第26話 お爺ちゃん、報酬に家を貰う


「クエストボスだけあって、ドロップ品がいいな」


 アイオブヘブンのドロルからドロップ品を回収する源三郎達。


 レアリティの高いレジェンダリー装備やまだマーケットで見かけた記憶のない希少なスキルチップなどを回収していく。


「き、君達はいったい………私は助かったのか?」

「私達はブレイドさんの依頼で貴方を探していました」

「ブレイドが私を探してくれたのか?」


 ドロップ品を回収していると、マルケスが話しかけてくる。

 彼方が事情を話すとマルケスはほっとした顔になる。


「ドロップ品も回収したし、依頼主の所へ帰ろうかの」

「今回のストーリークエスト、一応依頼人であるブレイドに報告したら終わりっぽいけど、中途半端に謎とか残るよね?」


 ドロップ品の回収を終えて地上に戻る途中、ノエルが独り言のように呟く。


「確かにナイルって人物は謎のままだし、グローズに奪われた大切なものとか、隠し財産とかわからないままだね」

「それに今回は助かりましたけど、今後もモルガンさんは狙われる可能性もありますよね?」


 ノエルの独り言が聞こえたのか、彼方や鈴鹿も今回のストーリークエストの疑問点を口にする。


「まあ、そこら辺は報告すればなにかわかるじゃろうて」

「そうだね、まずは報告だね」


 源三郎がそう言うと、彼方達も頷いてブレイドの元へと向かう。


「マルケス! 無事だったか!」

「この状態を無事と言えるかわからないが、生きてるよ。ブレイド、彼らを雇ってくれてありがとう」


 クエストマーカーに従ってブレイドがいる場所に向かうと、そこはステーションポリスの本部だった。


「マルケスすまない、私のせいで巻き込んでしまって」

「モルガン、君は悪くない」


 ステーションポリスに保護されたモルガンもいてマルケスに謝罪する。


「君達への報酬だが、クレジットだけでなくて、私が扱っている物件をプレゼントしよう」

「物件?」

「ああ、権利とかは君達に移したから好きに使ってくれ」


 クエスト報酬として大金のクレジットとバベルステーション下層部にある倉庫物件を貰う。

 それと同時に物件を見に行くと言うクエストが発生する。


「私からも報酬を払わせてくれ。バベルステーション限定だが、君達にマーケット特別優待をつけさせた」


 オプションクエストの報酬としてマルケスからはバベルステーションマーケットでの購入に限り10%の割引がされるようになった。


「これは嬉しいのう」

「あとでここのマーケットで買えるもの見ていきましょう」

「先にクエストで物件を見に行かない?」

「物件って何ができるんだろう?」


 クエスト報告を終えた源三郎達は早速下層部にある物件を見に行く。


「ここって、モルガンさんが隠れていたグローズのアジト近くだね」


 辿り着いたのはクエストで向かった倉庫街にある倉庫の一つ。


「うん? プレイヤーハウスとフレンドハウスの二種類が表示されるの?」


 源三郎が報酬でもらった物件の倉庫に入ろうとドアに手を掛けると、どちらに行くかと言う表示がされる。


「ロボや、これはどう言うことだ?」

「お答えしますユーザー。プレイヤー達が様々な場所で手に入れる可能性のあるハウジング物件はインスタンスエリアと言う共通サーバーから隔離された個人エリアになります」


 源三郎はサポートロボットのロボに質問すると、ロボはハウジングについて説明してくれる。


「つまり、チーム全体で一つの物件ではなく、わしら個人個人に物件を与えられている?」

「その認識であっています。更にハウジングについてご説明するので、何方かのルームに入室してください」

「ならわしの部屋でいいかの」


 ロボの説明を聞いて、源三郎は自分に与えられたルームに入る。


「なにもない殺風景な部屋じゃの」

「ハウジングルームの最初ってこんな感じじゃない?」


 倉庫に入ると家具もなにもない金属の壁とコンクリートの床の四角形の部屋が一つあるだけだった。


「ハウジングシステムの説明をします。まずは出入り口のドアにあるパネルに触れてください」

「こうか?」


 ロボに言われるがまま、源三郎は出入り口にあったパネルに触れるとホログラムメニューが表示される。


「上から順番にご説明します。内装:家具を置くは、ユーザーがマーケットやドロップ品、生産した家具をルームに配置します」

「ハウジングの醍醐味の一つだね」


 ロボが内装について説明すると、彼方がうんうんと頷く。


「二つ目の入居許可と権限はユーザー以外のプレイヤーの入室の有無、ルーム内の家具などの配置換えやアクセス許可の有無を操作します」

「アクセスの許可?」


 ノエルはロボのアクセス許可と言う聞きなれない言葉に疑問の声をあげる。


「順番にご説明しますので、お待ちください。まず入室の許可はユーザーのみ、フレンドやカンパニーメンバーのみ入室限定、フリールームと言う不特定多数が自由に入退室とあります。最初はフリールームになっているので、アクセス制限掛けたい時は手動でお願いします」


