第23話 お爺ちゃん、人探しをする。
「あんたもしつこいなっ! こっちも忙しいんだ、いいかげんにしろっ!!」
「ん?」
源三郎達が戻る途中、男性の怒鳴り声が聞こえた。
「なんだろう?」
「何かのイベントかな?」
「覗いて見ましょう」
彼方達3人は声のした方に向かう。
角を曲がると、一人の中年が武装した集団と言い争っている。
「頼む、昨日から友人と連絡がつかないんだよ! 絶対トラブルに巻き込まれたんだ!!」
「たった1日だろ、こっちはマフィアの抗争で手一杯なんだ、他を当たってくれ!」
とりつく島もないと言った感じて武装した集団はそう言うとその場から離れていく。
「この税金泥棒! ステーションポリスならステーション住民の安全守れ! 金持ちにだけ尻尾振りやがって!」
中年男性は去っていくステーションポリスの背中に中指立てて唾をはく。
「ん、あんた達はこの辺じゃ見ないな?」
中年男性は思い付く限りの罵声を叫ぶと踵を返し、源三郎達に気づく。
「ついさっき来たところだ」
「フリーパイロットか? 仕事探してるならひとつ頼まれてくれないか? 報酬は弾むぞ」
中年男性がそう話しかけるとクエストが発生し、男の話を聞くクエストタスクが表示される。
「内容聞いてからかな?」
「話は簡単だ。昨日アフターライフで一緒に飲んだ友人と連絡がつかないんだ。そいつを探して欲しい。友人の名前はマルケス、バベルステーションの企業で働く一般人だ」
中年男性はそう言って手元のブレスレットを操作すると、金髪の白人中年のホログラムを見せる。
「そういえば名乗って無かったな、俺はブレイド。バベルステーションで不動産を取り扱ってる」
男はブレイドと名乗り、話を続ける。
「俺は用事があって先に帰ったんだが、マルケスはもう少し飲むといって残った。翌日あいつの会社から出勤してないんだか、なにか知らないか?と言われて探してる」
「飲みすぎて休んでるとかは?」
ブレイドの話を聞いていたノエルが手を上げて飲みすぎではと意見する。
「彼の自宅はもぬけの殻、ブレスレットのGPSもオフライン。でもって今バベルステーションはマフィア達の戦争が激しい。巻き込まれたんじゃないかと心配なんだ」
「戦争?」
ブレイドはノエルの意見を否定するように首を振ってマルケスの状況を話す。
源三郎は戦争と言う言葉に反応する。
「ああ、ここバベルステーションには大小数多くのマフィアなど犯罪組織が多いが、アイズオブヘブンとグロースと言うのが二大巨頭だ。双方元々仲が悪かったが、原因は不明だが今二つの組織は全面戦争中で、他の組織も火事場泥棒狙うように動いていていい迷惑だよ」
ブレイドはバベルステーションでいま起きているマフィア同士の戦争について話すと、唾を吐き捨てる。
「仮に行方不明として、どこを調べたらいいか………」
「ステーションポリスに訴えても駄目だし、アフターライフに事情話しても関係ないと突っぱねられた。地道に聞き込みしていくかだな」
鈴鹿が調査方法に困っていると、ブレイドは地道に聞き込みしろと言い、周囲のホームレスに聞き回ると言う項目がクエストタスクに追加される。
「………これは独り言なんだが、目を盗んでアフターライフやポリスのセキュリティカメラを盗み見ればなにかわかるかもしれない」
少し間を置いて、ブレイドが囁くようにカメラを盗み見ろと言うと、クエストオプションでアフターライフやステーションポリスに侵入してハッキングする(要:隠密スキル、セキュリティスキル)か、説得して見せて貰う(要:交渉、説得、賄賂スキル)と言う項目が表示された。
「おっと、すまない、私も自分の仕事がある。申し訳ないが頼んだぞ」
ブレイドのブレスレットからコールオンがしたかと思うと、後は任せたと一言いって去っていく。
「ストーリークエスト見つけたね」
「こんな風に向こうから始まるタイプもあるんだ」
ノエルと彼方が去っていくブレイドの背中を見送りながらそんなことを言う。
「とりあえずこのクエストやっていきますか」
「いい報酬が貰えるといいのう………」
源三郎達はブレイドから受けた行方不明になったマルケスを探すと言うクエストを開始する。
「クエストオプション挑戦したいけど、隠密や説得はまだ持ってないから、普通に聞き込みかな?」
「セキュリティスキルはあるけど、隠密は持ってないし、密輸系スキルでお金使ったから新しく買えない」
「1レベルでいけるかわかりませんしねえ………」
「まずはあそこにいるホームレスに話すか」
源三郎達はスキルを持ってなくてオプションクエストに挑戦出来ないことを愚痴りながら、クエストマーカーが指すホームレスNPCに話しかける。
「そいつなら二人見たよ」
「え? 二人?」
「どういうこと?」
源三郎達がNPCのホームレスに聞き込みすると、ホームレスはマルケスを二人見たと不思議なことを言う。
「いや、あれは驚いたよ。クローンかなにかと思うほどそっくりで二人して意気投合したように肩を組んであっちにあるいていったよ。ただ………」
「ただ?」
