第24話 お爺ちゃん、救援にいく
「貴方はマルケスさんですか? それともモルガンさんですか?」
「わ、私はモルガンだ、君達はマフィア………ではないな?」
鈴鹿が名前を聞くと、コンテナに隠れていた金髪の中年男はモルガンと名乗ると、モルガンの頭上に名前が表示される。
「私達はマルケスさんの友人から依頼を受けて探していました」
鈴鹿が自分達がマルケスを探しに来たと伝えると、モルガンは頭を抱えてその場にしゃがみこむ。
「マルケスはアイオブヘブンのメンバーに私と間違えられて連れていかれた」
「貴方と間違えられて? どう言うことだ?」
モルガンが悔恨に満ちた声でマルケスが人違いで連れていかれたと言い、源三郎が理由を聞く。
「ソロモン自由同盟との戦争は知っているか? 私の祖父はかつてこのバベルステーションのステーションマスターだった」
「ステーションマスター?」
聞きなれない単語に彼方が聞き返す。
「ここの最高責任者と思ってくれればいい。祖父は戦争時代、ステーションにあった財貨を軍に没収される前に何処かに隠したなんて噂があってね。そんな都市伝説を本気で信じてる奴に私達家族はさんざん迷惑をかけられた」
モルガンの苦渋の表情と怨嗟の混じった声から色々トラブルがあったとわかる。
「つまり、その隠し財産を信じたマフィアがお主を拐おうとして、マルケスは巻き込まれたと?」
「そうだ。そこに転がってるクローズが私とマルケスを拐ってここで財宝のありかを聞き出そうとした。その途中でアイオブヘブンが襲撃に来て、そのどさくさに私はここに隠れたんだが………彼は逃げ遅れて捕まった」
モルガンは頭をかきむしり、うろうろしながら自責の念に押し潰されそうになっている。
「マルケスがどこに連れ去られたかわかる?」
「わからない………ただ、こいつらは何とかの印がある場所に連れていけとか言っていた気がする」
ノエルがマルケスの行方をモルガンに聞くと、モルガンは最初は首を横に振るが、何かを思い出してアイオブヘブンの構成員の死体を指差して彼らが言っていた話をする。
「印のある場所か………死体を調べたら何かあるかな?」
「そう言えばまだドロップ品とか調べてなかったね」
ノエルと彼方がモルガンの話を聞いて、マフィア構成員達のドロップ品を確認する。
「お爺ちゃん、ビンゴ! 行方がわかるアイテムあったよ!!」
彼方が調べていたアイオブヘブンのメンバーの死体からデータチップが手に入る。
「どうやら前々から両方の組織がモルガンを狙ってたみたい」
データを確認すると、命令みたいな文章があり、モルガンを誘拐してアジトに連れていく計画を立てていた。
「彼らのアジトもこのチップに載ってたな」
「違法な増改築で出来た隙間にマフィア達はアジトを築いてるんだ」
データチップにはアイオブヘブンのアジトの地図も載っており、どうやっていけばいいか手順も明記されている。
「アイオブヘブンはモルガンだと勘違いしてアジトに連れ込んだと………」
「祖父は死んでも私達に害をあたえる疫病神だ! 私からも報酬は出す! マルケスを助けてくれ!!」
状況を知ったモルガンは死んだ祖父に対して思い付く限りの罵詈雑言を叫び、落ち着くと源三郎達にマルケスの救出を依頼する。
「元々そのつもりだし、いいよ」
「ありがたい、私は足手まといになりそうだからステーションポリスか何処か安全な場所に匿って貰う。マルケスを助けたら連絡してくれ」
彼方が依頼を承諾すると、モルガンは外に出ていく。
モルガンを見送ると、クエストタスクが更新されて、マルケスが囚われてるアジトへ向かうことになる。
「あ、この倉庫、元々あった荷物も漁れるみたいです」
たまたま倉庫の荷物を調べていた鈴鹿が皆に知らせる。
「大抵はクレジットや生産素材じゃが……」
「この世界、葉巻が密輸品扱いなんだ」
倉庫の荷物を漁っていると葉巻を見つける。
ただ葉巻のアイコンには密輸品のマークがついており、一般の店では買い取り出来ないとアイテムテキストに書かれていた。
「あとこの盗まれた美術品と言うのも密輸品扱いだね」
「あのアフターライフにいたNPCが買い取ってくれるのかな?」
「このクエストが終わったら試してみるかの、ダメだったら………最悪捨てる」
「売れるといいなぁ……」
葉巻、薬物、盗品など多種様々な密輸品が倉庫から見つかり、源三郎達は回収していく。
「アイオブヘブンのアジトはこの下水から行けるらしいな」
「えー………汚くない?」
「さすがにVRでも臭いまで再現しないと思いますけど………」
