボーマンもネットを検索して彼方のチャンネルを見つけたのか登録してくれたようだ。


「今日はどうしたんだい?」

「カンパニー設立資金集めにまた護衛の仕事とかないかとお伺いに」

「何々? お金ほしいの?」


 源三郎がメタボーマンに用件を伝えると、YTが話に入ってくる。


「初期投資いるけど私の金策教えるようか~?片道1回で楽々10万クレジットは稼げるよ」

「それは教えても良いんですかの?」

「知ってる奴は知ってる輸送ミッションだからそんなに問題ないぞ。MMOによくある狩場の取り合いにもならないし、交易でもないから相場が崩れたりもしない」


 YTが自分の金策を教えると言ってきたことに驚く源三郎。

 メタボーマンが会話に入って問題ないと源三郎に伝える。


「そそ、暫くしたら攻略wikiや個人ブログとかに序盤の金策として載るような奴だから気にしなくて良いよ。教える金策はチーム組むと報酬にボーナスつくからこっちにもメリットあるの」

「それならお言葉に甘えさせてもらいます。初期費用はいかほどて?」


 デメリットもないと言われれば源三郎も遠慮する理由もない。


「取りあえず、最低限揃えてほしいのは初期輸送船とアーマメントの拡張コンテナを2つ。余裕があれば1レベルでいいから会計と売買スキルチップ」

「初期輸送船でも良いんですか?」

「うん、アーマメントの拡張コンテナ2つで必要な貨物容量はクリアできるから」


 初期投資にどれだけかかるかと構えていた源三郎はYTから言われた内容に肩透かしする。


「それなら今いるステーションマーケットで確認します」

「ちょっと待ってくれ。ステーションによって同じアイテムでも価格違ったりするから、値段言ってくれるか?」


 源三郎はウルフ星系のステーションで船を購入しようとすると、メタボーマンがストップをかける。


「そうなんです?」

「それに俺やYTは売買スキル4レベルあるから、代金もらって俺らが安く買う方法もあるぞ」


 売買スキルはステーションマーケットなどで買う時にスキルレベル分割り引かれ、売る時にスキルレベル分額がアップする。

 源三郎もこれまでのミッションやクエストで売買のスキルチップは持っているが、メタボーマンやYTのスキルには及ばない。


「わしが今いるステーションで売ってる輸送船サイジールは最低でも5万クレジットですな」

「ならこっちだな。こっちなら同じ奴が3万だ。買っとくからこっちこいよ」

「ありがとうございます」


 輸送船サイジールはカタツムリの形をした宇宙船で、遅くて脆いがアーマメントスロットが豊富だ。


「ついでにアーマメントの拡張コンテナも作れるから作っといてやるよ」

「申し訳ない」

「いいんだよ、俺元々生産とか好きだし。代金はちゃんともらうから、はやくこっちのステーションにこいよ」


 メタボーマンはそう言ってアーマメントの製造に向かう。


「そういえばYTさんや、質問なんじゃが、会計スキルはなんの効果があるのかの?」

「呼び捨てでいいよー。えっとね、会計はミッションやクエスト報酬がスキルレベル分アップするよ」

「それは………もっと早く知りたかったのう」

「あはは、このゲームスキル多いし、テキストが抽象的だったりするからねえ」


 源三郎はそんな会話をビデオチャットでしながらメタボーマンとYTがいるステーションへと向かっていた。

 

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