第27話 お爺ちゃん、密売品を売る。
「皆さん今晩は! 今日もギャラクシースターオンライン配信していきたいと思います!」
夕食を終えて一休みした源三郎達はまたギャラクシースターオンラインにログインする。
彼方達が夜の部配信としてカメラの前で元気よく挨拶していく。
「今回は密輸をやっていきたいと思います。グローズのアジトで手に入れた密輸品の売却とアフターライフで受けた配達クエストこの二つから解決したいと思います」
彼方は今日の配信でやることを告知すると、早速バベルステーション下層部にあるクラブ
『アフターライフ』に向かう。
「荷物は運んでくれたのか?」
密輸について教えてくれるNPCのスーツ姿の男に近づくと、話しかけてくる。
「こいつを捌きたい」
「ほう………何処で手に入れたか知らないが、ここに持ってきたのは正解だ」
グローズのアジトで手に入れた密輸品を見せると、男はニヤリと笑う。
「密輸品を売る時、気を付けないといけないことがある。それは当局の注目度だ」
「なにそれ?」
男は密輸品の売買を始める前に話し始める。
ノエルが注目度と言う聞きなれない単語について男に聞き返す。
「密輸品には品目事に注目度と言うのが設定されていてな、密輸品を1つ売却する事に当局から目をつけられる確率が上がっていく」
「目をつけられるとどうなるのですか?」
男は治安機構からの注目度について説明をし始め、鈴鹿が目をつけられることに対するデメリットを質問する。
「密輸品を輸送する際、密輸品の取り締まりをする警察など治安機構のスキャニングにその注目度が上乗せされる。船の隠蔽とお前らのスキルよりそいつが上だと摘発される」
「なるほど、密輸を繰り返して金策されないための対策かな?」
彼方が注目度のペナルティの意味を理解してポンと手を叩く。
「その注目度を下げる方法はあるのかの?」
「ほとぼりが冷めるまで密輸を控えるか、軍など治安機構の戦闘ミッションを受ければさがるぞ」
源三郎が注目度を下げる方法を聞くと、男はミッションを受ければいいと答える。
「他に質問がないなら商売といこう。説明を聞いてもこいつを売る気はあるか? 因みにお前らが持ち込んだ商品を俺に全部売れば注目度は1人60%だ」
「物は試しで売ります!」
彼方が同意すると、密輸品は売却されてクレジットが手に入ったが、警察機構から監視されていますと言うメッセージが表示される。
「これだけで100万クレジット!?」
「それだけ目をつけられやすい品物だった設定なのかな?」
彼方は売却金額に驚き、ノエルは自分達のステータスウィンドウに注目度と言うデバフが付与されたことを確認する。
「注目度のペナルティ解除方法が厳しいのう、1時間経過で1%しか減らぬ上にログイン中でないとカウントされないとか」
「ミッションでどれだけ減るかも検証したいね」
源三郎がデバフの解除時間を配信をみている視聴者達に伝える。
「レオン星系にデータストレージ届けるクエスト、注目度さがるまでやめとく?」
「うーん、これ自体は密輸品でもないし、このままやってみようよ」
「それではレオン星系にいきましょう」
アフターライフで密輸品を売却した源三郎達は宇宙船に乗って、レオン星系へと向かう。
「こちらは地球連邦軍、違法品を運んでいないかこれより臨検を行う。速やかにエンジンを停止しなさい。呼び掛けに応じない場合は実力行使及び、賞金首として指名手配する」
「うわ、早速軍がきた!」
レオン星系に向かう途中、NPCの連邦軍に呼び止められる。
「ユーザー、違法品を持っていないなら相手の指示に従ってください。相手は軍用駆逐艦です、現在の船では勝ち目はありません」
サポートロボットのロボもエンジンを停止するように勧めてくる。
「これよりスキャンを行う。下手な動きはしないように、我々の砲塔はそちらに向いてる」
【連邦軍の船からスキャンを受けています】と言うテキストが表示される。
「けっこう本格的」
「これ動いたら一発で宇宙の藻屑になりそう」
「仮に逃げ延びても指名手配ですからねえ」
彼方達3人は初めて受ける臨検にはしゃいでいる。
配信のコメント欄も臨検の様子に興奮しているコメントが書き込まれていく。
「ロボや、指名手配のデメリットはなんじゃ?」
「犯罪行為によって賞金額が付与されます。まずステーションなどに入港する際に賞金額によっては入港を断られます。断られる額はステーションによって違います」
臨検を受けてる間手持ち無沙汰になった源三郎はサポートロボットのロボに指名手配について質問する。
「指名手配中に臨検を受けると、一部のスキルを持っていないと高確率で発覚して逮捕や攻撃を受けます。またバウンティーミッションを受託したプレイヤーから攻撃を受けます」
「指名手配を解除するにはどうするんじゃ?」
指名手配のデメリットを聞いた源三郎は解除方法もロボに質問する。
「各ステーションにある端末から手数料上乗せした分の賞金額を支払うか、逮捕されるか、バウンティーミッションを受託したプレイヤーから殺されることです」
「逮捕のデメリットは?」
「刑務所に送られ、刑期時間閉じ込められます。刑務所内での奉仕クエストを受託しクリアすることで刑期時間を短縮できます」