クエストマーカーにしたがってマルケスが捕らえられていると思われるアイオブヘブンのアジトに繋がる下水のマンホール前まで来た源三郎達。
彼方達は下水と言うだけで嫌そうな顔をして入るのを躊躇している。
「ならわしが先に入ろう」
源三郎はマンホールの蓋を開けて下水に降りる。
「ふむ………特に臭いとかは気にらんぞ」
「フルダイブ式のお爺ちゃんが言うなら安全だね!」
源三郎が匂いを嗅いで問題ないと伝えると、彼方達も下水に降りてくる。
「なんと言うか………上下左右360度通路が広がってるとか迷路どころじゃありませんね、ここ」
「目印がある通路を進んだらいいんだっけ?」
下水は度重なる無計画な拡張工事と、下水に住み着いてる住人が勝手に増改築した通路で迷宮化している。
「ええっと、アイオブヘブンのエンブレムが目印だっけ?」
「あれじゃないかな?」
彼方達が目印であるエンブレムを探すと、ノエルが見つける。
源三郎達はエンブレムを便りに下水を進む。
報告感覚が狂うほど何度も曲がったり、上ったり下がったりとかなりの時間歩いた。
その間彼方達は配信の視聴者達と雑談しながら場を繋ぐ。
「なんか広い場所に出れたね」
エンブレムを便りに下水を進むと、学校の運動場位は広い場所にでる。
部屋の中央には金属の球体が鎮座しており、その後ろにアイオブヘブンのエンブレムがペイントされた通路が見える。
「シンニュウシャ、ハッケン。ハイジョシマス」
球体から電子音が聞こえてきたかと思うと、球体が機械の蠍みたいな形に変形する。
「門番みたいなものか」
「皆戦闘準備!」
「はい!」
「強そう」
球体が変形している間に彼方達は武器を構えて遮蔽をとり、源三郎がレーザーブレードスキンの武器を構えて突っ込む。
「キィエエエイッ!」
先手必勝とレーザーブレードスキンの武器を振り下ろすが、武器は機械の蠍に命中する前にバリアのようなものに阻まれる。
「ハイジョ」
「ぬっ!?」
機械の蠍は尻尾の先端に付いた銃口から熱線を発射する。
源三郎は即座に横に飛んで熱線を回避する。
「お爺ちゃん!」
「この!」
「援護します!!」
彼方達がアサルトライフルで攻撃するが、全てバリアに塞がれる。
「コウゲキモクヒョウ、ヘンコウ」
「やばっ!?」
前足の鋏の間からからガトリングが生えると、キュイーンと回転始め、轟音と共に銃弾が彼方達に向かってばらまかれる。
「ひぃえええっ!!」
「きゃあああっ!!」
「ちょっ! バリアにガトリングとかバランスおかしくない?」
彼方達は咄嗟に遮蔽に隠れてガトリングの嵐から難を逃れるが、弾幕を張られて反撃する余裕もない。
「オーバーヒート、レイキャクカイシ」
「む? バリアが消えた! 今が攻撃のチャンスじゃ!!」
ガトリングを射ち続けた機械の蠍、ガトリングの銃身が真っ赤になると攻撃をやめる。
それと同時に機械の蠍を守っていたバリアが消えたことに源三郎が気付き、攻撃を仕掛ける。
「皆、いまよっ!!」
「このこのこのーっ!」
「えいっ!」
彼方達もアサルトライフルで機械の蠍を集中砲火する。
「ハンゲキシマス」
銃弾を浴びながら機械の蠍は鋏を振り回し、源三郎に攻撃し、尻尾の熱線で彼方達を迎撃する。
「なんの!」
「きゃっ!?」
「鈴鹿ちゃん!?」
源三郎はバク転しながら鋏を回避するが、熱線は運悪く鈴鹿に命中する。
「大丈夫です。そこまでダメージありません、皆さんは攻撃を」
「わかった!」
鈴鹿はダメージを受けたが一撃で死ぬほどではなく、回復用のメディジェルを自分に使って回復を図る。
彼方とノエルはヘイトが鈴鹿にいかないよう攻撃を続ける。
「レイキャクカンリョウ、コウゲキモクヒョウヘンコウ」
「今度はわしが標的かっ!」
ガトリングの銃口が源三郎に向くと、源三郎はその場から全力で逃げる。
源三郎の後ろを追いかけるようにガトリングの弾雨が降り注ぎ、徐々に距離を縮めていく。
彼方達は必死に攻撃をするが、復帰したバリアに阻まれる。
「そうだ! えいっ!!」
彼方は何か思い出したのか、アイテムボックスからアイテムを取り出すと、それを機械の蠍に投げる。
彼方が投げたのは、アイオブヘブンとグロースがいた倉庫で見つけたEMPグレネード。
グレネードがバリアに接触した瞬間強烈な電磁パルスが発生すると、機械の蠍の動きがおかしくなり、何もない場所にガトリングを乱射し、ついにはオーバーヒートしてバリアが消える。
「今じゃ!」
「うんっ!!」
源三郎達はそのチャンスを逃すまいと一気に畳み掛け、機械の蠍の破壊に成功した。
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