 ロボは入退室の権限について説明する。


「ルーム内の家具の配置換えはユーザー以外にもフレンドなど他のプレイヤーが設置してある家具の配置を変えたり、プレイヤーが持ち込んだ家具をユーザーのルームに配置したりします」

「へー、アクセス許可は配置換えと、どう違うの?」

「アクセス許可は、ユーザーが設置した家具、例えば照明のオンオフ、ルーム内に設置された生産施設などの使用です」


 ロボはハウジングシステムについて説明を続ける。


「次に拡張ですが、ハウジング物件の種類によっては部屋の広さや階層、特殊な設備を追加することができます。今回ユーザーが手に入れたハウジングルームは対象外です」

「あの、特殊な設備って何ですか?」


 鈴鹿が手を上げて、ロボに質問する。


「エレベーター、ガレージ、シップハンガーなどです」

「ガレージ? 車も持てるの?」


 特殊な設備についてロボが説明すると、彼方が反応して目を輝かせる。


「はい、ガレージでは惑星探査車両を改造、シップハンガーでは所有する船の改造ができます」

「わざわざステーションの端末までアクセスしなくても、ルームから操作できると」

「その認識であってます。次に店舗ですが、売買スキルチップとフリールーム設定か必要ですが、ベンダーを設置して店を開くことができます」


 ロボは次に店舗について説明を始める。


「うん? ギャラクシーマーケットとどう違うんじゃ?」

「税金や手数料がかかりません。ギャラクシーマーケットで売買を行うと、まず商品登録手数料がかかり、売買成立時にステーションが定めた税金が値段に付与されます。メンバーシップでなくても直接店舗に向かえば購入ができます」


 源三郎は店舗の説明を聞いてそれならメンバーシップ会員が利用できるギャラクシーマーケットでいいのではと思ったが、ロボの説明を聞いて納得する。


「最後にカンパニー設立ですが、100万クレジットと4名のメンバー、そのメンバーの何方がカンパニー管理のスキルチップを持っていればカンパニーを設立することができ、ルームがカンパニールームになります」

「ハウジングルームがないとダメなんだ」

「100万クレジットですか………私達多くて10万クレジット前後まで稼いだことがありますから、頑張ればなんとか行けそうですね」

「皆で頭割りすればすぐにいけそうじゃのう」


 ロボは最後にカンパニー設立に関する説明をする。

 設立に必要なクレジットの額に彼方達が頭割りで集める話をし、配信視聴者も交易すれば100万すぐですよなどアドバイスコメントを書き込んでいく。


「以上でハウジングルームの説明を終了します」

「輸送や交易やってカンパニー代金稼ぐ?」

「そうですね、戦闘やクエストだけだと少々お時間がかかりますね」


 ロボの説明を聞き終えた彼方達は床に座ってゲーム目標の1つであったカンパニー設立の金作について話し合う。


「まあ、正式サービス始まったばかりだし、コツコツ頑張ろうよ」

「それよりも、もう夕食の時間じゃぞ」


 彼方がそう言うと、源三郎が腕時計で時間を知らせるジェスチャーをして、ログアウトを促す。


「えっ? もうそんな時間?」

「あ、本当ですね。家族からの外部コールが今来ました」

「それじゃあ配信は一旦ここで終了ってことで」


 彼方は現実の時間を確認して、いつの間にか夕食の時間になってることに驚く。

 鈴鹿も現実世界で家族に声をかけられてるのか、虚空を見上げながらうんうんと頷いている。

 ノエルが配信の締めの挨拶にうつり、スパチャコメントに返事を返していく。


「夜も配信するかはまたSNSなどでお知らせするので、一旦お疲れさまでしたー!」

「次回の配信もよろしくお願いします」

「チャンネル登録と高評価してね!」


 最後は彼方達が手を振って配信を終了すると、全員ログアウトした。

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