「臨検終了! ご協力感謝します」
逮捕のデメリットについて聞いてる間に臨検が終わり、NPCの連邦軍の船は去っていく。
「じゃあ、改めてレオン星系へしゅっぱーつ!」
「おー!」
臨検を終えた源三郎達はミッションの目的地であるレオン星系へと向かう。
「惑星とステーションが1つだけ、アステロイドベルトすらない随分と寂れた星系ですね」
レオン星系にワープアウトした鈴鹿が思わず呟いてしまう。
レオン星系は源三郎達がこれまで立ち寄ってきた星系の中でも
「ステーションも狭いし、なんと言うか言うか………近くの駅前に大きなショッピングモールが出来てシャッター街になった商店街みたいな寂れ具合を感じるね」
ステーションも必要最低限な整備しかされておらず、あちらこちらに老朽化の兆候が見えていた。
「受取人のボイスは………あそこか」
クエストマーカーはステーション内にあるバーの年配イケオジ風のバーテンダーの元まで延びていた。
「何か用か?」
「うわっ! イケボ!!」
源三郎達が近づくと、ボイスが話しかけてくるが、中々いい声でノエルが声にミーハーな反応する。
「タスケン星系のバベルステーション、アフターライフでこれをあんたに渡してくれと言われた」
「ああ……そう言うことか。ついてこい
データストレージをボイスに渡すとボイスは源三郎達をバーの貯蔵庫に案内する。
ボイスは貯蔵庫にある棚を弄ると、棚が横にスライドして隠し通路が現れる。
「ここは密輸業者のアジトだ。物を捌いたり、購入したり、あとそこの端末から違法品などの輸送や、少々法律から逸脱した頼みごとなどミッションが受けられる」
隠し通路を通り抜けると、優雅なインテリアの家具に囲まれた隠し部屋にたどり着く。
ボイスは部屋の設備について説明を始める。
「こういった密輸業者のアジトは銀河の各地にある。ステーションや惑星、時にはアステロイドベルト帯の小惑星が実は偽装したステーションとかな」
「そういうのはどうやって見つけるの?」
「俺達密輸業者にもTRが存在する。TRが高くなれば俺達が紹介することもあるし、密輸品の輸送先がアジトだったりする」
ボイスの説明を聞いた彼方は他のアジトの見つけ方を質問するとボイスは端末を指差しながら他のアジトの見つけ方を教える。
「密輸のミッションって、当局から目をつけられたり逮捕されて動けない人の代わり系が多いね。輸送船じゃなくても受けれるのはいいかも」
ノエルは早速端末を操作して依頼内容を確認している。
「私は心情的にやりにくいですが、輸送船襲撃とか海賊行為的な依頼もありますね。報酬は大きいですがこっちは指名手配されるみたいです」
同じように端末を覗き込んでいた鈴鹿が輸送船襲撃ミッションを見つけて視聴者に紹介する。
「とりあえず今回はスルーかな」
「そうか。ここの入室パスは作っておいた。なにか仕事がほしけりゃいつでもこい」
ボイスはそう言ってバーカウンターに戻る。
「彼方、この後どうする?」
「まずはカンパニー資金集めとストーリークエスト探しかな。このステーションでも何かストーリークエストないか探してみようよ」
「そうですね」
源三郎達はバーを後にして、ストーリークエストがないかステーション内を探索する。
「君達はフリーパイロットかね?」
ステーション内を探索していた源三郎達に声をかけてくる初老の男性。
「はい! クエストですかっ!」
彼方が食いつくように返事をして、初老の男性が若干引いている。
「あ、ああ………実は私が出資してる研究施設から連絡が途絶えてね。調べにいってほしいんだ」
「………何を研究してたんです? 生物ではないですよね?」
男性が依頼内容を伝えると、鈴鹿が少し嫌な顔をする。
源三郎はその様子を見て、以前受けたクエストの惑星トレビン研究所を思い出す。
「いや、ブラックホールに関する研究だ。研究の進捗定期報告がもう一週間も遅れてるんだ」
男はそう言ってブレスレットを操作して、向かってほしい研究所の座標系を送信する。
「ブラックホールを巡る軌道の小惑星を改造して作られた研究所ね」
「どうだろう、報酬も約束する」
「面白そうだし、引き受けます!」
彼方がクエストを受けることに同意すると、『ブラックホール研究所に向かう』と言うクエストタスクが発生する。
「頼む、万が一トラブルが起こっているのならば何があったか、データストレージだけでも回収してくれ」
初老の男性はそう伝えると去っていく。
「それじゃあ、その研究所へ移動しようか」
「その前に買い物よろしいですか? 密輸で儲けたお金でスキルチップや船のドローンの種類増やしたいです。ごめんなさいカンパニー資金集めないといけないのはわかってるのですが………」
彼方が早速クエスト目的地に向かおうとすると、鈴鹿が申し訳なさそうに手を上げて装備の更新を提案する。
「全然オッケーだよ!」
「そうそう、ゲームなんだし楽しまなきゃ」
(最悪ワシが金策して補うかの)
彼方とノエルは鈴鹿に抱きついて問題ないと伝える。
その三人の姿を見てログイン時間に余裕のある源三郎は自分が頑張ればいいかと思っていた。
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