「その二人を尾行する感じの四人組がいたんだよ。クローズのタトゥーをしていたよ」
「キナ臭くなってきたな………」
ホームレスから情報を聞いた源三郎達はマルケスとそっくりさんが進んだと言う路地に向かうと、行方不明になったマルケスの痕跡を探すと言うクエストタスクに変化する。
「手分けするか、万が一を考えてあまり遠くへいかないようにな」
「うん」
源三郎達は手分けして路地を探索する。
「ブレスレット見っけ! あれ? 持ち主の顔はマルケスなのに、名前はモルガン・スタンになってるよ」
彼方がこの世界の住人なら誰もが身に付けているマルチデバイスのブレスレットを見つけ、持ち主情報を調べると別人の名前が表示される。
「マルケスって偽名?」
「いや、もう一人のそっくりさんの名前かもしれない」
彼方が首を傾げながら偽名説を口にすると、源三郎はそっくりさんの名前の可能性を示唆する。
「ブレスレットだけがここに落ちてるのはなぜでしょう?」
「酔って落とした?」
鈴鹿とノエルがモルデンのブレスレットを見ながら話し合う。
「いや、拐われたな」
「お爺ちゃん、なんでわかるの?」
「マルケスのブレスレットも見つけた。それと、何かを引きずる後も」
源三郎がマルケスのブレスレットを片手に地面を指すと、そこには源三郎が言うように引きずった跡が近くの建物まで続いている。
「ここにマルケスさんと、モルガンさんと言うそっくりさんがいるのでしょうか?」
「クエストもここで二人を見つけるに変わったし、そうじゃないかな?」
源三郎達は引きずられた跡を追って建物まで近づくと、クエストタスクの内容が囚われた二人を助けるに変わる。
「鍵がかかっていますね」
「となると、ノエルの出番だね」
「任せて」
鈴鹿が建物のドアを調べると鍵がかかっていることがわかり、彼方は手招きしてノエルを呼ぶ。
「セキュリティのスキル上げたお陰で楽に開けれたよ」
ノエルがポケットからデジタルピックを取り出し鍵開けに挑戦すると、10秒も経たずに解錠に成功する。
「わしが先に入る。彼方達は安全が確認できてから来てくれ」
「お爺ちゃん、着装してから入って」
「ぐぬっ………」
安全確保の為に源三郎が先に入ろうとすると、彼方が源三郎の服の裾を引っ張って着装しろとねだってくる。
「はあ………着装。これで良いじゃろ」
さりげなく突入して誤魔化そうとしていた源三郎は唸るような声を漏らし、諦めたようにため息をついてメタルヒーロー姿に変身する。
「お爺ちゃん、カメラと一緒にはいって」
「あいよ」
彼方が操作する配信用のカメラが建物に入っていく源三郎に追従していく。
「死体?」
建物の内部は倉庫になっており、大きな棚がところ狭しと並び、荷物が積み上げられている。
源三郎が倉庫の中ほどまで来ると、4人の死体があった。
「あのホームレスが言ってたクローズのメンバーか? 死因は銃撃───っ!?」
4人の死体の腕には同じタトゥーがあった。
死因を調べると全員銃で撃たれたような痕があるのを確認した時、カチャリと撃鉄を起こす音が聞こえ、源三郎はその場から前転した瞬間、先ほどまでいた場所に銃弾が撃ち込まれる。
「何奴っ!」
レーザーブレードスキンの武器を構えて源三郎は怒鳴りながら周囲を見回すと、物陰に隠れていたアウトロー姿の男達が姿を表す。
「瞳がお前を天国に送るだろう」
姿を表した男達は全員額に目のタトゥーを入れており、源三郎に銃を構える。
「しねっ!」
「なんのっ!!」
男達が一斉に銃を乱射するが、源三郎は三角飛びの要領で棚の上に飛び乗り銃弾を回避する。
「お爺ちゃん!」
「彼方、敵は4人! 全員実弾式のハンドガンじゃ!!」
銃声を聞いた彼方達が武器を構えて突入してくる。
源三郎は棚の上を走りながら荷物を蹴り落としたりして目のタトゥーを入れたアウトロー達を牽制する。
「援護するよ!」
彼方達がアサルトライフルをフルオートで撃ち、銃弾をばらまく。
「ぐわっ!?」
瞳のタトゥーを入れたアウトロー達は崩れ落ちた荷物や棚を遮蔽にとるが、出遅れたひとりが撃たれて倒れる。
双方遮蔽物越しに撃ち合い、硬直状態に陥る。
「わしを忘れてないか?」
棚の上を走りアウトロー達の背後に飛び降りた源三郎がレーザーブレードで斬っていき、挟み撃ちされたアウトロー達は浮き足だって源三郎達に斬られたり、撃たれたりして壊滅する。
「これで敵は全部か?」
アウトロー達を倒した源三郎は周囲を見回し、他に敵が隠れていないか警戒する。
「というか、マルケスさんと、モルガンさんどこよ? マルケスさーん、モルガンさーん、いますかー?」
ノエルは倉庫を見回しながら二人の名前を叫んで呼び掛ける。
すると、倉庫奥にあるコンテナからガタンと言う音が聞こえる。
「ひっ!? こっ、殺さないでっ!!」
コンテナのドアを開けると、中にはマルケスかモルガン、どちらかと思う金髪の中年男性が隠れていた。
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